日誌

これまで発行の「POLITICAL ECONOMY]、「グローカル通信」
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2024/01/21

POLITICAL ECONOMY第256号

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最新台湾事情~独裁反対・民主自由の国~(上)
元東海大学教授 小野豊和

 人口2,300万の台湾の歴史を見ると、日本統治の50年間があり、その中で親日感が育っていった。日清戦争処理の下関条約により、当時中国大陸を支配していた清朝から台湾が日本に割譲され、1895年4月17日から日本による台湾統治が始まった。第二次世界大戦で日本が降伏すると、1945年10月25日に中華民国政府が台湾省を設置し管轄権を行使することで50年に及んだ日本統治が終了した。統治下における教育行政は「日本人の優位確保」と「現地住民の日本的慣習への同化」に重点が置いたが、大陸の朝鮮統治が強制的な日本化だったことと異なり、異なる文化を守りながら、日本人、台湾人、原住民の三種類の学校を作った特徴がある。

 初代総督の樺山資紀につぐ第2代桂太郎、第3代乃木希典は共に陸軍大将で、武力による支配を基本的な方針としていたため民衆の心をつかめなかった。1898年2月に第4代総督に児玉源太郎が就任すると、現場の実務を民政局長(のち民政長官)の後藤新平に任せると、後藤は軍人ではなく、医師から衛生行政に転じた経験から現場重視の政策を行うことで次第に民心を掌握し台湾の情勢が安定してきた。例えば、伝染病対策、南部における大規模なダム工事と水路の組み合わせによる農地開発を行った土木技師の八田與一、品種改良を重ねて台湾の気候に合った「蓬萊米」を生みだした農学者の磯永吉、台湾中心部の日月潭(湖)に揚水式水力発電所建設で工業化を支えた実業家の松木幹一郎など、台湾の発展に寄与した日本人がいて、50年にわたる日本統治時代を全否定するような歴史解釈はなく、今でも親日感が高い。

 最近の世論調査では、「台湾の人々の対日意識」(日本台湾交流協会2022年1月)で「最も好きな国」は日本が60%(2位は中国で5%)」、「日本に親しみを感じる」は77%、「日本に旅行したい」は89%である。日本人の対台意識(駐台北経済文化代表処2021年11月)では「台湾に親しみを感じる」は75.9%

、「現在の日台関係は良好」は71.4%、「台湾を信頼している」は64.8%で両国とも親近感が高い。また「台湾における日本語学習者」は143,632人で世界第8位(国際交流基金)だが多い方だ。

 観光スポットにもなっている花蓮県の大理石で造られた巨大な中正記念館は蒋介石の偉業を象徴していて、蒋介石像の前で行われる儀仗兵の交代(写真)は観光資源になっている。国民党による一党独裁政治は元々台湾に住んでいた民衆の虐待を繰り返し、やがて反政府運動が激化し、美麗島事件がきっかけとなり、蔣経国総統の時代に政党結成を解禁し、ようやく普通選挙が行われるようになるが、そこに至るまでは中正広場などで反政府デモが起こり、民衆の虐殺が繰り返された暗い歴史がある。

美麗島事件、米国との断交、一党独裁が終結

 1972年2月21日のニクソン大統領の電撃訪中後、米国は1979年1月1日の米中国交正常化に伴う米台断交で、中華民国から中華人民共和国に外交承認を切り替えた。これを機に台湾では「独裁反対、民主自由の実現」を目指す運動が高まり、1979年6月2日に無党名の政党結成を目的とした雑誌『美麗島』(ポルトガル語のフォルモサに由来する台湾の異称)が台北市で創刊される。1979年1月21日に初めての反政府デモが行われ、1979年11月、世界人権デー(12月10日)に合わせて台湾人権委員会が大規模デモを申請すると、国民党政府は、デモを予定していた1979年12月10日に全てのデモ活動禁止を宣言した。

 『美麗島』のボランティアがデモ日時を知らせるビラ配布で逮捕されると、活動家が警察に対し即時釈放を要求する。釈放が行われるがこの事件を機に、デモへの参加を計画していなかった多くの活動家が高雄に向かい12月10日午後6時にデモを開始し治安部隊と衝突した。美麗島事件が民進党の政治的出発点となる。1987年に蔣経国総統が政党結成を解禁し一党独裁体制が終結し、民進党と国民党がほぼ交代で政権を取るようになった。(づく

13:40
2024/01/08

POLITICAL ECONOMY第255号

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「トランプ氏 独走」-なんとも憂鬱な1年
       NPO現代の理論・社会フォーラム運営委員 平田 芳年
  
 ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ侵攻と相次ぐ戦争の火ぶたが切られ、国際社会が求める停戦への期待も裏切られ続けている。2024年は戦争から平和への転換の年になるのだろうか。

 今年は世界人口の半分の人々が指導者を選ぶ選挙が行われる「モンスター選挙年」だという。既に1月に実施された台湾総統選を皮切りに、2月インドネシア、3月ロシア、ウクライナ、4月韓国総選挙、6月欧州議会選と続く。中でも最大の注目選挙は11月5日の米国大統領選だろう。国際経済をけん引する世界最大の経済力を持ち、軍事力を含む政治的影響力の大きさは、衰えが目立つといわれながらもなお強大だ。だれが米大統領に選ばれるのか。

バイデンvsトランプの構図だが

 朝日新聞の1月25日付け3面トップに「トランプ氏 独走」の見出しが躍った。大統領選にむけた共和党の候補者を選ぶ予備選がスタート、アイオワ州に続くニューハンプシャー州でもトランプ前大統領が対立候補・ヘイリー元国連大使に10ポイント以上の差をつけて勝利、「優勢をより決定的なものにした」と論評。一方で、民主党のバイデン大統領は2月3日の南部サウスカロライナ州の最初の予備選で大勝、実質的な対立候補がおらず、バイデン氏が民主党大統領候補に指名されるのは確実と報じられている。

 米国の総合情報サービス企業ブルームバーグと調査会社モーニング・コンサルトが1月31日、大統領選などに関する世論調査結果を発表した。この調査は、激戦州といわれる7州で実施され、もし大統領選挙が今日実施されたら、バイデン氏かトランプ氏のどちらに投票するかという問いに、トランプ氏が全7州(アリゾナ州で3ポイント差、ジョージア州で8、ミシガン州で5、ネバダ州で8、ノースカロライナ州で10、ペンシルベニア州で3、ウィスコンシン州で5)でバイデン氏を上回ったという。

  トランプ氏は 2021年の議事堂襲撃事件を巡り、コロラド州最高裁が「トランプ氏に大統領選に挑む資格はない」との判決を出しており、同世論調査ではトランプ氏が有罪になれば「トランプ氏を支持しない」との回答が53%に上ったという。投票日まで9か月近くの長い道のりがあり、不確定要素もあるが、11月の米大統領選はバイデン、トランプの現、前大統領の一騎打ちとなる公算が高まっている。

