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2019/04/14

POLITICAL ECONOMY137号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
社会主義の鍵は人々の間の主体的合意形成
                経済アナリスト 柏木 勉

 AIやビッグデータ、量子コンピュータ等に関するマスコミ報道を見ていると(すみません、私はこの種のまともな本を読んだことがない)、「社会主義の計画経済が可能になるのか」などと考えたりする。NP問題(一定の制約下の最適解を求めても爆発的な計算量で事実上不可能という問題)も一部計算可能になったとか。計算量の問題が技術的に解決すれば計画経済に一歩近づくといえるのか・・・電脳社会主義?

 しかし問題の本質はそこにはないだろう。問題は人々の間の合意形成にある。ごくごく単純化すると「何をどれだけ生産しどれだけ消費するか(投資するか)」の合意だ。この主体的合意形成が鍵である。かつての共産圏では一党独裁のもと、中央の一方的な指令で人々は働かされた。これでは普通の人々が生産と社会の主体になれない。疎外された労働そのものである。
 
人々の合意形成?たわけたことを!

 ここで、ネットの画面を流していたら、マルクスの墓が落書きされて碑文もハンマーで殴られたとの記事が出てきた。EU内で反緊縮の左派が伸びてきた事への反感だそうな。落書きは「ボリシェビキ・ホロコーストの記念碑 1917年 1953年 犠牲者6600万人」「大虐殺とテロ、弾圧、大量殺人の建築家」等々。墓を毀損するのはけしからんと思ったが、眺めているうちに「落書きの言葉自体は正しいな」と色々考え始めた。

 犠牲者6600万人ははっきりしないが、何百万人から数千万人まで、いずれにしても大量の人間が殺害されたのは事実だ。だが、スターリン主義の罪を直接マルクスになすりつけるのは誤りだ。プロレタリアート独裁は一党独裁にあらず。一党独裁と「人々の間の合意」は相対立する。アジア的専制下の特殊ロシアが生み出した職業革命家、それらが生み出した一党独裁。「人々の合意形成?たわけたことを! 7、8割は読み書きもろくにできない農民だ。党が全てを指導するのだ」 
 
恐るべき党物神化

 ロシア革命は多面的に検討されてきたが、ここでは一党独裁を支える心性についてだけ触れる。まずレーニンは述べた。「プロレタリア独裁は党によって実現される権力である。それは暴力に依拠しており、いかなる法にも束縛されない」。

 これについてピャタコフは述べる(ピャタコフは党の中枢にあったが、当時党を除名され、復党を願い出ていた)。その時(1929年前後)語ったものだ。憂鬱になってくるが、長い引用をさせてもらう。

 「・・・いかなる法にも、いかなる制約にも、いかなる障碍にも束縛されぬという自由な暴力に立っているとき、・・・行動不可の範囲は極度に圧縮されて零に至る・・・不可、実現不能、許容できぬといわれるものを全て実現するというイデ―を担う党、それがボリシェビキだ・・・その党内に身を置くことの栄誉と幸福の為なら、我々は矜持も自尊心もその他全ても犠牲に供すべきなのだ。党に復帰するに当たって我々は党から指弾を受けた信念を頭脳からたたき出すのだ。反対派に属していた時に我々が擁護したもの、それがその信念であったとしてもそうするのだ・・・暴力に関する思想に貫かれる我々は、その暴力を我々自身にふりむける。そして、党が要求するならば党にとって必要であり重要ならば、多年にわたって持っていたイデ―を24時間以内に頭脳からたたき出すという意志行為をあえてなしうるのだ・・・自分自身を破砕して党と全く一体化するためにこの暴力にうったえるということ、その事の内にこそ本当の思想的ボリシェビク・コムニストの本質が現れる・・・私が白とみなし、また私に白と見えたものをこれからは私は黒とみなす。というのも党の外では、党との合致なくしては、私には生がないからだ・・・党外にあること、それは零ということだ・・・党がその目的実現のために白を黒とみなせと要求するなら――私はそれを受け入れ、それを自分の信念にする・・」
(平凡社「ドキュメント現代史4・スターリン時代」)

 この恐るべき党物神化!極限化された党フェチシズム!ボリシェビキにとって禁止されるべきものは何もない、何をしてもいいのだ。党に白を黒とみなせと云われれば、それがどれほど苦痛で過酷であっても応ずる。なぜなら党の外は零であり、生きる意味がないからだ。そうであるならば党の外にいる民衆、普通の人間の価値も零だ。零の存在ならどうなるのか? 

 これが大粛清、大量殺戮、大量死に至る飢餓、極地への大量追放、収容所群島の構築の大きな要因になったことはまちがいない。

 特殊なロシアというアジア的専制の精神風土のもと、スターリン主義という恐怖政治が確立したのである。それは社会主義・共産主義とは無縁の存在だった。

 だが、いまだに「無縁の存在だった」と云えないで未練を残している人達がいる。そして中国共産党や北朝鮮等々、「社会主義」を標榜する支配者に未練を残す人もいる。この未練は一刻も早く消え去っていただきたい。


20:04

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第44回研究会
「21世紀のインドネシア経済-成長の軌跡と構造変化」

講師:加納啓良氏(東京大学名誉教授)

日時:5月11日(土)14時~17時

場所:専修大学神田校舎10号館11階10115教室(会場が変更となりました。お間違えないように)

資料代:500円
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第34回研究会(2020年2月15日)「厳しさ増す韓国経済のゆくえ」(福島大学経済経営学類教授 佐野孝治氏)


第35回研究会(2020年9月26日)「バブルから金融危機、そして・・・リーマン 兜町の片隅で実務者が見たもの(1980-2010)」(金融取引法研究者 笠原一郎氏)

第36回研究会(2020年11月28日)「ポストコロナ、日本企業に勝機はあるか!」(グローバル産業雇用総合研究所所長 小林良暢氏)

第37回研究会(2021年7月3日)「バイデン新政権の100日-経済政策と米国経済の行方」(専修大学名誉教授 鈴木直次氏)

第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12f日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授田中隆之氏)

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