アベノミクス、地域経済への浸透はまだまだ
神奈川県寒川町議会議員 中川登志男
私は、2013年2月より、「寒川神社」で有名な神奈川県寒川町で町議会議員を務めている。議会では、文教福祉委員会と建設経済委員会に所属しているが、専修大学大学院では法学研究科に属し、教育制度などを専攻していることもあって、文教福祉は得意だが、建設経済は正直なところあまり得意でない。でも今回は、安倍政権が進める「アベノミクス」が、どこまで地域経済に寄与しているのか、このテーマに挑戦してみた。
年が明けた1月上旬、町の商工会が主催する賀詞交歓会が町内で行われた。私も町議会の建設経済委員の一人として参加した。会費は5,000円。町内企業の経営者が一堂に会する場でもあるので、アベノミクスで町の経済がどこまで復調しているのか、聞いて回った。
最初に聞いたのは、精密機械部品メーカーの役員。中規模の企業だ。その役員によると、今は景気回復に向けた土台を作っている時期で、これからその土台の上に、いろいろなものを乗せていくことになるのではないかと。早い話、まだアベノミクスの恩恵は感じないということだ。もっとも、このメーカーは、精密機械部品の製造ということもあって、景気の波が即、業績に反映されるわけではなく、緩やかに反映される傾向があるという。それでも、現段階では、業績が回復傾向にあるとは言えないという。
次に、ビルメンテナンス会社の社長に話を聞いた。開口一番「業績?良くないですよ。アベノミクス?どこの話ですかという感じです」。それ以上聞いたら悪そうなので、早々に退散した。
ちょうど隣になった町内の飲食店経営者に聞いてみた。「景気はどうですか?」「全然良くないわねぇ」。「国は企業交際費の減税も検討しているみたいですが?」「どういう形でも良いから、皆さんがもっと店に来ていただけると、嬉しいけど・・・」。あまり反応は良くなかった。
景気の指標=車の修理も増えていない
青年会議所会員でもある板金の若き経営者に話を聞いた。何でも、景気が良くなって、車を買う人が多くなると、車の修理に来る人が多くなるそうだ。外出機会が増えると、車を壁などにぶつける人が多くなるからだとか。でも、今のところ、そうした状況は全くないという。「アベノミクスなんて全然感じないですね・・・」。
そこに、青年会議所のOBが話に割って入ってきた。「景気回復なんて、あと3か月で終わりだ。4月から消費税が8%に上がるから、絶対、それで景気が腰折れする。だいたい安倍政権には確固たる成長戦略がない。しっかりとした成長戦略があればもっと株価も上がるし、地域経済も良くなるはずだ」。なるほど確かに消費増税は経済にとって不安要素だ。
寒川には大企業の工場も少なくない。大手自動車メーカーの幹部に話を聞いた。私と同じ専修大学の出身。それはともかく、「景気回復を感じるのは対中国輸出だけですね。日本国内向けは、あまり景気回復を感じません」。消費増税について聞いてみた。「(消費増税直前の)駆け込み需要には期待できますが、やはり増税直後の反動には不安を感じます」。
最後に、町の経済産業政策の担当部課の職員も来ていたので、話を聞いてみた。「企業回りをしていると、以前は設備投資なんてとんでもない、という企業が多かったが、最近は考えてみようか、という企業も出てきている。その意味では、わずかながら景気の回復を感じる時もある」。もっとも、その職員によると、町も地元企業の支援をもっと考えてくれ、と言われることがしょっちゅうなのは変わらないので、やはりアベノミクスの恩恵を感じることは、あまりないという。
結局、あまり良い話は聞けなかった。安倍政権によると、確実に景気は回復しているらしいが、少なくとも我が町ではそのような状況にないと感じる。時間が経てば、大企業ばかりではなく、地域の中小規模の企業にもアベノミクスが波及してくるのではないかという期待を語る経営者もいたが、正直どうなのだろう。
寒川のような小さな町にアベノミクスの恩恵が及ぶ前に、安倍バブルが崩壊するという結果に終わるのではなかろうか。