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2014/02/14

「グローカル通信」第2号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
     話題を呼ぶ熊本の戦略
           大きい“くまモン”効果
                              東海大学教授 小野豊和
 2011年3月12日の九州新幹線の全線開通に危機感を持った熊本県は通過地点ではなく滞在型の拠点を目指し、県・市がタッグを組んで知恵を出し合った。熊本市の政令指定都市認定(2012年4月1日)、国連“生命の水” 水管理部門の最優秀賞受賞(2013年3月22日)、阿蘇地域の世界ジオパーク推薦(2013年9月)、国連環境計画による水銀に関する水俣条約に日本はじめ各国が署名(2013年10月19日)、荒尾市万田坑の世界遺産推薦決定など目に見える動きがあるが、何といってもくまモンの力は絶大だった。

 日本銀行熊本支店は、営業部長改め“しあわせ部長”「くまモン」が、過去2年間に熊本県にもたらした経済効果を試算、1,244億円に及ぶと発表した。また同時期にくまモンがテレビ・新聞等に取り上げられたパブリシティ効果を90億円以上と発表。調査は、くまモンが「ゆるキャラグランプリ2011」で優勝した2011年11月以降の2年間とし、対象となったのは①くまモンの利用を熊本県が許諾した商品の売上高、②くまモンによって増加した観光客数で、それぞれを推計し試算したもの。

 日銀は過去にNHKの大河ドラマ「龍馬伝」で高知県の経済効果(535億円)を試算したことがあるが、人気キャラクターの経済効果を調査するのは初めて。今や台湾をはじめ、ヨーロッパ、アメリカまで出かける世界のスーパースターとなったくまモンは無視できない存在となっている。

生き残りをかけた地方大学のグローカル戦略=ASEANと連携

 2017年から大学進学年齢の18歳人口が減少に転じる予測を受け、全国の大学はその生き残りをかけ模索を続けている。全国には約730校(私学は630校)の大学があるが、九州熊本県内の大学・高等教育機関は13校で、2014年度の募集人員は約6,700人。旧制五校時代、夏目漱石、ラフカディオハーン(小泉八雲)などが教鞭をとった熊本大学は、グローバル化への対応も課題で、18歳人口減少を補完する優秀な学生を海外に求めている。中でもASEAN諸国との連携を強化、インドネシアのスラバヤ工科大学との交流拡大などを通じて、現在500人の留学生の倍増を計画している。

 熊本空港に隣接する空港キャンパスを持つ崇城大学(旧熊本工業大学)は、日本の大学では初めてとなる、単発自家用機から双発、計器飛行まで一貫したパイロット養成教育を自前で行う航空事業所の体制を整えた。熊本保健科学大学では、医療・看護系大学として国家資格が必要な医療系職員や看護師の需要拡大を背景に高い就職率が期待されている。細胞培養型インフルエンザワクチン生産という国家的プロジェクトを担っている設立母体の化血研の存在も力強い。

 学部・学科の再編により生き残りをかける大学もある。熊本学園大学では経済学部で定員割れが続いた国際経済学科の募集を停止し、経済学科、リーガルエコノミクス学科の2学科制に再編、学園に隣接するJT工場跡地利用に参画するなど地域との連携を深めている。

 創立者松前重義の生誕の地、熊本で生まれた九州東海大学は、2008年4月に東海大学本体と統合し九州キャンパスとなったが、定員割れが解消できず2013年度から総合経営学部改め、経営学科と観光マネジメント学科を束ねる経営学部として再出発した。初年度はほぼ定員を確保、2年目も定員未満を解消する見通し。新たな形で地域との共生に乗り出した。

 文部科学省が奨励する地(知)の拠点としての大学のあり方の模索が続く。熊本県立大学は熊本女子大学から改編して20年経ったが、在学生の約8割が県内高校から進学する地域密着型大学。自治体、農業事業者など地域の団体との包括連携協定を結び地域における社会貢献活動に力を入れている。東海大学熊本キャンパスは本部傘下という位置づけとなったが、関西以西唯一の私学による農学部の存在が大きく日本全国から学生を迎えている。

 改組再出発となった経営学部は、地域の活性化や新ビジネスの中核となる大学を目標に掲げ動き出した。肥後銀行と連携して始めた、ホテル・旅館の後継者育成のための「観光経営パワーアップ講座」には県内のホテル・旅館など11社が参加し、大学・金融・宿泊業との連携で地域活性化の機運が高まっている。

 各大学は、10年後の状況を考えると存在していないかもしれないという危機感を持ちつつ、それぞれの特徴を生かし、地域との連携を柱に模索を続けている。信頼を得て選ばれる大学となれば、社会への出口の確保となり、同時に入口の確保にも繋がる。

市内再開発事業も本格化

 熊本市には1973年11月29日に起きた太陽デパート火災事件という痛ましい過去もある。あれから40年、建物の躯体をそのまま活用して営業してきたスーパーダイエーは、今年5月14日閉店、地元デベロッパーが新しいビルを建てることになった。新ビルは複合商業施設となり、ダイエーは食品フロアーに特化して地階に入居、2016年中の開業を目指している。昨年来、市内の再開発事業も具体化し、九州産業交通ホールディンクスが計画している交通センター周辺桜町再開発事業がいよいよ動き出す。

 交通のハブとしての交通センターとホテル・国際会議場などを空間の緑地で繋ぐ斬新なデザインが取り入れられ2018年春完成を目指している。さらに、練兵町の肥後銀行本店は戦後建てられた古いビルを取り壊し、阿蘇の棚田の風景をビル全体のデザインとした7階建ビルとして2015年春に生まれ変わる。

 さて、JR熊本駅前はというと、2018年度中に全線高架工事が終了。2020年までに建築家の安藤忠雄設計による新駅舎と駅前広場を完成させる。JR唐池恒二社長によると「商業、オフィス、娯楽機能の集積に加え、周辺に住宅も整備していく」とのこと。果たして“しあわせ部長”くまモンの効果は如何に? 楽しみである。


10:32

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これまでの研究会

第36回研究会(2020年11月28日)「ポストコロナ、日本企業に勝機はあるか!」(グローバル産業雇用総合研究所所長 小林良暢氏)


第37回研究会(2021年7月3日)「バイデン新政権の100日-経済政策と米国経済の行方」(専修大学名誉教授 鈴木直次氏)

第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

第44回研究会(2024年5月12日)「21世紀のインドネシア-成長の軌跡と構造変化
」(東京大学名誉教授 加納啓良氏)


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