 バイデン大統領が勝利すると仮定すると、この4年間の政策や外交姿勢が続くことになり、大きな変化は見られないだろうが、逆にトランプ氏が大統領に返り咲いた場合はどうか。1月23日、来日中のポンペオ前国務長官はトランプ氏が返り咲いた場合、「政策は1期目と変わらない」と発言。7年前のトランプ政権発足時に経験したアメリカ・ファースト(米国第一主義)の嵐が吹き荒れるのか。気候変動の国際ルール『バリ協定』からの離脱、メキシコ国境への壁建設、同盟関係の見直し、保護主義の復活、対中強硬姿勢の強化、イスラエル支持、米国内の分断の加速など想定される。

日鉄のUSスチール買収に暗雲

 1月31日、トランプ前大統領から、アメリカ・ファーストを想起させる発言が飛び出した。日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収を巡り「私なら瞬時に阻止する。絶対にだ」と断言した。日経新聞は2月1日付でこの発言を報道、「11月の米大統領選で共和党候補のトップを走る前大統領が反対の立場を表明したことで、バイデン政権の認可審査にも影響を与える」と報じている。

  首都ワシントンで大手労働組合の幹部と面会した後、記者団に語ったもので、「USスチールは日本に買収されようとしている。ひどい話だ。我々は雇用を国内に取り戻したい」と持論の経済ナショナリズムを強調。トランプ氏は大統領在任当時、鉄鋼輸入に25%、アルミニウム輸入に10%の追加関税を課し、国家安全保障上の懸念に言及するとともに、米国内の生産を押し上げるためこうした措置が必要だと主張した経緯がある。

  日鉄は昨年12月、USスチールを約141億ドルで買収すると発表。2024年4ー9月の買収完了を予定。買収完了までに米国規制当局の審査、USスチールの株主総会での承認、労働組合との交渉が待ち受けているが、規制当局の審査と組合の交渉が大きなネックとなる。全米鉄鋼労働組合は反対の態度を打ち出しており、労働組合を支援するバイデン政権が大統領選を意識して審査を長引かせると、「年内に結論が出ず、25年に突入する可能性があると複数の関係者が明らかにしており、買収実現までは長期化する」(ブルームバーグ)との見方が浮上しており、前途多難だ。

 仮にウクライナ支援に消極的と伝えられトランプ氏が大統領に復権すれば、ウクライナ戦争の和平は遠のく。さらに前大統領時代に親イスラエルの立場を鮮明にしていたトランプ氏はガザ侵攻に対してイスラエル寄りの姿勢を取ることは確実で、平和外交を期待することはできない。大統領選と同時に行われる上院選で民主党が過半数を割り込む見通しが伝えられなど米国政治は対立と抗争による機能不全の時代を迎えることになる。2024年はなんとも憂鬱な年となりそうだ。 


11:34
2023/12/24

POLITICAL ECONOMY第254号

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多極化時代のグローバル税制の展望
          横浜アクションリサーチ 金子 文夫

 2024年に入り、ウクライナ戦争、パレスチナ戦争の先行きが見通せないなかで、米国ではトランプ再選の可能性が高くなっている。世界は分断と混迷を深めているが、長期的にはグローバルサウスの動向に注目すべきだろう。1月22日の日経新聞1面には、「サウス台頭「旧秩序」突く、米中「世界二分論」に異議」という見出しの記事が掲載された。グローバルサウスは経済力を増大させ、発言力を高めつつある。以下、グローバル税制をめぐる最近の動向に即して、サウス台頭の展望を記してみたい。

国際連帯税の再構築

 国際連帯税は、2000年の国連ミレニアム開発目標(MDGs)の資金調達を目的にしてフランス主導でスタートした。その要件は、①国境を越える経済活動に課税、②税収は国際機関が管理、③使途はグローバル課題に充当というもので、2006年の航空券連帯税が第1号となった。国際線を利用する旅客に少額課税、税収は国際機関UNITAIDが管理し、貧困国への医薬品供給にあてるという方式で、現在も継続している。

 これに続いて2011年、EUで金融取引税が提起された。この税は、国境を越える金融取引(株式、債券、デリバティブ等)に低率課税し、税収は各国政府とEUが管理・使用するもので、課税対象が国際連帯税に近いといえるが、金融業界の反対が強く現在まで実現をみていない。

 そうしたなかで、気候危機に対する資金調達策として新たな取組が開始された。2022年のCOP27(エジプト)では、グローバルサウスの気候危機に対処するための「損失と損害基金」設置が合意された。その具体化に向けて、様々な試みが追求されていく。

 2023年6月、フランス、バルバドスの呼びかけで、「新グローバル金融協定サミット」がパリで開催され、国際課税を通じた資金調達を検討するタスクフォース設置が提起された。  
 
 9月、ケニアでのアフリカ気候サミットを経て、11~12月、COP28(アラブ首長国連邦)が開かれ、「損失と損害基金」の制度の大枠が決定された。財源には公的資金、民間資金、革新的資金源等が広くあげられ、その一環として「開発、気候、自然の資金調達のための国際課税に関するタスクフォース」の立ち上げに至った。そこでは炭素税、海上・航空輸送税、金融取引税などが扱われるが、この間の経緯のなかにグローバルサウスの発言力の増大を確認することができる。

多国籍企業課税改革の紆余曲折

 多国籍企業への課税は本国、進出先のいずれでなされるべきか、二重課税問題の扱いについては100年の歴史がある。第二次大戦後はOECDと国連で取り組みが続いたが、ルール形成の主導権は先進国クラブであるOECDが握ってきた。

 21世紀に入り、グローバル化、デジタル化の進展とともに、タックスヘイブン等を利用する多国籍企業の課税回避(二重非課税)が横行する事態となった。2012年、OECDはG20との共同作業として、EPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを立ち上げ、2015年に15項目からなる行動計画を策定した。約40カ国が参加したBEPSをさらに発展させ、140カ国参加の交渉を続けた結果、2021年10月に2本柱からなる新たな課税ルールで合意に達した(第1の柱は、売上高200億ユーロ超、利益率10%超のグローバル企業(約100社)を対象に、10%を超える利潤のうち25%について市場国(消費者のいる国)に課税権を配分、第2の柱は法人税の最低税率を各国共通して15%に設定)。

 当初の予定では、2022年に多国間条約、法改正を成立させ、2023年実施を目指したが、多国間条約の締結は現時点でなお実現していない。特に米国議会(共和党)が反対の意向であり、米国が条約に批准しないとなれば、この合意は不成立に終わるかもしれない。

国連主導のルール形成へ

 2本柱の新ルールについては、先進国に有利な決め方だとしてグローバルサウスから反発の声が上がっている。最低税率が低すぎるというNGOからの批判もある。アフリカ連合などがルール形成の場をOECDから国連に移すべきだと声を上げてきた結果、国連事務総長は2021年7月、25カ国の専門家からなる国連租税委員会の設置を決めた(期間は2021~2025年)。

 また2022年11月の国連総会では、国際課税ルールは国連の場で取り組むべきとの決議がなされた。米国は修正を試みたが失敗に終わっている。さらに2023年11月15日、改めて国連総会で「包摂的で効果的な国際課税協力の推進」に関する議題が取り上げられ、アフリカ連合提案が賛成125、反対48、棄権9で採択された。イギリスは修正提案を提出したが、賛成55、反対107、棄権16で否決された。日本は前者に反対、後者に賛成だった。ここにはグローバルサウスが多数派、G7が少数派になった現実が示されている。

