地方選で不振の自民党、TPPも影響? 来夏の参院選は?
神奈川県寒川町議 中川 登志男
昨年12月の衆議院総選挙で300近い議席を獲得して圧勝し、今年4月の統一地方選でも道府県議会で議席を伸ばした自民党が、ここに来て地方選で不振に陥っている。
統一地方選は元々、茨城、東京、沖縄はずれていたのに加え、4年前に発生した東日本大震災の関係で、岩手、宮城、福島も統一地方選から離脱した。
9月6日に投開票された岩手県議選(定数48)では、自民は改選前の12議席を1議席上積みして13議席としたものの、定数5の奥州市選挙区では1人だけの公認候補が落選するなど、あまりパッとしない結果となった。
また、10月25日に行われた宮城県議選(定数59)では、自民は前回獲得の28議席より1議席少ない27議席にとどまった他、現職が3人も落選した。さらに11月15日投開票の福島県議選(定数58)では、自民は改選前を2議席減らす26議席となったが、現職が4人も落ち、特に定数10のいわき市選挙区では自民現職が2人落選した。
安保法制の成立を強行したことで、安倍政権の支持率が低迷していることも影響したと思われるが、被災地の復興がなかなか進まないことやTPP(環太平洋経済連携協定)合意も影響したのではないかと言われている。
これが来夏の参議院議員通常選挙にどのように影響するのかが注目される。来夏の参院選では、改選されない非改選議席121のうち、自民と公明は合計で76議席を占めている他、次世代の党や日本を元気にする会、大阪維新の会といった与党補完勢力の議員も約10名いる。
従って、来夏の参院選で改選される121議席のうち、36議席程度を獲得すれば、与党は事実上参院の過半数を維持できる。また、76議席程度を獲得すれば参院の3分の2以上の162議席に達するので、既に与党が3分の2を占めている衆院と合わせ、憲法改正の発議も可能となる。
実際には、与党の獲得議席は36から76の間になって、参院の過半数は獲得するが3分の2は獲得できないという結果になると思われるが、そのカギを握るのが地方の1人区である。
来夏の参院選で改選される121議席のうち73議席が都道府県選挙区、48議席が比例区である。そして73議席の都道府県選挙区のうち6人区が1か所(東京)、4人区が3か所(神奈川、愛知、大阪)、3人区が5か所(北海道、埼玉、千葉、兵庫、福岡)、2人区が4か所(茨城、静岡、京都、広島)あり、残りの32か所が1人区である。
比例区では自公が合わせて20議席強を取るだろう。6人区の東京では自公が2、3議席を取るものと思われる。3か所ある4人区では自公が2議席ずつ、5か所ある3人区では自公が1、2議席ずつ、4か所ある2人区では自民が1議席ずつ獲得したとすると、自公は38~48議席を確保することになる。ここに1人区の獲得議席が加わる。
1人区が帰趨を決める
比例区と2~6人区の合計は43±5議席で、ここからの変動は少ないと思う。問題は32か所ある1人区がどうなるかだ。
仮に1人区で自民が全勝すれば、与党の獲得議席は75±5議席となり、非改選の76議席や、与党の補完勢力約10名と合わせて、参院の3分の2である162議席をうかがうことになる。一方で、1人区で自民が全敗すれば、与党の獲得議席は43±5議席となり、非改選の76議席を合わせても参院の過半数の122議席に届くかどうかとなる。その意味では、1人区の帰すうは非常に重要なのである。
周知の通り、1人区には農村部が多い。TPPの問題に加え、アベノミクスの恩恵が都市部に偏っているという状況もある。無論、安保法制も重要な争点だが、経済問題も選挙結果を大きく左右させる要因となるのではないか。「国民連合政府」の呼びかけの下、1人区を中心に共産が独自候補の擁立を見送り、各1人区で数万票ずつはあるとされる共産票が野党候補に向かえば、自民はより苦戦を強いられることになる。
地方が安倍政権にどのような審判を下すのかが注目される。