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2017/09/01

日本経済シンポジウム

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
経済分析研究会設立5周年記念シンポジウム
日本経済、再生か破綻かで議論
                                     
 経済分析研究会が設立されて5年目を迎えた。これまでに24回研究会を行ったが、節目の5周年ということで3月11日にシンポジウムを開催した。会場は100人近くの人が集まり、緊張感のある議論に終始熱気があふれていた。パネラーは法政大学法学部教授水野和夫氏、埼玉大学大学院人文社会科学研究科長伊藤修氏、獨協大学経済学部教授須藤時仁氏、埼玉大学大学院人文社会科学研究科准教授宮﨑雅人氏、進行役は横浜市立大学名誉教授金子文夫氏が行った。シンポジウムの第一部は各パネラーから報告で、第2部はパネラー間の議論とフロアからの質問を受け、議論を行った。

再分配の強化では一致

 水野氏の報告。トランプ大統領の登場の背景には中間層の没落がある。建国以来米国を担ってきた白人労働者の賃金の低下、失業率の増加、自殺率の上昇、薬物中毒の増加である。これはグローバル経済がもたらしたものだ。トランプは国内に製造業による雇用を創り出そうとしている。しかし、世界秩序に対する責任よりも国内を優先しており、世界経済は転換点にきている。日本の賃金は伸びず消費は低迷している。このため投資をしても空き家に象徴されるように、将来家計が不良債権を背負うのではないか。

 伊藤氏の報告。日本経済は3つの分野で良くない状態と悪い絡み合いが生じている。プライベート分野は、企業の横並び行動で共倒れとなった。人件費削減も多くの企業が行ったことで、全体の消費を萎縮させた。マインド面では人々の意識に「やけくそ」が強まり、パブリックな分野で社会保障を狙い撃ちにしている。社会のフレームワークを変えることが必要だ。

 須藤氏の報告。将来に対する不安が高まり安全資産としての貨幣を保蔵する貨幣愛が強まっている。これは90年代後半以降の日本型経済システムの崩壊が背景にある。大蔵省による護送船団方式、メーンバンクシステム、長期雇用慣行、これらに支えられて消費、設備投資が安定し需要が拡大した。企業は、銀行による安全資産を重視する姿勢に転換した。

 宮﨑氏の報告。「自己責任」を強調するという国民の意識とムダの削減の強調で、再分配は限定的になっている。「必要原理」によって財政を立て直していくべきだ。人々の必要を満たすということで財政がきちんと仕事をすることは、結果として再分配もなされるし経済成長にもつながる。

成長をどう見るかで議論

 第2部はまずパネラー間の討論を行った。トランプ大統領の登場による日本経済に対する影響について、水野氏は世界は大きく変わるという見通しを示した。日本経済の現状について伊藤氏は社会民主主義的な方向に持って行くべきだと述べた。話題となっているヘリコプターマネーについては、須藤氏はひとつの選択肢として評価したが、伊藤氏はやっても日銀の金庫に戻るだけと述べた。また日本経済は今後、成長は可能かについても議論があった。水野氏はこれ以上の成長は限度を超えるのではないか、分配に力を入れるべきという見方を示したのに対して、宮﨑氏は負担増になっても「必要原理」で分配すれば、成長も実現できるという考え方を示した。

 フロアからの質問では、トランプ政策の評価では、内向きなのは製造業で金融のグローバル化は変わらないのではないか、GDPの成長率は低くても日本企業は海外での活動にシフトさせたことで利益は増加させているのではないか。再分配の強化の財源は国民負担増=増税しかないのではないか、など鋭い質問、意見が多数出て活発な議論が展開された。(事務局 蜂谷 隆)


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