 2024年9月には国連未来サミットが開かれる。この決議を受けて、2024年夏までに一定の案をまとめるべく、20カ国ほどの政府間協議体が組織される。その先はかなり長い道のりになると思われるが、世界が多極化へと進んでいくなかで、多国籍企業課税、さらには超富裕層へのグローバル課税の具体化が進むことになるのだろう。


17:49
2023/12/13

POLITICAL ECONOMY第253号

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死に至るケアの放棄
             街角ウォッチャー 金田麗子

 昨年末、息子の父親が緊急搬送されたと連絡があった。医師によると、持病のパーキンソン病の影響もあり予断を許さない状況で、肺炎が両方の肺に広がっていた。息子の父とは事実婚のパートナーだったが、20年近く前に別れ、その後友人として、息子の両親としての交流を続けてきた。

 久しぶりに会った息子は、「ごみの中で暮らしているんだよ」と涙ぐんでいた。先天性の指定難病の患者である息子は、病状の悪化だけでなく、同じ環境で暮らしていることから自身も父と同様肺に疾患があるのではと、不安に駆られているのだった。

 家は散乱するごみとこびりついた埃、黒ずんだ黴でびっしりと覆われていた。元パートナーのベッドはマットレスがボロボロに破れ、じっとりと濡れていた。息子が医師に、肺炎の原因を「家がゴミ屋敷で」と何度も言ったのに納得。「お父さんが退院する部屋を作ろう」と、一緒に片付けと掃除に奮闘、何とか衛生面の確保ができるまでに復活させた。

家の片付けはなぜできないのか

 元パートナーは、もともと片付けや掃除家事の得意な方でなかったが、それでも「お父さんは料理を習ったり、洗濯も良くして努力していた」が、「片付けることを考えると気もちが萎えてしまう」と語っていたという。

 どうしてゴミ屋敷になったのか。原因は主に四つあると思った。
一つ目は片づけをする、掃除をする理由や必要性を理解できていなかった。
二つ目は技術的な教育を受けていないから実行できなかった。
三つ目は、息子自身長時間労働で、掃除片付けをする時間が十分になかった。
四つ目は、第三者に助けを求めなかったこと。特に病気になって以降は助けを求めて欲しかった。

 元パートナーは、77歳で労働組合の役員の現役だった。パソコンの中には、活動分野ごとに整理され、紙のファイルでも、H12年からそれぞれの会議議事録がファイリングされ棚に並んでいた。彼にとってはこれらの整理は、当然で意味のあることだったのだろう。

 しかし家の片づけや掃除に価値を見出せなかった。これは彼個人の資質の問題だけではない。

 人間は誕生から、誰かが面倒を見ないと生きていけない。睡眠不足になりながら母乳やミルクを与え、おむつを替え、沐浴させ、洗濯をして、清潔な環境を保ち、病気になれば看病をして、どんな動物より独り立ちまでに長い時間がかかる。長じてからも、経済活動、社会活動を行うためには、十分な衣食住環境が不可欠で、いつも誰かがケアをしてきた。ケアの担い手は母や祖母、姉など女性が担うものだという実態と社会通念の下で、当然の如く享受してきたのだ。

 阿古真理と藤原辰史(「現代思想」2022年2月号「家政学の思想」)ケアの家政学)によると、家事は自身と他者のケアにつながる重要なもので、家事を習得することが自立の助けになるという。家事は暮らしの基盤となる環境や、日々使っている道具をメンテナンスする行為であり、家事のほとんどは「元に戻す」ことである。原状復帰をし続けるのが家事で成果が見えにくく、一人で引き受けるとしんどくなる。元パートナーが片づけを考えるとどんよりするのは当然だった。

 片付けや掃除は技術が必要だが、学ぶ機会はほとんどないのが現状。家庭科共修は、1993年中学校、1994年高校で実施された。元パートナーはこの以前の世代である。しかも「家庭科」は軽視され、国語数学などより下位におかれている。

 暮らしの実態は、そうした科目を身に着けてお金を稼ぐ仕事と、自宅での家事の両輪で回っているのに。授業時間数は中学3年間で、週2.5時間のみ。高校だと週2時間で1年間に限定されている。どの項目も、人が生きていく上で不可欠な能力を身に付けるために必要で、「知識が無ければ死を招いてしまう」と指摘する。まさに元パートナーの身に起きたことだった。

ケアを保障しない職場

 息子自身は、外食産業のチェーン店で勤続17年の非正規労働者。7年前からは社会保険対象の従業員となり、かなりの長時間労働だという。そのため以前は自分が片付けていたが、どんどんできなくなっていたと嘆く。息子の職場では、正社員はエリアマネージャーだけで現場労働者は非正規社員の配置。正社員はさらに長時間労働でほとんど休めないし、私生活の時間も持てないという。

 日本の男性の生活時間の短さは、OECDが2020年にまとめた国際比較データによると、14カ国の男性平均は5時間17分なのに、日本男性は7時間32分と長く、その分生活時間はほとんどない。自身先天的な病気がある息子は、「あの働き方は無理」と、社員になることは断念していた。

 元パートナーは、パーキンソンを発症してから地域包括センターに相談し始めていたが、部屋の状況もあって家庭訪問を断っていたという。私もこの20年ずっと手伝いを申し出ていたが、いつも「大丈夫」と軽くかわされていた。倒れて入院し、不在にならないと家の片づけに介入できなかった。愛して大切にしていた息子のためにも、早く外の力に頼ってほしかった。

 誰でも自分の力だけで生活できなくなる日は来る。生まれた時から、他者のケアに頼り守られ生きてきた歴史と事実があることを認め合い、ケアが保障される社会でなければ、自分自身の命に係わることを自覚しなければならないと思う。

17:51
2023/12/03

POLITICAL ECONOMY第252号

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ビッグモーター、ジャニーズ、日大
リスクマネジメント問われる相次ぐ不祥事

                               金融取引法研究者 笠原一郎

 早いもので年が明け2024年となった。コロナで閉ざされた3年間から、ようやく抜け出したかと思えば、裏金疑惑の自民党だけではなく、23年のテレビで流れたワイドショーの“ネタ”には、ビックモーター、ジャニーズ、日本大学そして宝塚歌劇団と、後ろ向きの話しか出てこないのではないかと思えた。これらの社会的に関心の高い組織の不祥事はマスコミメディアで大きく報じられ、組織のリスクマネジメントが問われるとともに、なんとも不快な気分にさせるような事案に明け暮れた1年に思われた。

第三者委員会の報告を受けても・・・

 これらの不祥事事件を引き起こした組織は、多くのケースでは、著名弁護士をリーダーとする第三者委員会の立ち上げや利害関係のない法律事務所にそれらの不祥事の事実関係の調査を依頼する。調査結果を踏まえ、こうした組織はその社会的信頼の回復と法的なマイナス影響をできる限り縮減させるため、リスクマネジメントとして様々な方策をとる。すなわち当該不祥事の責任の所在を明確にするとともに、被害救済と再発防止策等を策定し、公表・説明することとなる。上記の各件での会見は、いずれもテレビで生中継されたが、その会見場においては、事態の隠蔽ともとられかねない組織責任者たちの姿勢や、会見を仕切る広告会社・顧問弁護士の稚拙さ、そして質問するマスコミ側の質の低さが露呈されるものであった。

