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劣化過程をたどった日本のインターネット空間           季刊「言論空間」編集委員 武部伸一    インターネット空間で、ヘイト・差別・排外主義・陰謀論の嵐が吹き荒れている。それは米国でも日本でも、ここ数年の選挙結果に見られ...
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2025/04/01new

POLITICAL ECONOMY第281号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
劣化過程をたどった日本のインターネット空間

          季刊「言論空間」編集委員 武部伸一
 
 インターネット空間で、ヘイト・差別・排外主義・陰謀論の嵐が吹き荒れている。それは米国でも日本でも、ここ数年の選挙結果に見られように現実世界に大きな影響を及ぼしている。なぜこのような事態に至ったのか。先ず日本国内での経緯にしぼり、これまでのネット空間の在り方を振り返り、考えてみたい。

パソコン通信時代はフレンドリーで秩序ある空間

 日本でのネット利用は、1985年電電公社民営化と合わせ電気通信事業法が成立、公衆電話回線を利用した通信接続が解禁されたことにさかのぼる。数社からモデム(接続機器)が一般発売され、日本において本格的にパソコン通信がスタートした。 「民営化の時代」にネット利用がスタートしたことに留意したい。

 1987年には当時の代表的な商用パソコン通信ニフティサーブがサービスを開始した。この頃スタンダードであったNECのPC98シリーズなど日本独自仕様のパソコンを使いながら、一般ユーザーが商用電子メール・フォーラム・掲示板の利用をはじめていく。各ユーザーはパソコン通信サービスを、固定ハンドルネーム(ニックネーム)を使い利用した。(推測だが、これは長距離トラックドライバーなどアマチュア無線利用者がニックネームでお互いを呼び合う習慣に影響を受けたのかもしれない。何しろ通信なのだから)

 いずれにせよ、ここに今につながる匿名のネット空間がスタートしたのだ。しかしこの時期の各フォーラムは管理人・サブ管理人が決められ、初心者へのガイド、フォーラム内議論の整理など、私自身も利用者であった記憶としては概ねフレンドリーで秩序のある空間として存在していたと思う。

憎悪と差別投稿があふれる「自由な場」に変貌

 1995年マイクロソフトからウインドウズ95が全世界で発売された。それ以前から存在していたインターネットが大衆的に利用される時代が始まったのだ。1996年、NTT直営インターネットプロバイダーOCNがスタート。ニフティなど他のプロバイダーも続々とインターネット接続サービスを開始した。

 1999年にはNTTが世界初の携帯電話でのインターネット接続サービスiモードを開始した。ちなみにこの年のパソコン世帯普及率は29.5%。

 また西村博之が日本最大級の電子掲示板(匿名掲示板)「2ちゃんねる」を開始したのもこの年である。ネット利用者の多種多様な興味・関心で細分化された掲示板「2ちゃんねる」だが、一度でも覗いたことがある人であれば、そこが猥雑で悪趣味でなおかつ差別表現にあふれた場であったことを記憶しているだろう。

 2003年ごろには「在特会」桜井誠が、ネット掲示板で在日朝鮮人・韓国人への差別・排外主義投稿を始め、ネット民(の一部)から熱烈な支持を集めるようになった。1980年代後半に(固定)ハンドルネームでの理性的な情報共有の場としてスタートした日本のネット空間は、20年と経たないうちに、匿名での憎悪と差別投稿があふれる「自由な場」へと変貌したのだ。

 2008年、スマートフォンiPhoneが日本で発売される。同時期に日本語版Twitter(現X)・Facebookのサービスが開始された。

 この年、象徴的な事件が起きた。それは秋葉原無差別殺傷事件。進学校出身の派遣労働者が、自ら投稿する「ネット掲示板」の荒らし行為を理由として犯行に至った。ネット空間が現実社会に直接的な影響を及ぼす時代が始まったのだ。

 日本での「ネット空間」が歪んでいく過程、いわば「ネット価値観の形成史」についての興味深い論考として、『世界』2023年6月号「ネットはユートピアか?ミソジニーとサブカルチャーのインターネット文化史」藤田直哉がある。現在のミソジニーと差別言辞の溢れるネット空間の源流が「2ちゃんねる的文化」にあり、それは80年代一部サブカルチャーの価値観、80年代フジテレビ的笑いの感覚にまでさかのぼると言う。刺激的で説得力のある論考である。

健康なインターネット空間再構築のために

 ではインターネットの利用者である我々が、ネットでの憎悪表現や差別排外主義に対抗し、あるいはそれらの言質に打ち勝つネット空間を広げていくために、どのような考え方が必要なのだろうか。

 朝日新聞2022年1月22日のメディア空間考コラムにおいて、「健全な言論プラットフォームに向けて デジタル・ダイエット宣言」が紹介されている。計量社会科学者鳥海不二夫と憲法学者山本龍彦による共同宣言は、情報を食事に例え「飽食」や「偏食」が招く弊害を「情報的健康(インフォメーション・ヘルス)」という概念で問題提起している。
参照  https://www.kgri.keio.ac.jp/docs/S2101202201.pdf

宣言自体は政治的にはニュートラルである。その詳細はここでは省くが、インターネットを人々の連帯のためのツールとして再構築していくため参考となる論考の一つだと思う。

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