地方経済とTPPの影響は? 1人区がカギを握る参院選
神奈川県寒川町議 中川登志男
昨年11月のメルマガで、今夏の参院選は農村部に多い1人区がカギを握り、その1人区の帰すうは、アベノミクスの地方への浸透やTPP(環太平洋経済連携協定)が左右するのではないかと書いた。その認識は今も変わっていないが、ここ何ヶ月間で状況の変化がいくつかあったと思う。
一つめは、「おおさか維新の会」が結成されたことである。各種世論調査で、全国レベルで公明党や共産党と同じくらいの支持率を得ており、このままなら一定の議席を確保しよう。支持率が関西に偏っている(特に大阪では自民党並みの支持率がある)ものの、全国比例区で公明党や共産党並みの議席を取るとともに、都道府県選挙区でも関西地区で何議席かを獲得する可能性がある。
おおさか維新は形式的には野党だが、実質的には安倍政権の補完勢力であり、改憲勢力でもある。従って、非改選議席を含め、自民党と公明党が参院の何議席を占めるかではなく、自民党、公明党、おおさか維新など合計で何議席を占めるかが、注目されなくてはならない。
121の非改選議席では、自民党や公明党、おおさか維新が合計で81人いるほか、「日本のこころを大切にする会」などの与党補完勢力の議員が少なくとも8人いる。そのため、今回の参院選(改選121議席)で、おおさか維新を含む改憲勢力が73議席を獲得すれば、改憲勢力が参院の3分の2(162議席)に達する。
二つめは、1人区で野党間の選挙協力が進んだことである。比例区(48議席)で自公とおおさか維新が合計26~30議席を取ると仮定する。また、6人区(東京)で自公が3議席、3~4人区(8か所)で自公が2議席ずつ、2人区(4か所)で自民党が1議席ずつ獲得するとともに、おおさか維新が京都、大阪、兵庫などで議席を確保したとする。以上合計で52~56議席となって、ここに1人区(32か所)から17~21議席以上が与党に加われば、改憲勢力は3分の2以上に達する。
4月の衆院補選も影響
逆に言えば、1人区で野党が11~15議席取れば、改憲勢力が参院の3分の2に達することを阻止できる。そして1人区では、共産党がすべての選挙区で選挙協力に応じる姿勢を見せるなど、野党間の選挙協力が進んでいる。現時点で、1人区で野党側が勝てそうなのは数か所だけとも言われているが、選挙協力の進展にアベノミクス批判やTPP批判が加われば、野党側が獲得できる1人区はもっと増えるのではないか。
なお、民主党と維新の党とが合流した「民進党」の誕生が三つめの変化として挙げられるが、各種世論調査では、今のところ政党支持率に大きな変化は見られない。民進党の誕生は参院選の結果を左右する大きなファクターにはならないだろう。
参院選の帰すうを占う上でも注目されるのが、4月24日実施の衆院補欠選挙である。自民党が候補の擁立を見送った京都3区はともかく、自民党候補と野党統一候補が一騎打ちでぶつかる北海道5区の勝敗は政局を左右する。同区は札幌市厚別区や千歳市など、どちらかといえば都市部で構成されているが、北海道という土地柄を考えれば、アベノミクスやTPPへの評価も少なからず影響するのではないか。
衆院補選で自民党が勝利すれば、余勢をかって安倍政権は衆参同日選を仕掛けてくるという観測も絶えない。だが、衆院は小選挙区制であり、参院よりも選挙区の単位が細かい。都道府県単位の参院の選挙区より、農村色の強い選挙区も少なくないのである。
今夏の参院選や近い将来行われるであろう衆院選は、安保法制のような憲法問題に加え、アベノミクスやTPPなどの経済問題も結果を大きく左右するのではないか。野党側がそれらで与党との対決軸を示せるかどうかが問われる。