 ここで、これらの不祥事事件を改めて振り返ってみると、まず、ビックモーター(BM)不正請求事件は、修理費の水増しによる保険金の不正請求の疑惑から、損害保険会社の要請を受けた第三者委員会による調査の報告、そしてBM社の創業オーナーである前社長の記者会見のテレビ中継では、失言等もあり大きな批判を受けた。

 故ジャニー喜多川による多数の少年たちへの性加害の問題では、一部週刊誌では被害者たちの告発から問題として報じられてはいたが、長年にわたって日本のメディアが無視してきたこの性加害の問題が、BBCの調査報道により国連人権委員会までもが動くに至った。こうした状況を受けた旧ジャニーズ事務所の依頼による第三者委員会の調査報告では、半世紀以上の長きにわたって数百人以上の少年たちへの性加害という驚愕の実態が明るみになった。

 また、所属する一部の学生が違法薬物を使用した日本大学アメリカンフットボール部の事件では、大学の管理者への通報と大麻の確認時点から警察への通報までに2週間近く留め置かれ、検察出身の前副学長による隠ぺいとしか思えない工作の組織的関与が疑われた。この事件の以前、同じ日大アメフト部の悪質タックル問題に端を発した大学ガバナンス改革のために乞われて就任した作家理事長に対しても、管理対応の稚拙さに内部外部から批判が集中した。

 そして、宝塚歌劇団の若い団員が陰湿な“いじめ”・過酷な労務環境により急逝したという悲痛な問題での記者会見では、大阪の大手法律事務所が主体となって調査したとされる報告書を、その親会社である電鉄会社の役員でもある歌劇団理事長はあたかも他人事のように読み上げるのみであり、華やかな舞台とはかけ離れたものを見たように感じられた。

組織の傲慢さと醜態さらすメディア

 実際に、BM社の件では、他人事のような前社長の姿勢がテレビ視聴者には共感を得られず、更に、各店舗前の街路樹枯木・伐採疑惑(器物破壊容疑)、BM社と親密な一部の損害保険会社による不適切な事故査定等の疑惑と、次々と問題が噴出してきた感がある。

 また、ジャニーズ性加害では、調査報告書の内容と旧ジャニーズ事務所としての対応を説明するために設けられた2回にわたって記者会見が設けられたが、事務所側の認識の甘さと質問するマスコミ側の質の悪さから混乱をきたし、宝塚でも事実関係から目をそらした歌劇団幹部たちの責任回避と組織防衛に終始していた。こうした会見で生中継されたテレビ画像では、マスコミサイドも醜態を晒したとしか思えなかった状況であり、特に、ジャニーズ性加害に対する長年にわたる“メディアの沈黙”と第三者委員会報告書で批判されたNHKをはじめとするテレビ各社は、自主検証と称する番組の放送と、旧ジャニーズ事務所所属のタレントたちを出演から排除することで、事態の鎮静化を図っているようさえ思えた。

 これらの記者会見では不祥事行為の当事者でなく、管理監督責任を問われた者により説明されるが、肝心な時には沈黙し落ちたものは徹底して叩こうとするメディア・マスコミによって、一方的に追い詰められる姿があった。いずれのケースもそれまでの組織の傲慢さが問われたものではあるが、一方において、テレビの前の私たちも、感情的で低質なメディアに振り回されなることなく、事実を冷静に認識したうえで、被害の救済、組織の再建を見守っていこうというスタンスを持ち得なければ、弱りつつそして寛容さを失いつつある日本の社会がますます委縮していってしまうのでは、と自戒するところである。                        


12:36
2023/11/22

POLITICAL ECONOMY第251号

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管理通貨制度のもと日銀は無からカネを生みだす
                           
                                  経済アナリスト 柏木 勉 

 12月になって来年度政府予算編成が大詰めを迎える。そこで年中行が始まる。政府の借金が大変だ大変だという大合唱である。そこで、小生が長年にわたって不可思議に思ってきたのは、いわゆる左翼・リベラル、あるいはマルクス経済学(マル経)といわれる学者、研究者でも「政府の借金が大変だ大変だ。財政再建が重要だ」といいふらす方々が多いことである。

 しかし、左翼やマル経の先生方は、基本的に次のような考えに立ってきたのではないのか?いわゆる福祉国家論、あるいは国家独占資本主義論である。というより両者は密接不可分、セットになっている。例えば大内力は、金本位制から離脱した管理通貨制度のもとで、政府・中央銀行が通貨発行の大幅な自由度を得たことを、次のように述べている。

 「国家独占資本主義はなによりも金本位制度を放棄し、通貨を国家権力の管理下におく。それによって、さしあたり国内的には、中央銀行券の発行が準備金からきりはなされ、政府の自由な裁量にゆだねられることになる。それはいうまでもなく、インフレーションをさまざまの程度において促進するフリーハンドが政府に与えられたことを意味する。」(大内力「国家独占資本主義・破綻の構造」 1983年P151)

 「このように発券の制約がなくなることによって、まずもっとも大きな変化をこうむるのは、いうまでもなく第二の金融政策である。ここでは資金の供給力をどう調整するかは政策の決定にゆだねられる。」(同前P.152)

 また多くのマル経学者も昔から次のように述べるのが一般的だった。
 「こうした強制力(注:日銀法による決済の強制力―引用者)にもとづいて流通する紙幣は、その性質上、発行者はこれをいくらでも発行できる。・・・中央銀行は・・・必要のさい市中銀行にたいして貸し出しをするとか、また市中銀行から有価証券を買い入れることによって市中銀行に資金を供給する。(三宅義夫「金」 岩波新書1968年、P.51-52)、                 
「中央銀行は・・・銀行券は自分で印刷機を回していくらでもつ
くり出しうる」(同P.55)

キーボードを叩けばいくらでもカネは出てくる

 主流派経済学ではどうだろうか?同じことを云っている。元FRB議長ベン・バーナンキは次のように述べている。「政府はキーストローク、つまりバランスシートへの電子的な記帳を行うことで支出する。・・・キーボードのキーがあるかぎり、政府がそれを叩きさえすれば、利払い資金が生み出されてバランスシートに書き込まれる。」(ランダル・レイ、邦訳「MMT現代貨幣理論入門」2019年 P.149)

 いわゆるキーストローク・マネーである。このように、管理通貨制度のもとでは無からカネが生み出される。中央銀行・日銀がキーボードを叩けば、カネは1兆円でも10兆円でも50兆円でも生み出せる。従って「財源はどうする? 財源がみつからない、もうすぐ財政破綻だ」と大騒ぎするのは全くの誤りだ。

