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2018/02/25

POLITICAL ECONOMY 第110号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
18春闘本番、「ベア1%」のハードルは高い 
  グローバル産業雇用総合研究所所長 小林 良暢

 トヨタ自動車、日立製作所など大手労働組合が2月14、15日、賃金引き上げ要求書を会社に提出、18春闘が本番を迎えた。18春闘の特徴は、なんといっても安倍首相が年初に自ら議長を務める経済財政審問会議で、春闘において「3%の賃上げ」を労使双方に要請したことである。

 これでマスコミの春闘報道は俄然賑やかになっている。とりわけ日本経済新聞は、「政府が求める『3%の賃上げ』に積極的に応える企業が目立っている」(「3%賃上げ『内需型』前向きに」1月27日付)と、安倍首相の「3%の賃上げ」に協力的な姿勢をとっている。例えば、アサヒグループは傘下の中核企業アサヒビールで定昇と昇格・昇給で3%賃上げを見込む方針を固め、サントリーも基本給を引き上げるベアと定昇を合わせて3%の賃上げを目指す。総合スーパーのライフも3%の賃上げの方針を表明し、花王はトータルで3%の可能性を固めている。

 これに対して毎日新聞は、賃上げを求める「官製春闘」の5年目“圧力”を受け、経団連も「従来よりも踏み込んだ呼びかけを行っている(榊原会長)というが、3%への道のりは遠い」(「賃上げ遠く 労使間に隔たり」1月23日付)と、安倍首相の目論見に批判的な報道に傾いている。

 これらの新聞記事を読んで、賃金交渉に携わった経験のある人なら、政府の「3%の賃上げ」とはいったい何を指すのだろうかと、その内容に疑問を抱くだろう。安倍首相が言う「3%賃上げ」とは、「企業は高収益の割には賃上げ意欲が鈍く、働く人への利益分配を強化する」ものだと、政府は説明している。だが、内閣府の役人に話を聞いたら、3%の中味は「定期昇給分2%+ベア1%の3%の賃上げだ」と教えてくれた。その上で、連合は「ベア1%を取れますか」と聞かれたので、「それはとうてい無理だ」と答えておいた。

「ベアゼロ春闘」から脱したが春闘の景色は変わった

 ベア3%を連合の要求に沿って引き直すと、「定昇2%+ベア1%」のことだ。3%と言っておいて、「ベアはたった1%なんて、安倍首相の詐欺だ」と言うなかれ。連合の神津会長は、1月22日の経団連主催の労使フォーラムで、「首相は3%と言っているが、それが上限と考えられたら困る」と述べ、さらなる賃上げを要求している。しかしながら、連合の今春闘の交渉力からして、ベア1%だってハードルが高い。
 
 連合春闘を振り返ると、2002年の春闘でトヨタ自動車が史上最高の利益1兆円をあげるも、当時の奥田経団連会長の一喝で「ベアなし」に終わって以降、「ベアゼロ春闘」が定着してきたが、2014年のアベノミクス・政労使会議の下での春闘でベアが復活した。12年ぶりにベアゼロの長いトンネルから抜け出したら、春闘の景色は一変していた。

 それから5年の連合春闘の経緯をまとめた次の表をみれば、その景色がわかる。

 アベノミクス・政労使会議下の14春闘は、要求「2%以上」で回答(定昇+ベア)は2.07%、うちベア0.37%を獲得した。ただこのベア0.37%は平均賃金要求方式の組合の集計で、自動車・電機の大手組合が含まれていないので、これを含めて推計したのが下から2段目のベア推計で、これだと0.5%を獲っている。次の15春闘では、ベアが0.65%にアップ、このままいくと2年くらい先には1.0%に届く上げ潮に乗っていた。ところが16春闘で、春闘相場に決定力を有する自動車・電機の大産別から業績懸念の圧力が強まり、連合は要求を2%の「以上」から「以下」に変えた。これを要求額で見ると自動車総連・電機連合は共に6000円から3000円にダウン、要するにそんなに賃金をあげないでくれ、半額でいいということである。結果はその通り、ベアは0.36%に半減の「半額春闘」になった。さらに昨17春闘は同じ要求で、ベア0.3%まで落ち込んでしまったのである。

なぜ連合は要求引き上げに逡巡するのか
 
 さて、18春闘の連合要求は昨年と変わらず、また自動車・電機の要求額も同じだから、安倍さんが「3%の賃上げ」を要請していることに、微かな望みをかけるしかない。それなら、新年早々の安倍首相の賃上げ上げ要請した時に、主要産別・主要単組の春闘要求は未だ機関決定前だったのだから、即座に連合は要求を「程度」から「以上」に戻し、JCM(金属労協)系産別は要求額を6000円に戻す要求組み直し論議をするチャンスがあったのである。

 それを逃しまった連合には、ベア1.0%のハードルは高すぎる。17春闘では、トヨタがベア要求3000円で結果1300円(0.35%)、同じく日立が3000円で1000円(0.32%)との落差は大きすぎる。だとすると、ベアが復活した4年間の最高点である15春闘の0.65%、個別の額だとトヨタで4000円、日立で3000円あたりを狙い目に(それでもハードルは高いが)、そこから1.0%に向けてどこまで上積みが期待できるかである。

 それにしても、どうして連合は要求を引き上げることに、ビビるのだろうか。これに一番がっかりしているのは安倍首相だろう。


09:41

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第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

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