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2014/07/02

POLITICAL ECONOMY 第18号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
潜在成長力もGDP需給ギャップもまやかしの理論の産物
                               経済アナリスト 柏木 勉

 黒田日銀総裁は最近の会見で、GDP需給ギャップがほぼ解消されつつあると述べた。また内閣府は本年1-3月期のそれは▲0.3%としている。他方でIMFでは2014年平均▲1.3%だ。需給ギャップは景気動向を示すものとして内閣、政策当局、経済学者なども大いに気にするものであろう。だが、これらの数値が報道されるのを見て、筆者はやれやれいい加減にしてくれといった気分になる。

 それは潜在成長率とかそれによる需給ギャップとか、いかにももっともらしく示される数値が完全なまやかしであり、理論的に破たんしているものでしかないからだ。というのは、これらの数値は集計的生産関数なるものから計算されるが、生産関数そのものが理論的に破綻していることは約半世紀前にポストケインズ派(ジョーン・ロビンソン、スラッファ等)がサミュエルソンやソローを論破して立証済みなのである(ケンブリッジ資本論争)。サミュエルソンは生産関数が理論的誤謬であることを自ら宣言せざるを得なかったのだ。

 今回はこの問題についての簡単な紹介とコメントを行いたい。

生産関数といっても色々あるが、ここではコブ・ダグラス型生産関数を示すと
    Y(実質GDP)=AKαLβである。
(Aは技術進歩等全要素生産性、K、Lは資本、労働の投入量、αは資本分配率、βは労働分配率)

 以上の生産関数を計測したうえで、計測された生産関数に、Aは所与として最大限可能な労働時間Lとフル稼動水準のKを挿入して潜在GDPが得られる。そこで、需給ギャップはGDPの実績値と潜在GDPの乖離率となる。

 従って生産関数そのものが破綻していれば当然潜在成長力や需給ギャップと称されているものも成り立たないことになる。

価格は利潤率に独立しては決まらない

 さて、集計的生産関数において問題になるのが資本Kである。集計的生産関数では、単純に物的資本財が労働と共に投入され生産物が生まれるとされている。あたかも資本財が、例えば全て小麦であり生産物も小麦であり、当然剰余も小麦であるというようなものである。ところが、通常の場合資本財は質的に異なる財の集まりである。これを一つの同質の数量にするには価格によって集計するしかない。しかし、価格によって集計すると利潤率の影響を受けるので、上記の小麦の例のようにはいかないのである。小麦の例では100トンの資本財(小麦)で120トンの小麦が生産されれば、剰余は20トン(利潤率20%)となるが、資本財100トンは利潤率20%の影響を受けることなく100トンは100トンで変化はない(利潤率とは独立)。しかし、価格によって集計するとそうはならない。

 今、次のような生産体系を考えてみる
 (小麦1クォーターの価格をX、鉄1トンの価格をY、均等利潤率をR 、Wは賃金)
小麦部門 (250X+10Y)(1+R)+2/3W=500X
鉄部門   (100X+5Y)(1+R)+1/3 W=20Y
(小麦部門は250クォーターの小麦と鉄10トン、総労働量のうち3分の2が投入されて小麦500クォーターが生産される。鉄部門も同様に見る) 

 上式においては、小麦を価値尺度財とすれば決定されるべき変数はY、R、Wの3つだが、式は2つなので自由度1である。そこで独立変数は何かといえば利潤率になる。利潤率が先決されて価格が従属的に決まるのである。Wが独立変数になることはない。なぜならそんなことになれば資本主義は崩壊するからだ。結局、価格は利潤率に独立しては決まらない。つまり生産関数において投入されるKは、価格によって集計された数量だから利潤率によって変化してしまう。生産関数はその資本量を利潤率とは関係のない物量のごとく装っているが、その誤りは明々白々である。利潤率の高低に独立な資本量などというものは存在しないのである。
 
 しかし、生産関数は以上のように破綻しているにもかかわらず、いまだに俗世間では大学やその教科書、政府・関係省庁や研究機関において大手を振るって利用されている。それを支えているのは、資本主義擁護のイデオロギーである。また無知も大きな要因であるが、政策提言が出来なくなりメシの食い上げを恐れる俗流経済学者の「赤信号みんなで渡れば怖くない」といった本来の研究者からかけ離れた仲間同士のかばい合いである。

 だが現実を見てみよう。特に近年は減損会計が導入され、ここ数年はIFRS(国際会計基準)導入の是非をめぐって論議がかまびすしい。これらは時価会計の徹底という大きな流れであるが、減損会計等についてみれば、それは大雑把にいうと、例えばある工場(固定資産=資本)が今後生み出すと予想される利益が当初見込んだ利益とくらべ減少すれば、その減少分を損失として計上し、当該固定資産の価値を割り引くというものである。大企業になればそれは何百億円にものぼる。利潤率の変化によって、投入された資本が変動することは明々白々である。そして、それによって赤字が拡大すれば賃金カット、雇用削減その他リストラが強行される。それが資本主義である。

 マルクスは、資本とは姿態変換を繰り返す価値の増殖体であるとした。それをあらためて銘記すべきであろう。


12:52

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