 まずは、この点を頭に叩き込まないと全てを間違う。そうでないと結局は、社会保障費は削減され、国民生活の維持・向上は望めない。左翼・リベラルも財務省にだまされる。というよりだまされてきた。立憲民主党の先生方はリベラルなのかわからない。
だが、例えば野田元首相はひどかった。いまでもひどい。税と社会保障の一体改革では消費税の引き上げを決定した。そして「消費税は社会保障の安定財源だ」とした。全くの虚偽である。消費税増税分のほとんどは政府の借金返済にあてられている。社会保障の充実分はわずかだ。これも「借金が大変だ」が固定観念として頭にこびりついているからだ。

「打ち出の小槌」論のまやかし

 カネはいくらでもある。財政支出の中身こそが問題。以上をふまえて一点だけ述べたい(「現代の理論」にも書かせてもらったことだが、再度云いたい)。国債発行に対して「打ち出の小槌はない」との俗世間的な非難がなされている。しかし、前述のように日銀は、文字通りカネを生み出す「打ち出の小槌」である。この非難は「民間の企業や個人」と「中央銀行」を区別しない無知蒙昧からくるのだ。


 しかし日銀はカネを生むが、実物のモノ、サービスを生み出す「打ち出の小槌」ではない。したがって、日銀が生み出すカネによって財政支出して、それが国民の真のニーズにそった実物のモノ、サービスを生み出すことが重要である。それこそが真の財政規律だ。

 軍備拡張は、実物としては戦闘機や戦車やミサイルを生産する。だが、それらをいくらつくっても無駄遣いだ。なぜなら訓練で戦闘機がいくら飛び回っても戦車が走り回っても何も生み出さないから。国民生活向上になんら役立たない。逆に資源、労働の無駄遣いである。戦争になったらそれは究極の無駄遣いだ。それどころか国民が蓄積してきた実物資産は破壊され人間がどんどん死ぬ。実物の生産という視点が重要なのだ。

 「増税はいやだ、いやだ」というようにカネばかり見ていると、自民党の有力な積極財政派に簡単にだまされる。彼らは「いやいや、増税はいたしません。カネは日銀がいくらでもつくりますから増税などしません。防衛費2倍でも増税しません。大丈夫ですよ。財源はいくらでもあります」と言ってくる。彼らはすでに財務省の官僚を論破している。立憲民主党をはじめとした野党の経済オンチより、よっぽど経済を勉強している。

 繰り返して言う。カネはいくらでも生み出せるのだ。重要なのは、そのカネを使って「国民の真のニーズにそった実物のモノを生産し、サービスを生み出すこと」だ。 実物が重要だ。カネは重要ではない。                 


11:13
2023/10/28

POLITICAL ECONOMY第250号

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小児集中治療室の不足と北大病院の挑戦
       労働調査協議会客員調査研究員 白石利政

 平均寿命が話題になるにつけ日本人は健康水準に恵まれている人が多い、と誰もが思う。新生児についても同様だろう。しかし、1~4歳に限ると死亡率は先進14か国中でアメリカについで2位と高い。アメリカは他殺が多い。日本のトップは事故死で先天奇形、悪性新生物、肺炎、心疾患などの順である。NHK・クローズアップ現代は、2010年7月28日に、この調査を担った田中哲郎さんを招いて番組を製作・放映している。そこでは、日本における小児専用の集中治療室(PICU)の整備の遅れなどが指摘されていた(「NHK・クローズアップ現代・放送記録」から)。

 ※調査の対象は日本、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、カナダ、オーストラリア、オランダ、スイス、ベルギー、スウェーデン、オーストリア。データは1999年。但し、カナダとスペインは1998年、ベルギーは1996年。オーストリアは2000年。

 「欧州各国では小児人口約4万人に1床のPICUが存在する。わが国でも欧州各国と同程度の病床数が必要と仮定すると、2017年度の16歳未満人口1675万人から、必要なPICU病床数は約420床と試算される。これに比しPICU病床数は280床」にとどまっている(日本集中治療医学会小児集中治療委員会「わが国における小児集中治療室の現状調査」日集中医誌 2019年26号 p.221)。直近の状況は、全国のPICUは37施設、345床(厚労省「医療施設調査」2020年10月1日現在)。この年の16歳未満人口は1611万人で必要PICU床は403床となる。PICUの不足が国際的に明らかになってから四半世紀、改善はみられるもののまだ足りていない。また、このPICU, 地域間格差の大きい点も問題だ。

北大病院がめざすPICUとは

 フジテレビが昨年の10月から12月に放映したドラマ「PICU 小児集中治療室」の舞台は北海道。その道内、PICUは道立子ども総合医療・療育センターの6床のみ。「日本小児循環器学会などのまとめでは、PICU1床あたりの小児人口は関東や近畿が約3万人なのに対し、道内は約9万人と全国ワーストレベルだ」と(読売新聞オンライン2023.8.19)。

 このような状況下、北海道でPICUの新たな取り組みが明らかになった。2031年予定の北海道大学新病院でのPICUの運用である。道内各地の多臓器障害の子どもたちを対象とし、ベッド数は8床、24時間寄り添う専門チームを支えるスタッフは「働き方改革」を重視しての50人体制。併せ、「科学・教育機関としての機能を確保し、さらには人員不足、高齢化が問題である道内各地域の勤務小児科医や、かかりつけ小児科医の負担軽減」を意図した、意欲的・戦略的なものだ。すでに今年の4月に小児科内にPICUグループを発足させている。

クラウドファンディングで人材育成費を調達

 このPICUの運用へ向けて、注目すべき動きがあった。そこで働くコア人材の育成費用の調達に、現場スタッフが「小さな命に寄り添い続ける。北海道で『小児集中治療室PICU』設立へ」を掲げて、クラウドファンディング(CF)の形式で、挑戦したことである。このCFは、寄付金控除型、実施方式はAll or Nothing型で、プラットフォームはREADYFORが担当。期間は今年の7月3日から8月31日までの2ヵ月間。地元の新聞やテレビにも取り上げられた。

 第一目標金額はPICUの集中治療専門医と集中治療認証看護師、集中治療専門臨床工学技士、集中治療専門理学療法士など12人の育成費で700万円。この目標額は開始から、なんと3日で達成。そこで、第二目標として認定看護師(クリティカルケア、小児救急など)と専門看護師(急性・重症患者看護専門看護師)5人分の育成費、看護師の自己研修eラーニングツール5年分の費用などから1,100万円を追加し、1,800万円に挑戦することとなった(表参照)。 

 最終日の寄付総額は2306万円、目標額を大幅に上回って「成立」した。寄付は854件(=100%)、そのほとんどは個人(95%)から。個人が寄せた寄付額(=100%)の最多は10,000円(41%)、これに5,000円(37%)と30,000円(11%)が続き、これらを合わせると9割にもなる。

応援メッセージにみる熱いエール

 CFの期間中の応援メッセージから、このプロジェクトに賛同した人達の思いが伝わってくる。

 他県のPICUを利用した方からの感謝を込めたものや、「北海道へのPICU設置は国策としての医療政策であり、本来は国、北海道、大学の三者が協議の上、空間機器整備、人員の確保・養成を行うべきと考えます」という指摘をしたうえでの応援もある。

