新着情報

 RSS
POLITICAL ECONOMY第300号02/01 16:32
幕末のフランス人上陸でキリスト教宣教が再スタート~九州の視点からの考察~(前編)                 元東海大学教授 小野 豊和  日本が戦国時代を迎える頃、世界は大航海時代を迎え、スペインはアメリカ大陸経由フィリピンに到...
POLITICAL ECONOMY第299号01/16 21:49
放置できないレベルにある富の偏り   NPO現代の理論・社会フォーラム運営委員 平田 芳年  25年12月17日の共同通信によると「日銀が発表した2025年7~9月期の資金循環統計速...
POLITICAL ECONOMY第298号01/02 09:17
ロシア戦時経済の死角、エネルギー販売収入の大幅な減少         季刊『言論空間』編集委員 武部 伸一   2022年2月開戦以来、4年近くが経過するウクライナ戦争。日本のマスコミではロシア有利の戦況報道が続いている。だが、プー...
POLITICAL ECONOMY第297号12/17 17:56
グローバル税制の現在地           横浜アクションリサーチ 金子 文夫  高市政権が様々な経済政策を打ち出すなかで、金融所得課税、法人税の租税特別措置の見直しなど、ようやく消費税以外の税制への関心が高まってきた。しかし、依...
POLITICAL ECONOMY第296号12/04 10:47
秋田県で起きていることは日本社会の縮図             街角ウォッチャー 金田 麗子  環境省によると、今年度上半期の熊の出没件数は2万792件。件数を公表していない北海道を除くと、岩手県4499件、秋田県4005件。青森...

メールマガジン「POLITICAL ECONOMY」の配信について

現代の理論・社会フォーラム経済分析研究会は、日本および世界の経済の動きをとらえ、認識を深めることを目的に研究会活動を行っています。経済を中心に社会、政治など知的集積の場として「POLITICAL ECONOMY」をメールマガジンとして配信しております。

 「
POLITICAL  ECONOMY」は、会員の方々による発信の場です。メーマガジンとして配信、同時にホームページ上でも公開しております。大きく動く世界と日本の経済、社会の動きを分析、発信していきたいと考えています。
 

メルマガ

メルマガ >> 記事詳細

2017/05/13

POLITICAL ECONOMY 第91号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
思惑絡むTPPイレブン

                           NPO現代の理論・社会フォーラム運営委員 平田芳年 
                                                  
 トランプ米大統領は1月20日正午の就任式からわずか3日後に、環太平洋経済連携協定(TPP)から「永久に離脱する」とした大統領令に署名、離脱を通知する書簡を日本を含む参加11カ国に送付した。大統領選過程で主張してきた公約を即座に実行して見せたわけだ。この結果、参加関係国が2010年3月から延々と5年半に渡って交渉を続けてきた広域的な多国間通商協定は「死に体」となり、「(TPPは)過去のもの」(ペンス米副大統領)との理解が広がっている。

 ところが昨年末から水面下で米国を除くTPP参加11カ国による経済連携協定のスタート(TPPイレブン)を模索する動きが始まっている。それが表面化したきっかけは、米の離脱声明直後にチリ政府が3月中旬開催予定の中南米4カ国の経済統合を目指す関係閣僚会議に合わせ、TPP閣僚会合も開きたいと参加国に伝えてきたこと。日本政府は米国の離脱当初、「TPPの戦略的意義について腰を据えて理解を求める」(安倍首相)との立場を強調、「経済が最大規模のアメリカが入ることが重要だ。粘り強く意義を訴えかける」(世耕経済産業大臣)としていたが、時間が経つに連れてトランプ大統領の離脱決定を翻すことは無理との判断が支配的となり、別の選択肢の検討に入っていた。

 この流れを加速したのが自由貿易の重要性や保護主義への懸念を強調したチリ会合の共同声明とカナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランドの積極発言。同会合後に日本経済新聞の取材(4月19日)に応じたスティーブン・チオボー豪貿易・観光・投資相は「TPPイレブンはよい。他の国々も同様の見解だ。より大事なのは潜在的な合意につながるような選択肢を11カ国が検討することだ」と言明。麻生副総理兼財務相は「11カ国でTPPをやろうという話しは5月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で出る」(4月20日)と前向きな姿勢を示す。

