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2021/07/24

POLITICAL ECONOMY第193号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
全国最賃運動の夏の陣
菅内閣の早期に「1000円最賃」を超えて

                     グローバル産業雇用総合研究所所長 小林 良暢

 中央最低賃金審議会は、2021年度の最低賃金を28円引き上げ、時給930円を目安とすることを決めた。28円の引き上げ額は過去最大で、上げ幅は3.1%だった。この目安を基に都道府県ごとの審議を経て、10月には新たな最低賃金が適用される。

 これまで安倍内閣が16年の全国加重平均を初の800円に乗せてから4年で、19年に900円台に乗せてきた。これを引き継いだ菅内閣は、今年の最賃審議会の冒頭で、三原厚労副大臣が「より早期に全国平均1000円を実現する」と公言したが、我が国の最低賃金を取り巻く環境は、そんな口先だけでは動かない。

低さ際立つ日本の最賃

 第一に、日本の最低賃金は、主要先進国の中では水準の低さが際立っていることである。内閣府によると、21年の最低賃金はフランスと英国が1302円、ドイツが1206円、米国は州平均で1060円だ。また、引き上げ率も鈍い。日本は、コロナ禍で20年は0.1%の微増にとどまったが、欧州ではコロナ禍だからこそと英国は20年4月に6.2%、21年4月に2.2%引き上げ、ドイツも20年1月に1.7%、21年1月に1.6%上げた。またアジアでも、20年には日本の最低賃金が、額で韓国に抜かれている。

 仮に、菅内閣が方針通り「より早期に全国平均1000円」に到達させたとしても、イギリス、ドイツにはまだ200~300円の差が残る。今度の最賃審議の最終場面の採決に当たって、経営側の委員2人が反対を主張、これまでの労使双方が全員同意するのが慣例を破って、最後は公益側が政府の意向を斟酌して押し切った。最低賃金は、企業経営やマクロ経済への影響が大きく、上げればいいというものではなく、政労使合意を維持するためには、この辺りの経営側の意向への配慮があってもよかっただろう。

三大都市圏の時給は上がっている

 第二に、最賃引き上げと労働市場の関連の問題である。日本経済新聞は、最賃引き上げを報じた15日付の紙面で「事務系バイト時給最高 三大都市圏の時給1176円」の記事を報じた。パート・アルバイト市場では、「事務系」職種の時給の上昇基調が強まっており、リクルートの調査によると三大都市圏(首都圏、東海、関西)の6月のアルバイト・パートの募集時平均時給は事務系が1176円と前年同月より47円(4.2%)高く、過去最高を2カ月連続で更新しているという。

 事務系時給をけん引しているのが「コールセンタースタッフ」で、前年同月に比へて45円高い1384円と過去最高を更新している。コールセンタースタッフは故障受付やトラブル対応を含めた苦情処理を担うこともあって、顧客対応のスキルが要求され、リモート勤務で外出を控える中で?コマースの盛況が高時給の一因となって、それが一般事務の単価へも波及したのだ。

 「一般事務」は、派遣やパート・アルバイト市場の代表的な職種で、その時給単価は企業内に於ける最低賃金ランクに当たる高卒・専門学校卒の初任給との連動性が高い。電機連合は21春闘要求で産業別最低賃金(18歳見合い)166,000円について2000円増額、これを時給換算すると1050円、これは事務系の派遣・バイトが波及して動いたのである。

 夏の最低賃金審議会の闘いは、かかる労働組合の現場の取り組みと労働市場のリアルな市場単価の動きを反映したもので、三原副大臣に言われなくても、時給1000円は近いのではないか。

 第三に、東京・神奈川の「1000円最賃」を先頭に、大阪、愛知がこれに続き、さらに埼玉、千葉、京都、兵庫が複数年かけて100円アップに取り組めば、「1000円最賃」が現実的な視野に入る。

 いま一つ、労働組合の運動が果たす役割として重要なのが、労使協定を結べばその地域(都道府県)で設定できる仕組みとして活用できる「特定(産業別)最低賃金」の取り組みである。この運動は、電機労連や自動車総連が積極的に取り組み、地域別最賃の上に時給100円とか150円を上乗せする時給を実現している。

 筆者は、製造請負の賃金労働条件の適正化事業の委員をしているが、それらの産業の現場を入って話を聞くと、製造請負の労働者の時給相場は、最低賃金は低すぎて問題外で、「電機労連や自動車の産別最賃にさらに20~30円どう積むかが、優秀な労働者を採用できるかの決め手だ」と言う。AI・5G・DXの世界競争時代に勝機をつかむには、これしかない。

15:17

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第35回研究会(2020年9月26日)「バブルから金融危機、そして・・・リーマン 兜町の片隅で実務者が見たもの(1980-2010)」(金融取引法研究者 笠原一郎氏)


第36回研究会(2020年11月28日)「ポストコロナ、日本企業に勝機はあるか!」(グローバル産業雇用総合研究所所長 小林良暢氏)

第37回研究会(2021年7月3日)「バイデン新政権の100日-経済政策と米国経済の行方」(専修大学名誉教授 鈴木直次氏)

第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

第44回研究会(2024年5月12日)「21世紀のインドネシア-成長の軌跡と構造変化
」(東京大学名誉教授 加納啓良氏)


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