 ここでは二つのことを付け加えておきたい。ひとつは応援メッセージの多くは「頑張って下さい」、「応援しています」と、短い。この続きは、別の応援メッセージにあった「子どもは私たち全員の将来の希望です!全員助けたい」になるのではなかろうか。もうひとつは医療関係者からの応援が目に付くことである。小児医療の当面している課題を知る「仲間」も支援へと動いたようだ。

 今回のCFの「成立」は、北大新病院が2031年に向け計画している意欲的・戦略的PICUに、多くの市民や医療関係者が、その必要性とコア人材の育成に緊急性のあることを認めた結果である。このようなユニークな「生い立ち」をもったPICUの運用が着実に前進することを願う。と同時に、この取り組みは PICU不足地域にも示唆するところが多々あるように思われる。


15:37
2023/09/10

POLITICAL ECONOMY第249号

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この場に及んでもまだ「デフレ脱却を目指す」滑稽さ
                              経済ジャーナリスト 蜂谷 隆

 消費者物価はプラスが2年を超えて続き、18カ月連続で日銀が目標としている2%を超えている。生活を脅かしているのはインフレだ。デフレではない。ところが政府は賃上げと物価上昇の好循環となっていないという理由で「デフレは脱却していない」と言いつつ物価高騰対策を行っている。意訳すると「物価が下がるといけないので、物価高騰対策で物価を下げます」ということなのだが、この文脈を理解できる人は多くないだろう。政策がちぐはぐになるのは当たり前だ。

 9月の消費者物価上昇率は2.8%(生鮮食品を除く)で、消費者物価はプラスが2年1カ月続いている。日銀が目標としている2%を超えたのは22年4月から18カ月連続となっている。こうした状況でも政府は「デフレではないが、脱却はしていない」という認識なので「脱デフレ宣言」をしない。

  理由は今のインフレが後戻りしてデフレにならないという確証を得るためには、需要増が必要で、そのためには持続的な賃上げが求められるというのだ。2年以上インフレが続いてもまだ「後戻りする」かもしれないという不安を持っているのだろう。

「脱デフレ」のための4条件とは

 政府は「脱デフレ」のためには4つの条件を掲げている。
1、消費者物価上昇率が2%を超えていること、
2、GDPデフレーターがプラスであること、 
3、需給ギャップ(GDPギャップ)がプラスであること、
4、単位労働コストがプラスであること-である。

 二つ目のGDPデフレーターは、企業が買うモノの値段まで含めた総合的な物価指数で、名目GDPを実質GDPで割ることで算出される。22年10-12月期から3期連続で前年同期比プラスとなっている。23年7-9月期はプラス5.1%と1981年1-3月期(5.1%)以来の高水準となった。

 三つ目が、需給ギャップである。経済全体の総需要と供給力の差で、GDPギャップともいわれる。需要が供給力を上回るとプラスとなる。内閣府の推計によると、23年4-6月期 の需給ギャップは+0.4%とプラスに転じた(図参照)。19年7-9月期以来だ。図を見ると17年から19年にかけて需要が膨らんでいる。一時はプラス2%近くまで上がったが、デフレ脱却宣言はなかった。

 四つ目の単位労働コストというのは、賃金が物価にどれだけ影響しているかを示す指標で、実質GDPに対して名目の雇用者報酬が占める割合が、前年同期比でプラスかマイナスを見る。21年7-9月期以降、23年1-3月期を除いてプラスになっている(23年7-9月期もプラス)。

 こうしてみるとどのデータもクリアしているのだが、ことはそう簡単ではない。需給ギャップはまだ1期だけなので持続的とはいえない。7-9月期は再びマイナスに転落すると見られている。しかも需給ギャップの推計は、内閣府のほか日銀も出している。日銀の推計では23年4-6月期はまだマイナスのままだ。つまり100%条件がそろっているとはいえないのである。

 政府が「デフレ脱却」4条件を決めたのは2006年とされる。当時の与謝野馨内閣府特命担当大臣が、06年3月6日の参議院予算委員会で「デフレ脱却とは、物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと等考えております。その実際の判断に当たっては、例えば需給ギャップや、ユニット・レーバー・コストといったマクロ的な物価変動要因を踏まえる必要があり、消費者物価やGDPデフレーター等の物価の基調や背景を総合的に考慮して慎重に判断してまいりたい」と答弁している。

 この答弁をよく読むと4つの条件は「例えば」となっているし、判断は「総合的に」考慮するとなっている。しかも、この答弁の前に、「経済の状況が、実質成長率も名目成長率も一定以上のプラスになり、物価も安定的に推移をし、また経済成長に伴う健全な物価上昇が起こっているという、まあ全体の状況を判断するわけでございまして、そこに何か決められた方程式があるわけではありません」とも述べている。つまり4つの指標を参考にしながら判断するということなのだ。

ちらつくアベノミクスの影

 さて岸田首相だが、ハードルを上げている。臨時国会の所信表明演説では「デフレ完全脱却」などと言い出し「完全」が付いてしまったのだ。4科目平均80点取れば合格だったのが、4科目とも80点以上、それも3回のテスト連続で、80点以下に後戻りすることがないと確証が得られなければ合格としない。こんなことをしたら受験生は怒るだろう。

 おかしなことを続けているのは政府だけではない、日銀も同じだ。日銀は、10月30-31日の金融政策決定会合で、長期金利の1%超えを容認した。市場の金利上昇圧力を受けての修正だが、大規模金融緩和は続けるという。31日に出された「経済・物価情勢の展望」では、24年度の物価見通しを+2.8%と上方修正した。あと1年半は2%を超えると見ているのだ。このような見通しを持っても「後戻り」するというのだろうか。

 欧米諸国が経済政策と金融政策を「対デフレ」から「対インフレ」に転換したのは1年半前だ。日本がこの場に及んでもあいまいな態度を続ける理由はただひとつ「アベノミクス」をおもんばかってのことだろう。これでは激変する経済情勢に対応できない。


11:43
2023/08/23

POLITICAL ECONOMY第248号

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グローバルサウスの正体

      クローバル産業雇用研究所 所長  小林 良暢

 少しばかり古い話であるが、6月下旬に訪米したインドのナレンドラ・モディ首相が、ワシントンで熱烈な歓迎を受けたという。また、9月の主要20カ国・地域首脳会議(G20)では同首相が議長を務めた。

台頭するグローバルサウス

 グローバルサウスという概念は、冷戦時代のソ連が欧米に対抗するためにつくり出したものだと言われている。グローバルサウスとは、大まかにアジア、アフリカ、中南米、オセアニアの途上国を指す。これらグローバルサウスの国が、ウクライナからのロシア軍の即時撤退を求める国連決議の採択や国際安全保障についても発言が重みを増していることが、2023年の世界のこれまでにない特徴であるとされている。

 世界資本主義の総本山であるNY証券取引市場、その中心的な株価指数であるS&P500(S&P500種指数)は、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスLLCが公表している株価指数である。具体的には、市場規模、流動性、業種等を勘案して選ばれたニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場および登録されている約500銘柄を、時価総額で加重平均し指数化したものである。

