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金価格が高騰の背景にドル離れ              経済ジャーナリスト 蜂谷 隆  金の国際価格が史上最高値を更新し続けているが、最大の要因は新興国などの中央銀行が外貨準備のために買い増していることだ。背景にあるのはドルへの不...
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2024/02/13

POLITICAL ECONOMY第254号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
多極化時代のグローバル税制の展望
          横浜アクションリサーチ 金子 文夫

 2024年に入り、ウクライナ戦争、パレスチナ戦争の先行きが見通せないなかで、米国ではトランプ再選の可能性が高くなっている。世界は分断と混迷を深めているが、長期的にはグローバルサウスの動向に注目すべきだろう。1月22日の日経新聞1面には、「サウス台頭「旧秩序」突く、米中「世界二分論」に異議」という見出しの記事が掲載された。グローバルサウスは経済力を増大させ、発言力を高めつつある。以下、グローバル税制をめぐる最近の動向に即して、サウス台頭の展望を記してみたい。

国際連帯税の再構築

 国際連帯税は、2000年の国連ミレニアム開発目標(MDGs)の資金調達を目的にしてフランス主導でスタートした。その要件は、?国境を越える経済活動に課税、?税収は国際機関が管理、?使途はグローバル課題に充当というもので、2006年の航空券連帯税が第1号となった。国際線を利用する旅客に少額課税、税収は国際機関UNITAIDが管理し、貧困国への医薬品供給にあてるという方式で、現在も継続している。

 これに続いて2011年、EUで金融取引税が提起された。この税は、国境を越える金融取引(株式、債券、デリバティブ等)に低率課税し、税収は各国政府とEUが管理・使用するもので、課税対象が国際連帯税に近いといえるが、金融業界の反対が強く現在まで実現をみていない。

 そうしたなかで、気候危機に対する資金調達策として新たな取組が開始された。2022年のCOP27(エジプト)では、グローバルサウスの気候危機に対処するための「損失と損害基金」設置が合意された。その具体化に向けて、様々な試みが追求されていく。

 2023年6月、フランス、バルバドスの呼びかけで、「新グローバル金融協定サミット」がパリで開催され、国際課税を通じた資金調達を検討するタスクフォース設置が提起された。  
 
 9月、
ケニアでのアフリカ気候サミットを経て、11~12月、COP28(アラブ首長国連邦)が開かれ、「損失と損害基金」の制度の大枠が決定された。財源には公的資金、民間資金、革新的資金源等が広くあげられ、その一環として「開発、気候、自然の資金調達のための国際課税に関するタスクフォース」の立ち上げに至った。そこでは炭素税、海上・航空輸送税、金融取引税などが扱われるが、この間の経緯のなかにグローバルサウスの発言力の増大を確認することができる。

多国籍企業課税改革の紆余曲折

 多国籍企業への課税は本国、進出先のいずれでなされるべきか、二重課税問題の扱いについては100年の歴史がある。第二次大戦後はOECDと国連で取り組みが続いたが、ルール形成の主導権は先進国クラブであるOECDが握ってきた。

 21世紀に入り、グローバル化、デジタル化の進展とともに、タックスヘイブン等を利用する多国籍企業の課税回避(二重非課税)が横行する事態となった。2012年、OECDはG20との共同作業として、EPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを立ち上げ、2015年に15項目からなる行動計画を策定した。約40カ国が参加したBEPSをさらに発展させ、140カ国参加の交渉を続けた結果、2021年10月に2本柱からなる新たな課税ルールで合意に達した(第1の柱は、売上高200億ユーロ超、利益率10%超のグローバル企業(約100社)を対象に、10%を超える利潤のうち25%について市場国(消費者のいる国)に課税権を配分、第2の柱は法人税の最低税率を各国共通して15%に設定)。

 当初の予定では、2022年に多国間条約、法改正を成立させ、2023年実施を目指したが、多国間条約の締結は現時点でなお実現していない。特に米国議会(共和党)が反対の意向であり、米国が条約に批准しないとなれば、この合意は不成立に終わるかもしれない。

国連主導のルール形成へ

 2本柱の新ルールについては、先進国に有利な決め方だとしてグローバルサウスから反発の声が上がっている。最低税率が低すぎるというNGOからの批判もある。アフリカ連合などがルール形成の場をOECDから国連に移すべきだと声を上げてきた結果、国連事務総長は2021年7月、25カ国の専門家からなる国連租税委員会の設置を決めた(期間は2021~2025年)。

 また2022年11月の国連総会では、国際課税ルールは国連の場で取り組むべきとの決議がなされた。米国は修正を試みたが失敗に終わっている。さらに2023年11月15日、改めて国連総会で「包摂的で効果的な国際課税協力の推進」に関する議題が取り上げられ、アフリカ連合提案が賛成125、反対48、棄権9で採択された。イギリスは修正提案を提出したが、賛成55、反対107、棄権16で否決された。日本は前者に反対、後者に賛成だった。ここにはグローバルサウスが多数派、G7が少数派になった現実が示されている。

 2024年9月には国連未来サミットが開かれる。この決議を受けて、2024年夏までに一定の案をまとめるべく、20カ国ほどの政府間協議体が組織される。その先はかなり長い道のりになると思われるが、世界が多極化へと進んでいくなかで、多国籍企業課税、さらには超富裕層へのグローバル課税の具体化が進むことになるのだろう。

17:41

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これまでの研究会

第36回研究会(2020年11月28日)「ポストコロナ、日本企業に勝機はあるか!」(グローバル産業雇用総合研究所所長 小林良暢氏)


第37回研究会(2021年7月3日)「バイデン新政権の100日-経済政策と米国経済の行方」(専修大学名誉教授 鈴木直次氏)

第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

第44回研究会(2024年5月12日)「21世紀のインドネシア-成長の軌跡と構造変化
」(東京大学名誉教授 加納啓良氏)


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