景気の先行きは、結局は公共事業頼み
個人消費に力強さはない
経済ジャーナリスト 蜂谷 隆
4-6月期のGDPは前期比実質で、マイナス1.7%(年率換算でマイナス6.8%)となった。1-3月期に消費増税引き上げ前の駆け込み需要が出たことの反動である。安倍首相のコメントは「1-6月(の半年間)でならしてみると、昨年10-12月より成長している」というものであった。民間のエコノミストの中にも7-9月期に成長軌道に戻るので心配ないというコメントをする人もいる。
確かに7-9月期はプラスに転ずるだろう。しかし、主役を期待されている個人消費に力強さはない。結局は公共事業に頼らざるを得ないのではないか。
4-6月期だけを見ても傾向はつかめない。そこで安倍首相の言うように、14年 1-6月の四半期平均と昨年10-12月期を比較してみた。それが以下の表である。
GDP 0.61%
個人消費支出 -0.54%
企業の設備投資 6.36%
民間住宅 -3.27%
公共事業 -2.78%
企業の設備投資以外はすべてマイナスとなっている。GDPではプラスだが、決して褒められた内容ではない。
輸出が期待できない状況の中で、GDPの伸びを支えてきたのは内需である。その中で最も伸びているのは、上の表の通り企業の設備投資で、昨年後半から顕著になっている。1-3月期には前期比で7.7%も伸びた(4-6月期はマイナス2.5%)。4月のWindowsXPのサポート終了前に企業向けパソコンの買い換え需要があり、これも要因になった。
消費マインドは落ちている
GDPの約6割を占める個人消費が伸びないと持続的な成長は期待できない。残念ながら昨年は年間を通して牽引役にはなれなかった。消費増税引き上げ前の駆け込み需要が出た14年1-3月期に2.0%も伸びたものの、4-6月期はマイナス5.0%という落ち込みである。
家計調査の実質消費支出指数(住居などを除く)を半年間で平均すると、13年1-6月は100.6、7-12月は99.0、14年1-6月は98.6と、明らかに消費マインドは落ちている。理由は賃金がさほど上がらないためだ。毎月勤労統計調査によると、給与は昨年11月から前年同月比でプラスになった(今年1、2月はマイナス)ものの、物価上昇を加味した実質賃金は、昨年7月からマイナスを続けている。特に今年4月以降は3か月連続でマイナス3%を記録している。
消費増税による駆け込み需要は、賃金上昇の裏付けもなく、生活防衛、捨てばち的な行動あるいは気分に乗って買い込んだということになる。
家計調査によると、勤労者世帯(2人以上の世帯のうち勤労者世帯)の収入は、6月は前年同月比で6.6%減、昨年10月から9か月連続の減少だ。同じく昨年10月以降の勤労世帯の消費支出を見ると、今年3月だけ7.5%増とプラスになったが、あとはすべてマイナス。実収入が減少し消費を控える傾向は変わっていない。
しかし、春闘の賃上げ率は連合調べで2%増、6月のボーナスは経団連調べで8.8%増、他方で非正規雇用の労働者も人手不足状況から地域、業種に偏りはあるが、時給が上昇してきている。「7月以降、消費は伸びる」という楽観論は、このあたりを根拠にしているのだが、実質賃金がマイナスの状態は今後も続く。消費マインドが大きく上向くことは考えにくい。
持続的な景気回復はあるのか
こうした状況の中で7-9月期は、4-6月期が落ち込んだので、前期比でプラスになるだろうが、V字形に回復することはないと見ている。
明るい材料は、企業の設備投資である。日本政策投資銀行の全国設備投資計画調査(大企業)によると、今年度も製造業、非製造業の投資マインドは持続している。製造業は「維持・補修」が中心とはいえ、高機能製品向けなどへの投資が増加の傾向にあるという。
ただ、民間企業の設備投資の先行指標となる機械受注統計調査では、船舶と電力を除く民需の受注額は、4-6月期で前期比10.4%減となった。1-3月期がピークだった可能性もある。ということはこの先、設備投資は上向くものの秋以降、鈍化することも考えられる。
そうなると頼みになるのは公共事業ということになる。公共事業は今年1-3月期、4-6月期と2期連続で前期比マイナスになった。出遅れの13年度補正予算に加え今年度予算分が出てくるので7-9月期はプラスに転ずるだろう。景気回復が鈍化するようなら、またぞろ秋の臨時国会で補正予算を組むことになる。