新着情報

 RSS
POLITICAL ECONOMY第282号04/16 09:23
先進国でトップのエンゲル係数 NPO現代の理論・社会フォーラム運営委員 平田 芳年  総務省が2月7日に発表した2024年の家計調査で2人以上の世帯が使ったお金のうち食費の割合を示す「エンゲル係数」は28.3%...
POLITICAL ECONOMY第281号04/01 17:38
劣化過程をたどった日本のインターネット空間           季刊「言論空間」編集委員 武部伸一    インターネット空間で、ヘイト・差別・排外主義・陰謀論の嵐が吹き荒れている。それは米国でも日本でも、ここ数年の選挙結果に見られ...
POLITICAL ECONOMY第280号03/19 17:28
第2次トランプ政権と米国覇権の行方           横浜アクションリサーチ 金子 文夫  第2次トランプ政権が発足して40日が経過した。この間、洪水のように大統領令を乱発し、米国国内も国際社会もトランプの言動に振り回されて...
POLITICAL ECONOMY第279号03/01 17:25
「自立」「安全」「安定」の共同生活のために「管理指導する」 ―精神障がい者グループホーム職員の正しい仕事?!― 街角ウォッチャー 金田麗子  変なタイトル...
POLITICAL ECONOMY第278号02/13 20:53
フジテレビ、親会社の責任はどうなっているのか 金融取引法研究者 笠原 一郎    このところのテレビ報道・ワイドショーは、フジテレビ(以下「フジTV」という)をめぐる有名タレ...

メールマガジン「POLITICAL ECONOMY」の配信について

現代の理論・社会フォーラム経済分析研究会は、日本および世界の経済の動きをとらえ、認識を深めることを目的に研究会活動を行っています。経済を中心に社会、政治など知的集積の場として「POLITICAL ECONOMY」をメールマガジンとして配信しております。

 「
POLITICAL  ECONOMY」は、会員の方々による発信の場です。メーマガジンとして配信、同時にホームページ上でも公開しております。大きく動く世界と日本の経済、社会の動きを分析、発信していきたいと考えています。
 

メルマガ

メルマガ >> 記事詳細

2020/05/26

POLITICAL ECONOMY第165号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
コロナ危機の背後で暴走する日銀
                                 横浜アクションリサーチ 金子 文夫

 4月8日の「緊急事態宣言」と同時に打ち出された緊急経済対策は、総額108兆円、GDPの20%、「世界的にも最大級」と規模の大きさが強調された。その後総額は117兆円に修正され、そのなかの一般会計部分25.7兆円は2020年度補正予算として4月30日に国会を通過した。

 コロナによる経済悪化に対応するには、世界各国とも財政政策と金融政策を総動員せざるをえない。日本の場合、すでに財政は危機的状態なので、緊急経済対策のための国債発行も結局日銀引受になり、日銀は政府支援と民間支援の二重の活躍をすることになる。

露骨な「財政ファイナンス」

 コロナ対策の日銀金融政策は、3月15~16日の金融政策決定会合で打ち出された。この会合自体、当初の18~19日の予定を、FRBの理事会会合に合わせて前倒しするという異例の開催だった。そこでの決定は、量的緩和策として、①国債買入れ(年間80兆円)、米ドル資金の潤沢な供給(貸出金利0.25%引下げ)、②「新型コロナ対応企業金融支援特別オペ」の導入(民間企業債務を担保にゼロ金利資金8兆円を金融機関に供給)、③CP・社債購入枠を2兆円拡充(CP3.2兆円、社債4.2兆円まで)、④ETFを年間12兆円、J-REITを年間1800億円まで購入とし、金利政策は従来の短期マイナス0.1%、長期ゼロ%の方針を維持した。全体として量的緩和をさらに進めるとともに、特にコロナ対策として、主に中小企業支援を意図して②を導入したことが目新しい。