 この指数は、S&Pの時価稔額の15%近くを占める欧米の優良企業やグーグルの親会社アルファベットやスターバックス、マイクロソフトなど世界的なトップ企業で構成されており、グローバルサウスに地政学的チャンスを付与しているが、その中にインド出身企業が多く名を連ねている。

 こうした覇権を競う大国の論理がぶつかりあう証券世界にあって、揺れ動く国際証券秩序のカギを握る存在として、その台頭を最も体現している国がインドだと言われている。
なぜインドなのか。

世界経済に構造的変化が起きている

 この10年ほどの世界経済の間で、いくつかの証券取引の土台を揺るがす構造的変化が生じてきている。

第1に、アメリカがグローバル化の推進役を担うことを放棄したことである。かつてのように、アメリカに世界の仕切りを担わせることは無理になっていることだ。

第2に、世界の国々が目指す方向として、民主主義がその重みを体現しているとはもはや言い切れなくなっており、そうした切り口だけでは世界を制御できなくなっているといということだ。

第3に、大半の途上国も昔に比べて成長してきているが、その半面でアメリカ政府がサプライチェーンを国内や友好国の間で完結させることを目指し、ヨーロッパ及び日本との連携を強めようとしている。

第4に、AI(人工知能)と産業の自動化が急激に進展し始めたことで、世界で地政学的な亀裂を拡大させつつ、先進諸国とグローバルサウスとの間に、新たな利害調整をめぐる亀裂を生み出して、これが深刻な波乱要因になり始めていることである。

 これらは、グローバルサウスの国々の姿勢に問題があったこと確かなようだ。グローバルサウスの中で最も成長著しい国で、言語では英語圏、数学先進国の特技を生かして、そのまとめ役を目指すインドは、地政学的にも紅海沿岸の国やインド洋などへの影響力を発揮して、グリーンなどの分野においても、発言力を増しつつある。

日本と親密なトルコ

 そうした中で、トルコが東と西の両方を見渡せる位置に立っている。地政学的な分断をまたぐような立ち位置をとる極めて重要な国であるからだ。トルコは、これまでロシア、中国、ブラジルと強固な関係を築くことに注力し、南アフリカとインドにはあまり目を向けてこなかったようだ。

 また、(西側の)主要国の中では唯一の例外として、日本とは非常に好位置を築き、その立ち位置を維持しようとしている。トルコと日本の協力関係は歴史的な結び付きでもあり、外交努力で成果を上げている。日本はトルコとの関係を構築し、トルコは日本を尊重しており、両国の関係はこれまで非常に安定してきている。

 最後に中国にふれると、「あなたたち(アメリカ人)と手を結ぶと説教される」という話が、外交筋ではよく言われてきた。しかし、以下のような途上国出身者の発言を引き合いに出して、「中国はこのグローバルサウスという新種の種を開発して、新しい種まきをいそしんでいるところだ」と言う。米財務長官などを歴任した経済学者のローレンス・サマーズは、「中国人と手を結べば空港ができる」と言う一方で、「あなたたちと手を結べば説教される」と、陰口をたたいているという。

 こうした互いに微妙な関係が織りなす中で、グローバルサウスが深く静かに進行しているということだ。


21:34
2023/08/09

POLITICAL ECONOMY第246号

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熊本市と仏エサンプロバンス市友好都市契約10周年記念行事に参加
                                 元東海大学教授 小野豊和


 熊本市とフランスのエサンプロバンス市が友好都市契約を結んで10年。5月末にソフィー・ジョワサン市長以下4名が熊本に来られた。熊本城に三色旗カラー照明をあてて歓迎。熊本城、水前寺公園、阿蘇などを案内したが、特に先進的な小学校の取り組みに注目。一人ずつタブレットを持ったDX教育とグループ学習に興味を持たれた。阿蘇山の伏流水が水源の熊本市では、飲み水もお風呂も同じ水と聞き驚いたとも言われた。歓迎レセプションでは、能楽師・狩野了一師が能を披露。熊本市最終日には熊本日仏協会の少人数の仲間と密なお別れの会を開催し再会を誓った。

 9月15日から、ラグビーワールドカップ観戦を兼ねてエクサンプロバンス市を訪ね歓迎を受けた。まず市長舎を訪問。二階の貴賓室には市の職員だけでなく、エクサンプロバンス市のラグビーシニアチームメンバーも参加。盛大な歓迎を受けた。ジョワサン市長と再会の約束を果たし、以下来熊の御礼を述べた。

『星の王子さま』の翻訳者・内藤濯は熊本出身

 140年前の1883年に熊本で生まれた内藤濯が、東京に出て第一高校(後の東京大学)でフランス語の学び、1922からパリ留学中に、初めて能舞台を成功させ、レジオンドヌール勲章シュバリエを受章した。1943年にアメリカで出版されたオリジナルの『Le Petit Prince』を手に入れるが、リズミカルな文章に触れた『チボー家の人々』を翻訳した山内義雄から内藤君以外に相応しい翻訳者はいないと推薦を受け、『星の王子さま』として岩波少年文庫から出版する。日本では老若男女に親しまれ600万部を越えるベストセラーとなる。

 『星の王子さま』は平和を願う書で、バオバブの根がからみついた地球の絵は、当時の枢軸国(日独伊)の覇権争いを示し、第二次世界大戦勃発の原因を象徴している。翻訳手法は部屋に籠もって辞書片手に行うのではなく、大声でフランス語を読み上げ韻を確認し、相応しい日本語を思い浮かべる。日本語文案が決ると、今度は大声で日本語を繰り返し読み上げ韻を確認する。こうして内藤濯が生まれ育った熊本弁で強調される訳文が完成する。2005年、著者サンテグジュペリー没後60周年に、熊本日仏協会として県立図書館の庭に「星の王子さま・内藤濯記念碑」を建立。さらに2019年に日本郵便が二種類の「星の王子さま」記念切手を発行した…。(以上をレセプションの挨拶で述べた)

 今回、エクサンプロバンス市の歓迎に対して、記念切手を入れた額と日本語版『星の王子さま』(岩波少年文庫)を贈呈した。1992年に熊本市在住の能楽師・狩野丹秀師(故人)がエクサンプロバンス市に総檜の能舞台を寄贈した。市の中央部にある日本庭園を訪ねると、「テアトルNO」の標識の奥の大きな建物の中に能舞台が鎮座していた。まさに熊本市とエクサンプロバンス市が友好都市として手を結ぶきっかけとなった現場だ。

印象派画家ゼザンヌが生涯を過ごした地

 エクサンプロバンス市の人口は15万人で三分の一の5万人は全国や世界から集まった大学生(留学生)。来熊の時、大西市長とのトークセッションで、ジョワサン市長は「子育てがしたくなる街づくり」について話された。教育面では文化を尊重する姿勢があり、社会福祉も充実していて、子育てに対する施策も素晴らしい。印象派画家ゼザンヌが生涯を過ごした地で、不朽の名作「ヴィクトアー-ル山」が聳える小高い丘はロゼワインの産地でもある。

