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2015/12/01

POLITICAL ECONOMY第37号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
16春闘「要求ダウン」でスタート
                  グローバル産業雇用総合研究所所長 小林良暢

 11月26日、安倍首相や経済閣僚と経済界が参加する官民対話の場で、榊原経団連会長が「来年は今年を上回る水準の賃上げを各企業に期待する」と表明、このニュースは同日開催された一億総活躍社会国民会議の「最低賃金を年3%上げ1000円にする」という緊急対策とともに、新聞各紙が1面トップで大きく報じた。

 しかし、翌27日、連合が中央委員会を開催、2016年春闘のベースアップ(ベア)要求を「2%程度」をする方針を正式決定して16春闘がスタートしたが、これを報じた新聞はベタ扱いだった。

 去年の今頃は、政労使会議の場で「経済の好循環」の実現のために政府と連合がタッグを組んで経団連に春闘での賃上げを迫り、2年連続のベアを実現めざして大いに盛り上がっていたが、この落差はいかなる事情からきたものだろうか。

 まず安倍内閣の事情から。これは比較的単純である。

 この暮で4年目を迎える安倍内閣は、一億総活躍社会を目指す「新3本の矢」を始動させた。一億総活躍社会とは「希望を生み出す強い経済」、「夢を紡ぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」だが、それを実現する「新3本の矢」がGDP600兆円、希望出生率1.8、介護離職ゼロなどの政策である。

 政府がこの「新3本の矢」を打ち出した背景には、ひとつは安保法案の強行採決から経済専心に向けて政治的な場面転換をはかりたかったこと、いまひとつは(実はこっちの方が重要なのだが)、息切れがみられるアベノミクスの転進をはかる必要に迫られたからである。アベノミクスの神髄は日銀の異次元緩和によるデフレ脱却。異次元緩和は株価上昇と雇用の量的拡大には成功したが、肝心のデフレ脱却すなわち物価が上がらない。政府は原油高と賃上げによるコストアップでそれを狙ったが、原油安と連合の賃上げへの反応の鈍さからコストプッシュによる価格転嫁が起こらず、安倍内閣も賞味期限切れが近いアベノミクスに半ば見切りをつけたのである。

 そこで、新3本の矢の緊急対策として最低賃金1000円やパート「130万円の壁」の見直し、低年金受給者への3万円支給などの家計支援を柱とした政策を連発、キャッチコピーも目詰まりを起こした「経済の好循環」から「配分と強い経済の循環」へリニューアルしたのである。

連合は要求ダウン

 一方、労働組合の方の事情だが、これはやや複雑である。

 連合がベア要求を復活させて3年目になる。15春闘で連合はベア要求「2%以上」を掲げ、結果は2.20%を獲得した。だが、この賃上げ率は定期昇給込みの数値で、ベースアップは筆者が推計したところでは0.8%程度に止まった。当時、筆者は「この結果に一番がっかりしたのは、物価目標2%達成のために雇用者所得2%を望む安倍首相ではないか」と書いたり、話したりしたが、その政府の目論見は崩れたのである。

 それでも3年連続ベアへ16春闘に望みを託す声は強かったが、夏の産別・企業連の大会シーズンになると「来年は今年のようにはいかない」という声がちらほら出始め、まだ要求論議すら始まらない9月早々に、春闘相場に決定力を有するトヨタ労連から「中国リスク、国内販売の先行き懸念から、16年のベアは厳しい環境を踏まえて議論する」との方向が表面化、月が進むにつれてベア要求「2%程度」に固まっていった。去年と2%は同じだが、「以上」が「程度」に変わった。だが組合用語で「以上」と「程度」は大違い、明らかに要求ダウンだ。どのくらいダウンかというと、金属労協がベア要求基準を「3000円以上」と決定したことから分るように、去年の要求「6000円以上」と比べて半減である。

 去年は6,000円の要求で、トヨタ、日立が共にベア4000円、率で1.0%アップの回答を引き出したが、16春闘が連合「2%程度」・金属労協「3000円以上」の水準半減となると、結果は額・率ともに去年の半分くらいの水準になると容易に想像がつく。

進む労抜き

 16春闘に臨んで、それ以上に大きく変わったことは政労使会議が今のところ開催されず、労抜きでことが進められ、マスコミの扱いもそれにならうようになってしまっていることである。雇用情勢は完全失業率が3.1%と空前の低水準にまで改善してきているが、非正規労働者の比率が4割を超え、「雇用の量」よりも「雇用の質」が喫緊の課題になっている中で、「新三本の矢」の施策を検討する場の一億総活躍国民会議やその司令塔である経済財政諮問会議に労働側の代表が参加していないのは、異常事態である。連合がパワー不足で頼りにならないという安倍首相の気持ちは分からないでもないが、ばっさり切り捨てるというのは大人げない。筆者は去年の春闘を政労使の「合意形成型春闘」として高く評価したが、労使の代表が参加し、政労使三者構成で非正規雇用を含めた多様な働き手の声が届くような国民的議論の場にすることを望みたい。

18:21

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第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

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