米国抜きは可能か

 ところでアメリカ抜きのTPPがそう簡単に実現するのか?TPP協定第30章「最終規定」によると、参加国が議会承認などの国内手続きを済ませれば60日後に発効する。手続きが進まない場合、署名日から2年経過した後で、TPP域内GDPの85%以上を占める6カ国以上が手続きを済ませれば60日後に発効することになっている。ただ米国は域内GDPの約60%を占めており、離脱となれば発効の規定をクリアできないことになる。これが「死に体」表現の基になっている。

 しかしどんな国際協定・条約でも関係国が一致して条文改正に合意すれば、規定の変更は可能だ。従って、離脱国を除く11カ国がTPP発効に必要な手順と規定の改正を行えば「TPPイレブン」のスタートは2018年5月以降、可能となる。問題はこうした手続き面ではなく、PP交渉スタート時から最大の牽引力となってきた米国の不参加を参加各国がどう受け止めるかだ。
 GDP世界ナンバーワンの広大な米国市場にアクセス出来ることが大きなメリットと考えて国有企業規制や電子商取引、金融サービス、知的財産などで厳しい要求を受け入れることにしたベトナムやマレーシアなどの途上国が米国抜きのTPP存続に魅力を感じるのか。農業問題を抱えながらも日米関係を最重視して参加を決断した日本政府はどうか。米国と足並みを揃えるため国内産業保護策との調整に合意したカナダ、ニュージーランド、豪州はどうか。米国というまとめ役を欠いた状態で再交渉となれば、発効までの道のりは再び相当な時間がかかり、難しいとの指摘がある。

 一方でトランプ政権は「米国ファースト」を謳い文句に、多国間協定から二国間・地域のFTA(自由貿易協定)路線に舵を切った。貿易赤字の削減、より公正で相互主義的アプローチを強調しており、中国、日本、EU、NAFTA(北米自由貿易協定)参加国との個別交渉で市場開放、関税引き下げ、相互主義を突きつけてくることは必至で、日本にとってTPP交渉以上に厳しい要求に直面することが予想される。

中国を意識する安倍首相

 日本政府が「TPPイレブン」に親和的姿勢を見せ始めたのは、こうしたトランプ政権の攻勢を牽制するためとの見方があるが、どうもそうした交渉技術的側面だけではなさそうだ。2015年11月に最終合意したTPP協定は本文30章、約600ページに上り、関税撤廃のスケジュールや自由化の例外項目などを盛り込んだ「付属文書」などを含めると全体で1500ページを超え、高水準・広範囲の貿易・投資ルールが盛り込まれ、「21世紀の通商協定モデル」が目指されてきた。

 競合する国際市場で中国の覇権的台頭を抑止したい安倍政権にとって、中国にはハードルが高い通商協定モデルを「お蔵入り」させるわけにはいかないという意志が働いたとしても不思議ではない。米国の離脱で参加国最大の経済規模を持つ日本が積極推進の立場に転ずるかどうか、「TPPイレブン」の今後の帰趨に目が離せない。


17:17

LINK

次回研究会案内

第47回研究会
「米中覇権争いとトランプの米中
“G2”構想の意味」

講師:平川均氏(国          士舘大学客員教           授・名古屋大学名誉教授)

日時:月6日(土)
   14時~17

場所:専修大学神田校
舎(予定)地下鉄
神保町駅A2出口、徒歩
約3分

資料代:1000円
オンライン参加ご希望の方は「オンライン研究会参加方法を参照の上お申し込みください。
 

これまでの研究会

第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)


第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

第44回研究会(2024年5月12日)「21世紀のインドネシア-成長の軌跡と構造変化
」(東京大学名誉教授 加納啓良氏)

第45回研究会(2025年10月25日)「トランプ関税でどうなる欧州経済」(東北大学名誉教授 田中素香氏)

第46回研究会(2026年1月24日)「高市経済政策は何を目指しているのか!」(立命館大学経済学部教授 松尾匡氏)


これまでの研究会報告