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2015/02/20

「グローカル通信」第13号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
「福島の復興なくして日本の再生なし」とは?
 −福島県南相馬市からの視点−

                         えこえね南相馬研究機構理事 中山弘

  「福島の復興なくして日本の再生なし」という言葉を時々耳にするが、福島に住んでいる人たちは空しく感じることも多い。日本のどこかではアベノミクスやオリンピックと景気の良い話が飛び交っているようだが、被災地ではどこか遠いところの話に思える。東日本大震災とそれに続く原発事故が起きてからもうすぐ4年になろうとしているが、福島県の原発周辺の自治体の復興はまだまだ先のように感じる。

 私は埼玉県の住人だが、3.11の2週間後に南相馬市を復興支援ボランティアで訪問した縁で、月に2、3回ほど通いながら再生可能エネルギーとの共生による農業再生や地域活性化、あるいはまちづくりワークショップなどの支援をしている。昨年4月にグローカル通信の関係者の南相馬スタディツアーをコーディネートしたご縁で、半年に一度ぐらいのペースで寄稿することになった。そこで、被災地と外部を俯瞰して見る視点から、南相馬の今とこれからを紹介し、読者の皆様にも理解を深めていただきたい。

何をもって復興と言うのか

 南相馬市は、福島県の太平洋沿岸、通称「浜通り」の北側の中核都市である。福島第一原発からの距離が約10km〜40kmに位置しており、いまだに人が住めない20km圏内、震災直後は屋内退避だった30km圏内、そして圏外が混在している。放射性物質が飛散したのが原発から北西方向であったため、西の阿武隈山系に近いところは放射線量が高いが、東側の海沿いは低く、安全とされている年間累積被ばく量1mSV以下のエリアも多い。

 しかし、人口は減少している。震災前には約7.1万人いた市民が、現在では 約 4.7万人と2/3になってしまった。特に子どもや若い人たちが減少している。幼児は震災前の半分以下、小学生4割減、中学生3割減、20〜30代が3割減となってしまった。結果的に高齢者の割合が急増し、65歳以上の人口比率が33.4%と、2030年頃の日本を先取りしている。しかも、若い人がいないから介護や看護の従事者を獲得できず、高齢者施設があっても人手不足で入居やケアを受けられない状況にある。これらの状況から現在も市外や県外の施設から戻ることができず、災害関連死がいまだに増えている。せめて故郷に戻り、人生の最期を迎えさせたい思いがあります。
 
 20圏内に位置する小高区は、避難指示解除準備地域に指定されていて、立ち入ることはできるが、居住することつまり夜に泊まることはできない。この地域には 1万2,842人が住んでいたが、現在は市外に約5千人が避難、市内の仮設住宅に3,200人、借り上げ住宅等に2,400人が暮らしている。かつては何部屋もある大きな家に住んでいた方たちが、そこに住む
ことができず、6畳一間などの住まいを余儀なくされる状況が続いている。

 農業もまったく再生できていない。放射能影響への懸念から、今年度の米の作付けはわずか2%であった。露地野菜も販売作物としてはほとんど機能していない。これまでは農業への賠償金もあったが、これに依存することは次第に難しくなっている。大規模ハウスや植物工場を建てたり、集落営農などへの移行が必要だが、まだまだ復興への道のりは遠い。
 
再エネとの組み合わせで農業を再生

 このような環境のなかでも、未来に向けて前向きに取り組んでいこうとする人たちもいる。原発から20km内外の農家の間で、田畑の上部に太陽光パネルを設置して農業所得を売電所得で補完することで、農業再生と地域活性化を図る取組みが始まっている。南相馬市は「再生可能エネルギー推進ビジョン」を掲げており、原発に依存しない自治体を目指している。

 また、20km圏内の小高区では、人が帰っていないJR常磐線の駅前に、コワーキングスペースを設けたり、小高区に立ち寄る人たちのための食堂を経営したり、昔ながらの方法で蚕を飼い絹織物を作ろうとする人たちもいる。誰も住んでいる人がいない時間が止まった様な町でも、そこで働くことで再び町を動かしていく。何らかの活動があれば、取引先やスタッフ、あるいは受益者が集まるようになる。そうすれば、課題や解決法も見えてきて、新たなネットワークのきっかけにもなるだろう。また小高駅前にはアンテナショップも開店した。地域の人たちがつくったお花や小物、絹織物などを販売・マーケティングをするためのものである。

 今のところ、小高地区で、戻りたいと考えている人は60歳以上で3割いるが、40歳未満では 10%レベル。地元の人たちや外部支援の人たちを含めた取組みが、ここで暮らせるかもしれない、戻れるかもしれない、というプラスの想いを引き出すと期待している。このようなサイクルが動き出せば地域経済も回り出す。日本が将来遭遇する人口減少問題の解決にも繫がっていけたら良い。

 また、震災後は道路が寸断され、かつ常磐線も不通になり陸の孤島的になったが、昨年9月には原発の横を通る6号国道が開通して南のいわきと繫がった。また昨年末には常磐高速道路が仙台まで開通し北ともつながった。さらに、今年3月1日には常磐道が全線開通する予定で、首都圏からも3時間ちょっとで結ばれる。

 百聞は一見にしかず。この記事の読者の皆さんも、ぜひ、南相馬に足を運んでいただき、理解を深めるとともに、再生・復興に向けた交流を進めていただけたら幸いです。

 どうぞよろしくお願いします。

21:57

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これまでの研究会

第36回研究会(2020年11月28日)「ポストコロナ、日本企業に勝機はあるか!」(グローバル産業雇用総合研究所所長 小林良暢氏)


第37回研究会(2021年7月3日)「バイデン新政権の100日-経済政策と米国経済の行方」(専修大学名誉教授 鈴木直次氏)

第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

第44回研究会(2024年5月12日)「21世紀のインドネシア-成長の軌跡と構造変化
」(東京大学名誉教授 加納啓良氏)


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