欧州債務危機-グローバル金融危機の第2幕
法政大学教授・河村哲二氏
経済分析研究会の第2回研究会が4月14日、専修大学で行われた。今回の講師は法政大学教授河村哲二氏で、テーマは「欧州債務危機-グローバル金融危機の第2幕」。同氏は米国経済が専門だが、世界経済全体を分析、積極的な発言を行う論客として知られる。
米国金融危機と欧州債務危機の連続性
「欧州債務危機」は、07年から08年にかけて起こった米国のサブプライムローンなど証券化商品の暴落による金融危機を第一幕とすれば、今回の欧州債務危機は、その第二幕にあたるという認識である。ギリシャに端的に表れたユーロ圏の累積債務問題は以前からあったが、なぜ今、危機として顕在化したのか?それは、第一幕で米国、欧州各国、日本、中国などが、不良債権を抱えた金融機関に公的資金を注入したり、景気対策を行ったため、国家財政の赤字と累積債務が巨大化したからだ。これがユーロ圏で経済力が弱いギリシャなど南欧諸国で債務危機として表れた。
この本質は、アメリカ経済のグローバル資本主義化を軸に1990年代以降出現した「グローバル成長連関」の危機にある。「グローバル成長連関」には、根本的な不安定性が内在されていて、これが顕在化したと見るべきだ。すなわちアメリカを中心とするドル本位制・国家金融メカニズムの制度不備とシステム欠陥があるためで、単に金融バブルの崩壊だけではとらえ切れない。
逆回転した「グローバル成長連関」
1970年代を境にアメリカ経済は、グローバル資本主義化と政府機能の新自由主義的転換を行ったが、そこで現出したのがアメリカを軸とする「グローバル成長連関」だ。アメリカだけでなく世界中にグローバルシティを作り出し、アメリカに世界中の資金を集める「新帝国循環」によって成長を維持してきた。「グローバル成長連関」は、ニューヨーク金融市場における信用創造がエンジンだが、これがマヒした。政府が大量の国債を発行、中央銀行は超金融緩和を行うだけでなく、政府が発行した大量の国債を引き受けるということで乗り切ろうとしたが、今度は債務危機が顕在化したのだ。
河村氏の提起を受けて参加者による質疑が行われた。アメリカ主導の「グローバル成長連関」は維持されるのか?金融危機の第3幕が起こるとすればどこか?中国経済のゆくえは?などだが、河村氏は、アメリカは極めて不安定な状況が続いているが、ニューヨークの金融市場を成長エンジンとする「グローバル成長連関」に代わる構造が作られていない以上、部分修正してでも続ける以外ない、という認識を示した。
次はイタリア、スペインが引き金に?
危機の「第三幕」は、どうなるのか?という点については、まだ第二幕はまだ終わっていないのではないか、としてイタリア、スペインあたりが引き金になる可能性があり、そうなると危機はより一層厳しくなる。
また、中国については24の都市を特区として位置づけているが、これはグローバル都市にしようという考え方からきている。東アジアの中で独自の通貨圏を作るにしても元を自由化させなければならず、まだアメリカ主導の「グローバル成長連関」の中で成長力を蓄えるしかないのでは、というのが河村氏の見方であった。
世界経済全体を見渡して分析する河村氏の提起は極めて示唆に富んだものであった。経済分析研究会としては今後もこうした機会を増やしていきたいと考えている。
河村氏の報告の詳細は「FORUM OPINION」第17号に掲載されています。(事務局 蜂谷 隆)