 これに続いて4月27日、緊急経済対策の補正予算の国会通過を目前にして、日銀は金融政策決定会合を開き、さらなる金融緩和策を決定した。要点は、①国債の無制限購入、②社債・CP購入枠を3倍に拡、③新型コロナ対応資金のゼロ金利供給オペの拡充である。①国債に関しては、従来年間80兆円を掲げつつも、実際は10兆円台まで減額してきたところ、今回は無制限購入へと一気に舵を切った。これは国債を低金利で発行させるための財政への援護射撃であって、いよいよ「財政ファイナンス」の姿が露骨に現れることになった。

 ②では、CP・社債の買入れ上限を20兆円まで一挙に拡大するだけでなく、1発行体の発行残高に占める日銀保有割合の上限をCP50%、社債30%に引上げており、日銀が民間企業のメインバンクになった形だ。③は3月に新設された方式の拡充であって、担保を8兆円から23兆円に増額、利用残高に相当する当座預金へのプラス0.1%付利など、大盤振る舞いといえる。日銀の民間企業支援枠は総額55兆円あまりと巨額に達する。

 日銀の異次元の金融緩和政策は、日本の財政・金融システムを大きく歪めてきている。日本政府の国債発行残高は、2010年度末に884兆円であり、その時点ですでにGDPの2倍に近い不健全なものだったが、それでも国債発行残高に対する日銀の保有割合は8.9%にとどまっていた。その後、アベノミクスのなかで、国債発行残高は2019年12月末に1132兆円まで増加した。それに対する日銀の保有割合は43.7%に膨らんだ(朝日新聞2020年4月28日)。その間の国債残高増加額は248兆円、日銀保有の増加額は416兆円であって、銀行等が保有する国債を日銀が買い上げ、政府の低金利の国債発行を支援したわけである。財政法では、財政膨張に歯止めをかける意味で日銀が政府から直接に国債を購入することを禁じているが、もはや歯止めはなくなり、財政法は空洞化したというしかない。

日銀の異様な信用膨張

 さらに日銀がETF(上場投資信託)の大量購入を続けていることも問題である。日銀のETF購入はリーマンショック後の2010年12月が最初で、年間4500億円が上限だった。それが2013年4月1兆円、14年10月3兆円、16年7月6兆円に増額され、2020年3月に12兆円に達した。日銀のETF買いは、株価下落にブレーキをかける役割を果たし、株式市場の価格形成に歪みをもたらした。加えて、日経平均が1万9500円以下に下がると、日銀の保有株式に含み損が発生し、日銀の財務構造を悪化させ、円の信用を棄損する。財政危機と日銀の信用危機が重なれば、円の暴落を引き起こしかねない。

 リーマンショック後の世界的な金融緩和政策が続き、FRBとECBは正常化に転じるなか、日銀は緩和策を継続してきたところ、コロナショックによって、主要中央銀行はすべて大幅な金融緩和に進んでいる。なかでも日銀の異様な信用膨張は突出している。いずれ行き詰まりが訪れるとして、その際のショックは一段と激しいものとなるだろう。コロナ危機の背後でこうした危険な事態が進行していることを見逃してはなるまい。(詳しくは、横浜アクションリサーチのサイトwww.y-ar.org/を参照してください。)

11:03

LINK

次回研究会案内

次回の研究会は決まっておりません。決まりましたらご案内いたします。

 

これまでの研究会

第35回研究会(2020年9月26日)「バブルから金融危機、そして・・・リーマン 兜町の片隅で実務者が見たもの(1980-2010)」(金融取引法研究者 笠原一郎氏)


第36回研究会(2020年11月28日)「ポストコロナ、日本企業に勝機はあるか!」(グローバル産業雇用総合研究所所長 小林良暢氏)

第37回研究会(2021年7月3日)「バイデン新政権の100日-経済政策と米国経済の行方」(専修大学名誉教授 鈴木直次氏)

第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

第44回研究会(2024年5月12日)「21世紀のインドネシア-成長の軌跡と構造変化
」(東京大学名誉教授 加納啓良氏)


これまでの研究会報告