シンポジウムを開催
アベノミクスをめぐって議論
経済分析研究会が結成されて丸3年が経過した。3周年記念として、初めてシンポジウムを行った。テーマは「アベノミクスを問う!どうなる日本経済の再生」で、パネラーは小林良暢(グローバル産業雇用総合研究所長)、柏木勉(経済アナリスト)、平田芳年(NPO現代の理論・社会フォーラム運営委員)、金子文夫(横浜市立大学名誉教授)の各氏。小林、柏木氏がアベノミクス支持、平田、金子の両氏が批判の立場となって、賛否の論議を通じて問題点を浮き彫りにすることがねらいだった。フロアからの質問、意見も多く出て議論は活発に行われた。
4人のパネラーが報告
まず、パネラーの各氏から報告を受けた。小林氏は、経済政策を評価するときの基準は「雇用」だ。アベノミクスによって高卒内定率も過去最高になるなど、雇用面で大きな成果を得ている。今後は、春闘でどれだけ賃上げが行われるかだ。ベア1.5%(定昇込みで3%超)アップを獲得できれば、雇用者所得2.0%増の展望は見えてくる。そうなれば日本経済は上向く。
続いて柏木氏は、アベノミクスは今年が正念場だ。①物価下落からの脱却、②円高からの脱却、③官製賃上げで消費拡大から好循環へ、④設備投資への種まきができた-など、これまでのアベノミクスの成果を示した。異次元緩和で日銀は大量の国債を購入、資金供給しているが、この点について「リスクが大きい」という批判があるが、需要不足の間は心配ない、という考えを示した。
アベノミクス批判派として、まず平田氏は、安倍首相は2013年2月に名目GDP3%程度、実質GDP2%程度、物価上昇率を2年で2%を掲げたが、14年度見込みを見れば、目標を大きく下回っている。実質賃金は低下、消費拡大による好循環にはなっていない。むしろ日銀の信用を毀損させるなど副作用の方が大きい。成果と言えるのはデフレマインドを変えたことくらいではないか。
最後に金子氏からは、そもそもアベノミクスは三つの間違いをしている。①経済政策で経済成長できるというのは神話、②異次元緩和はリスクが大きい。時限爆弾を抱えているようなもの、③格差が拡大-の三つだ。経済成長はよいことで、何が何でも追求するとしていることが、すべてをおかしくしている、とアベノミクスのよって立つ支柱に対して批判を行った。
消費、異次元緩和などで議論
4人のパネラーの報告を受けて議論を行った。
ひとつは昨年4月の消費増税を契機に消費は落ち込んでいるが、この点をどう見るかについて。小林氏は、日本経済は昨年2月がピークでその後、落ち込んだが10月には底を打ったのではないか。消費よりも労働力不足の方が大きい。15年度は実質賃金は上がるので、消費マインドはプラスに動く。金子氏は、春闘で賃上げがあっても全体に波及しないから消費の拡大にはならないとの見方を示した。
物価上昇率を2%達成については、パネラー全員がむずかしいとの見方で、小林氏からは何らかの責任を取る必要があるとの発言があった。
続いて、日銀が行っている異次元緩和について、柏木氏が副作用について需要不足であればいくら日銀が買っても構わないという考えを示したことに対して、金子氏から需給は国内だけでないので、円が一気に売られるようになるのでリスクは大きいと指摘した。
また、平田氏は安倍首相の施政方針演説では「アベノミクス」は1箇所しか出てこない。安倍首相はすでにアベノミクスに関心がなくなっている。その程度のものではないかとの見方を示した。
残念ながら議論は十分煮詰まらなかったが、アベノミクスあるいは日本経済の抱える問題について、一定浮き彫りになったのではないか。
(事務局 蜂谷 隆)