広島を活気づける3大プロスポーツ
労働調査協議会客員調査研究員 白石利政
市内を走るJR西や広島電鉄で、広島東洋カープやサンフレチェ広島F.Cの応援ラッピングトレインやバスに乗り合わせることもまれではない。2013年創設のプロバスケットボールの広島ドラゴンフライズもマツダの協力を得てラッピングカーをチームのプロモーションカーにしているそうだ。広島ではプロスポーツを身近に感じる機会が多い。今回は広島3大プロスポーツの近況報告である。
瞬間視聴率71%、広島東洋カープ
-2018年のスローガンは「℃℃℃」
ホームはMAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島。2017年の売り上げは約188億円、4年連続して売り上げの最高を更新している。これは、「健全経営」(=ケチ経営。選手の年俸総額、平均年俸は2,767万円で、ともに12球団中11位。自前で選手育成し年俸が高くなると他球団へ送り出すなど)、グッズ販売、ホームのボールパーク化など売り上げ増を図る工夫、そしてファンの応援あってのことである。
ファンの応援のすごさは、スタンドを真っ赤に染め、オバアさんから子どもまでのカープ女子の定着で誰もが認める。今でも思い出すことがある。2016年9月10日の25年ぶりのリーグ優勝のかかった巨人戦(東京ドーム)、全国放送されたNHKの広島地区での平均視聴率は60.3%(関東地区では16.8%)、瞬間視聴率は71.0%、尋常ではない。
広島県におけるカープの2017年の経済効果は250億円、雇用効果は3,190人で、2年連続の高水準を維持した(「エネルギア地域経済リポートNo.523」)。
この3月1日には、今年のマツダスタジアムの指定席が発売され、もみじ銀行や広島銀行で金利を上乗せする定期預金の募集を始めた。日本一へ向けての準備は整っている。
再飛躍目指すサンフレチェ広島F.C
-今年のスローガンは「WE FIGHT TOGETHER 2018 ICHIGAN」
ホームは広島広域公園陸上競技場。この5年間にJリーグの年間1位を3回制覇、しかし2016年は6位、昨年は15位でどうにか降格を免れた。今年は社長も監督も交代。新社長は新監督について「育成型チームの再構築を任せるには適任と判断しました」と語っている。
2016年の決算は、営業収益は37億9,400万円、営業費用は34億3,500万円、当期利益は3億1,200万円の黒字。黒字決算は5年連続である。ちなみに2016年の登録選手(30人)の平均年俸は2,539万円(平均年齢27.0歳)で、これはJ1(18チーム)中4位。気になるのは観客動員数(262,888人)が前年に比べ5.6%減ったことである。チームの経営は安定しているもののファンの盛り上がりと広がりに課題を残している。
現在、アクセスのよいサッカー専用グランドが検討されているが県・市・広島商工会議所の「広島みなと公園案」とサンフレチェ経営陣の「旧市民球場跡地案」が対立、その後「中央公園案」も浮上し結論には至っていない。一時も早い決着で飛躍が期待される。なお、広島県信用組合では「サンフレッチェ広島応援定期預金」の呼びかけを始めている。今のところ3連勝で出足は好調である。
育成重視の広島ドラゴンフライズ
-2016-2017シーズンのスローガンは「最大の挑戦 UNITED WE
STAND 2016-2017」
ホームは広島サンプラザホール。所属リーグはB.LEADUE、カンファレンスはB2西地区である。創設間もないチーム編成は育成重視である。
2016年度の営業収入は2億7,333万円、営業費用は3億688万円(うちトップチーム人件費は35.9%)、当期利益は3,791万円の赤字である。
会長の福岡慎二氏は「財務体質が脆弱だ。(3月1日に)B1のライセンス交付を受けることができたが、単年度の黒字と累積損失を一掃するという2つが条件だった。……18年6月期は何としてでも黒字に転換する」。そしてチームの目標については「B1に昇格してから5年以内に優勝する」と語っている(日本経済新聞 地域経済 2017年4月19日)。
Basketballnavi.DBによると「契約選手数は12名(うち外国人は3名)で、ホームでの平均入場者数は1,818人」(年間試合数60回中41回)。昨年12月9日(土)の岩手ビッグブルズ戦では4,545人でクラブ最多を記録した。飛躍の可能性はある。
広島3大プロスポーツでは、選手はスキルを磨き、ファンは選手の成長を見守り勝敗に一喜一憂し、経営は、急がば回れ、長期視点に立って若手を育成することを方針とし経営の安定に努めている。行政もホームの提供や整備などで協力している。経営の規模や状況は異なるものの地域経済の活性化にも一役買っている。そして広島3大プロスポーツは広島の「個性」をも育んでいる。