労働側からの「AI化〇原則」の提案が必要
グローバル産業雇用総合研究所所長 小林 良暢氏
第26回研究会は、2017年10月3日に開催、グローバル産業雇用総合研究所所長小林良暢氏に「AI革命『激変する雇用としごとの未来』」と題して話していただいた。AI(人工知能)、IoT、フィンティック、クラウドファンディングなど「第4次産業革命」は、すでに始まっており、AIによって人間がやる仕事はなくなるのでは?など議論が活発になっている。小林氏はAI革命で仕事がなくなることだけにスポットを当てることを批判、むしろ仕事の内容が変わることに着目すべきとした。併せて企業自体が生き残れるかどうかも問題になると指摘した。雇用は少ない日数や短い時間の勤務など「すきま雇用」や副業などが増えるとし、労働団体が「AI〇原則」をつくって対応する必要があるとした。
AI革命で会社が変わる。仕事が変わる。なくなるかもしれない
AIやIoTによる第4次産業革命、蒸気機関の第1次産業革命に始まる資本主義の歴史の中で4番目に位置する産業革命になるという時代認識を持つ。その第4次産業革命が進むと、仕事の中には完全になくなるものも出てくる。なくなる仕事としてはスーパーのレジ、運転手、コールセンター、速記者などである。しかし、ここだけを見ているとコトの本質を見誤る。雇用形態は非正規やフリーなどが増える。ネットを媒介して個人で働く「クラウドワーカー」はアメリカではすでに4000万人もいるが、こうした働き方も増えてくるだろう。
さらにAI化が進むと同じ仕事でも生き残る人と消える人が出てくる。例えば営業でルートセールスは不要になるが、人間関係を重視し情に訴える営業は残る。品質管理も通常のものはAIに置き換えられるが、企画立案、戦略決定は残る、というように分岐が鮮明になる。つまり仕事の内容が大きく変わるのである。
近年、議論になっているベーシックインカムについては、公的職業教育や積極的雇用政策などを先行させ、それでも就業できない人を対象にすべきであると述べた。
小林氏は、AI論議で陥りがちな文明論的な議論に傾斜することなく、あくまで仕事・雇用・労働に視点を置いて分析、今後は分配が問われるので労働組合から積極的に提起していくことが重要と述べた。
労働時間短縮で労働分配を高める
参加者による質疑・討論は、現在進められている安倍政権による「働き方改革」による非正規労働者との格差問題、労働力移動などのテーマに広がった。議論の中で焦点となったのは、AI化により労働の内容が変わると資本にとって労働の意味も変わるので格差や分配が大きな問題になるという点であった。小林氏は労働が企業と結びついて成り立つという関係が変わらないという見方で、80年代初めの電機労連の「ME化3原則」は議論のスタートになるのではないか、と述べた。分配の内容として労働時間短縮を提起していくことが重要ということで議論を締めくくった。(事務局 蜂谷 隆)