 南仏のプロバンス地方の中でも水が豊富で、AIX-EN-PROVENCEのAIXとはアクワ(水)を意味し、地下に多くの水源があり、阿蘇の伏流水が熊本市民の水道になっているのと同じように水に恵まれている。プロバンス地域は独立心が強く、フランスでありながらフランスでないとも言われる。マルセイユ港から見える標高160メートルの丘にある守護の聖母教会は、第二次世界大戦でドイツ軍の砲撃を受け、壁には1944年8月15~25日に砲弾を受けた傷跡が残っていた。

 熊本のシニアチームとのラグビー友好試合はフランスチームの公式練習スタジアムを使わせていただいた。ピオリーヌ城での歓迎晩餐会ではプロバンス地方の収穫祭の踊りを披露。日が変わるまでフルコースの食事を楽しみながら歌っ

たり友好を確かめ合った。今回の歓迎に対して市から4000ユーロ(60
万円強)の助成をいただいた
。ニーススタジアムで開催の「日本・イング
ランド」戦を観戦。公式発表の観客3万500人
の半分は日本チームを応援する赤
縞のシャツで熱狂的な応援合戦に参加したが12対30で大敗、善戦むなしく…残念。(写真参照
 なお、今回の訪問はプレイベントで、9月末から大西市長を中心に市議会メンバーなどがエクサンプロバンス市を正式訪問する。



17:24
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メルマガ第1号

金融緩和による「期待」への依存は資本主義の衰弱
                                                                   経済アナリスト 柏木 勉

 日銀の新総裁、副総裁が決定して、リフレ派が日銀の主導権を握った。副総裁となった岩田規久男氏は、かつてマネーサプライの管理に関する「日銀理論」を強く批判し、日銀理論を代表した翁邦雄氏と論争をくりひろげ、その後も一貫して日銀を批判してきた頑強なリフレ派である。

 さて、いまやインフレ目標2%達成に向けて、「「期待」への働きかけ強化」の大合唱となっている。この「期待」は合理的期待理論として欧米の主流派を形成している。そのポイントはこれまでにない大胆な金融緩和による「期待インフレ率の上昇」とされている。これによって実質金利を低下させ、それを通じて日本経済が陥っている流動性の罠からの脱出が可能になるというわけだ。ちなみに、近年ブレーク・イーブン・インフレ率なるものがよく出てくるが、これは普通国債の利回りから物価連動国債の利回りを引いて計算したものであり、期待インフレ率を表すとして利用されている。この期待インフレ率は、アベノミクスが騒がれ出してから、最近では1%程度にまで上昇してきた。同時に株高、円安が進んだ。これを見て「期待への働きかけ」は十分可能であり、現実に実証されつつあるとしてリフレ派の勢いは一層増している。

 リフレ派の主張に対しては様々な反論がなされている。その極端なものとしては、財政赤字が拡大する中で日銀が国債購入を増大させれば、財政ファイナンスとみなされ国債の信認(償還への信頼)が低下し、国債価格暴落で金利の急上昇がおこるというものだ。この時、設備投資はもちろん失速、財政は危機的状況をむかえる。もうひとつはカネを市中にジャブジャブに出していくわけだから、%インフレにとどまらずハイパーインフレをまねくというものだ。

 だが前者に対しては、いまだ家計の現金・預金が昨年で850兆円に増加し外国人の国債保有率も9%弱にとどまっているし、日本の金融機関の国債への信任は当分大丈夫だとか、また少なくとも今後の国債の新規発行分についてはその大半を日銀が購入してしまえば金利の大幅上昇はないとかの再反論がある。

 後者については遊休設備と多くの失業者を抱え潜在成長率との需給ギャップが大きい。だからハイパーインフレなどあり得ないとの再反論がある。その他様々な論点について論争はかまびすしい。

 だが問題は、リフレ派はデフレによる実質金利の上昇に焦点を絞っているのだから、実質金利と景気とりわけ利潤率との関係を見ることが必要だろう。実質金利の推移をみると、2000年代に入って近年まで実質金利は高い時でせいぜい2%強程度ときわめて低水準で推移している(ただし、リーマンショック直後を除く)。ちなみに80年代は5%台を上回っていたのである。そのなかでいざなみ景気は戦後最長を記録した。この間平均してCPIはマイナス.2%程度、実質経済成長率は2%弱と、日本経済はデフレ下で成長したのである。

 その後はリーマンショックにより大幅に落ち込み、回復ははかばかしくないが、ともかく2000年代全体を通じて、実質金利は長期にわたり低水準で大きな変化がないにもかかわらず、好況、不況が生じている。つまり景気の転換を左右しているのは実質金利以外の要因であり、例えばいざなみ景気の起動力となったのは、物価デフレよりも資産デフレからの脱却、デジタル家電を先頭としたデジタル革命、世界の工場となったアジアの生産ネットワークの形成、金抑制による労働分配率の低下であった。

 実質金利が高いと云う場合、何に対して高いのかが問題だが、むろん利潤率に対してだ。高くて2%程度の実質金利をクリアーできない利潤率が最大のネックなのだ。これを突破するのは最終的には不況下の合理化投資と需要創出型のイノベーションだ。デフレ下の低価格であっても利益を生むイノベーションである。しかし現状では200兆円におよぶ内部留保を抱えながら投資が低迷している。これはケインズの謂う企業家の「血気」の喪失というほかないだろう。
 
 そもそもインフレ期待を生むために、中央銀行による市場への説明能力やコミュニケーション能力などという小細工が大問題になるのは笑止千万というべきだろう。政府・日銀による「期待」の醸成という、お情けの支援なしには自ら投資に打って出ることができない。それほど「血気」が失われているわけだ。

 結局のところ、金融主導で金融面から資産効果を引き起こし、それによってようやく実体経済が動き出すというパターンしかとれず、それがまたバブルの形成・崩壊を繰り返すというのが現在の資本主義である。グローバル化で市場経済が世界中に浸透しているかの如く見えようとも、資本主義の中枢部分をなす先進国は、「期待」の醸成に頼るしかないという衰退の段階に入っている。

 

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次回研究会案内

第44回研究会
「21世紀のインドネシア経済-成長の軌跡と構造変化」

講師:加納啓良氏(東京大学名誉教授)

日時:5月11日(土)14時~17時

場所:専修大学神田校舎10号館11階10115教室(会場が変更となりました。お間違えないように)

資料代:500円
オンライン参加希望者は、以下の「オンライン参加申し込み方法」をお読みの上、トップページの「メルマガ登録」から参加申し込みしてください。
オンライン研究会参加申し込み方法

 

これまでの研究会

第34回研究会(2020年2月15日)「厳しさ増す韓国経済のゆくえ」(福島大学経済経営学類教授 佐野孝治氏)


第35回研究会(2020年9月26日)「バブルから金融危機、そして・・・リーマン 兜町の片隅で実務者が見たもの(1980-2010)」(金融取引法研究者 笠原一郎氏)

第36回研究会(2020年11月28日)「ポストコロナ、日本企業に勝機はあるか!」(グローバル産業雇用総合研究所所長 小林良暢氏)

第37回研究会(2021年7月3日)「バイデン新政権の100日-経済政策と米国経済の行方」(専修大学名誉教授 鈴木直次氏)

第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12f日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授田中隆之氏)

これまでの研究会報告