中国の超格差社会の是正は可能か
専修大学経済学部准教授 徐 一睿氏
12月17日に開かれた第24回研究会は、専修大学経済学部准教授徐一睿氏に「中国経済-超格差社会からの脱出は可能か」と題して話していただいた。中国経済は2000年ころから急激な経済成長を遂げ、国民の生活は向上したが、富裕層が生まれ格差は広がっている。徐氏は、都市化の波の中で都市周辺の農村と地方の農村という形で、農村にも富裕層が登場、格差が多層化している現実を報告、また、所得税が全人口の2%からしか徴収されておらず、このことが格差拡大を助長しているとして、税制改革が必要と述べた。
農村内にも高所得者が増えている
中国は急激な成長を遂げた。日本を抜いて世界第2の経済大国になった。25年には米国を抜くと見られている。しかし、ひとりひとりの中国人からすると、貧困層、低所得者層も確実に所得水準は上がっているものの、富裕層はもっと上がっているので格差は拡大している。この点は日本など先進国と異なる点だ。
中国の格差を見る場合、単純に
経済成長の恩恵を受けた都市と取り残された貧困な農村の対比で見てはいけない。というのは農村の中に裕福な層が出現している。全国的に都市化が進み、都市周辺の農民は値上がりした土地の売却などで富を得たからだ。
税制面では、高所得者と低所得者からは所得税は取っていない。さらに固定資産税、相続税、贈与税もない。高所得者を優遇するのは成長力の源泉である彼らのモチベーションを維持するためで、低所得者から税金をとらないのは暴動を恐れるためだ。そして農業税はないので農村からもとらない。所得税は中間層に限定、人口のわずか2%に過ぎない。付加価値税が最高17%かけられており、これが国の歳入の大半を占めている。しかも、内税なので消費者は税金を取られているという認識がない。
中国経済は今後、成長率は下がるだろう。また、内需主導に転換しなければならない。こうした点から考えると超格差社会の是正が急務になる。そのためには「公平な税制」と社会保障システムの構築が必要となる。農村を特別視しない、制度の一元化をはかることで、都市は社会保障、農村は土地という既存概念を突破することが求められている。徴税コストが低いが逆進性が高い加価値税中心となっている税制を所得税中心に転換すること、高所得者から固定資産税、相続税などを徴収する税制改革が求められるのではないか。
低所得者層の底上げをはかる
以上の徐氏の提起を受けての質疑の中で、中国共産党について、税制改革は可能なのか、成長率が下がると矛盾が露呈するのでは、といった質問があった。中国共産党が革命で掲げた貧困層に依拠して平等な社会をつくるといった理念は遠い昔の話で、現在の共産党は政権維持のため人事権と財政を使ってうまく統治していると答えた。共産党も農村をひとつに見ており、この考え方を変え省内格差など多層化している現実から出発することがカギではないかと述べた。
徐氏の中国論は非常に新鮮な感じがした。都市化による農村の変化が格差拡大に大きな役割を果たしているという視点を打ち出しているからだ。また、税制が中国の急成長による社会の変化に追いついていない。というよりも矛盾をきたしているという点も納得できるものだった。(事務局 蜂谷 隆)