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2016/03/08

POLITICAL ECONOMY 第40号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
利潤率の傾向的低下で長期停滞か
                       経済アナリスト 柏木 勉

 年初から世界経済の見通しが暗くなって、長期停滞論が論じられるようになってきた。今回の停滞論は2013年に米国のラリー・サマーズ元財務長官が論じたものである。サマーズは、リーマンショック後の米国経済の回復テンポが遅いことを重視し、金融危機収束後の完全雇用状態でも経済は長期的に停滞するのではないかと論じたのである。いわゆる潜在成長率が大幅に低下したというわけだ。その後、量的緩和からの出口段階になり、しばらく話題にのぼらなかったが、本年に入ってから再び取り上げられるようになってきた。

 さて、資本主義経済が長期停滞に陥るとなれば、利潤率の動向が最も重要になる。マルクスの利潤率の傾向的低下法則が頭に浮かぶが、今回はこの問題について少し考えてみよう。

 水野和夫氏は、利子率革命を論じ、利子率は長期にみれば実物投資の利潤率を表すとして、近年の超低金利の持続は資本主義の終焉を意味するとしている。だが、水野氏の主張は理論的には曖昧である。利子率と利潤率の相違が明確でないし資本主義の定義も曖昧である。マルクス的にいうと、利子は実物資本 (産業資本と商業資本) が生み出す利潤から分配されたものである。従って 利子生み資本の増殖率である利子率は利潤率によって規制される。だから利子率の長期低落傾向は利潤率の傾向的低下にもとづいていることになる。

マルクスの「利潤率の傾向的低下法則」は成立しないが・・・

  ここでマルクスの利潤率の傾向的低下法則の話になるが、マルクスは、新技術の導入で有機的構成が上昇すると利潤率は傾向的に低下するとした。しかしながら、利潤率は搾取率にも影響を受けるので有機的構成をもって確定的なことは云えない。だが、置塩信雄氏によって以下が証明されている。

  すなわち、搾取率の上昇をもってしても利潤率の上昇には上限がある。それはN/Cである(Nは生産手段に充当される労働量、Cは不変資本)。だから新技術の導入がN/Cを低下させれば利潤率も低下していく。いいかえると逆数C/N(明確化された有機的構成)が上昇すれば利潤率は下落する。しかし、新技術の導入はC/Nを上昇させるとは限らない。資本の技術的構成が高まってもC/Nは、不変資本Cにおける労働生産性の向上や賃金財の労働生産性いかんによって上昇するとは限らない。だから、その動向は歴史的に事実をもって見るしかない。

  そこで現在の統計で日本のC/Nの動きを見よう。その場合、説明は省略するがC/Nの近似値となるのが資本係数(K/Y:Kは資本ストック、Yは国内純生産)である。資本係数が上昇傾向であれば利潤率も低下していくのである。

 まず、日本製造業が欧米を席巻した1980年代を見ると、この時の新技術は大規模集積回路、それを活用した産業用ロボット、NC工作機械等々のマイクロエレクトロニクス(ME)技術であり、その驚異的発展にともない特に製造業において大量導入が開始された。そのリーディングセクターであった電機産業を見ると、その資本係数は以下のように急速に低下していった。

ME革命時の電機産業の資本係数(S51年(1976年)からS59年(1984年)まで)
         S51  S52 S54  S55  S58   S59
資本係数 2.37   2.06 1.56 1.27  0.98 0.89
 
 このME革命によって日本経済は、ジャパン・アズ・ナンバーワンと称され、日米貿易摩擦を深刻化させるほどに世界に冠たる地位へのぼりつめた。

 ところで、資本係数は資本集約度(これはおおまかにいうと技術的構成である)と労働生産性に分解されるが、資本集約度が上昇すると資本係数も上昇する。だが労働生産性が資本集約度以上に上昇すると資本係数は低下する。

 当時の電機産業はME技術の大量導入で資本集約度は8年間で7割上昇したが、労働生産性は実に5倍弱の上昇となった。その結果、資本係数は大きく低下し、利潤率は上昇の一途をたどったのである(国民経済計算ベース)。

  同時にME革命は、80年代の経済全体の資本係数を約2.8から3.2までの上昇幅(0.4)に抑制し、従来の上昇テンポは大幅に緩和された。その結果、利潤率(国民所得勘定ベース)は15%程度でほぼ安定的に推移したのである。

90年代以降資本係数が高まり資本過剰に

 だが1990年代に入ると、資本係数は3.2から4.2へと急速に跳ね上がった。1990年代の日本企業が資本係数の急上昇と同時に、バブル崩壊のなかで深刻な低迷に陥ったのは周知のところである。

  2000年代にはいってからは、資本係数の上昇は止まってはいるが4.2から4.3の高水準にあり、GDPの4倍以上の資本設備を抱えている。完全に資本過剰の状態である。この資本過剰に対し、企業は設備投資を極力抑制、減少させるなど資本ストックを減少させてきた。設備投資抑制で、保有する国内資本ストックの利潤率改善を図っている。また国内投資を抑制する一方で、海外直接投資を増大させており、国内景気がはかばかしくない中で、現在の企業利益は高水準という理由はここにある。

   さて、利潤率が長期低落傾向にあって、企業がそこから脱却しようとするのは当然である。この場合の新技術は、前述のように資本集約度の上昇を上回って労働生産性を上昇させるものでなくてはならない。資本主義の存続は本来的にそのような技術革新の成否にかかっている。それが企業、政府がしゃかりきになって叫ぶイノベーションである。


11:34

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