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2019/12/24

POLITICAL ECONOMY第154号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
MMT(現代貨幣理論)によって俗論を打破せよ!
                     経済アナリスト 柏木 勉

 私はMMT(現代貨幣理論)に賛同しています。MMTの考えは私の以前からの主張に合致し補強してくれるものであり、財政再建路線を打破し社会保障への重点投入を可能にします。ですからMMTに賛同するわけです。私の問題意識に引っかかってくるMMTの主な主張は以下の通りです。
(目いっぱい単純化していますが)

1、主権国家の政府・中央銀行は、いくらでも通貨を発行できる。すなわちカネという財源は、キーボードから入力すればいくらでもつくりだせる。だから、国債の元本も利子もいくらでも必ず返済できる。従って、政府は破産することがなく、債務不履行を強いられることはありえない。

2、しかし、カネはいくらでもつくりだせるが制約がある。それは実体経済の実物・サービスの供給能力である。実体経済の供給能力を超えてカネをつくり市中に送りだせば悪性インフレになる。そこが制約・限度になる。だから重要なのはカネではなく実体経済である。従って供給能力の限度までは財政支出(私は社会保障に重点投入すべきと考える)をドンドン拡大すべき。

3、財政支出をすると、民間の貯蓄(現金通貨+預金通貨)は増える。だから、「国債発行の増大で民間の貯蓄が減少し、国債発行が困難になり財政が破綻する」、「金利が上昇し設備投資や個人消費が抑制される(クラウディングアウト」という主張は誤りである。
(これ以外にも取り上げるべきものは、多々あるのですが紙面の都合で省略)

 現在、依然として大昔からの俗論が人を惑わしています。いわく、「次世代へのつけが大変だ」、「政府の借金が膨大で財政破綻する」、「円の信認が暴落してハイパーインフレだ、国債は紙くずに、円レートも暴落する」等々。しかし、これらは全て誤りです。
よくジッと見ていただければ、MMTの主張の1、2が正しいこと、そして以上の俗論が誤りであることがお分かりになると思います。

「貯蓄があるから国債発行ができる」は誤り

  今回は紙面の関係で、「「政府の借金が膨大で財政破綻する」という俗論に関係する主張3についてだけ、若干述べたいと思います。

 通常の考えでは、国債発行(財政支出)は十分に民間貯蓄が存在することを前提にしています。国債発行はあくまで民間貯蓄によって賄われるというわけです。例えば高齢社会になり多くの年寄りは貯蓄を取り崩し、その結果消費性向が高まり、さらに少子化進行で成長も見込めないので全体の民間貯蓄が減少する。そうなると民間貯蓄による国債購入が困難になり、国債発行も困難になる。すると財政破綻だというわけです。しかし、それは誤りです。

 現在、国債のほとんどは金融機関(以下銀行と云います)が買っています。 そして、事実をみれば銀行は、自らが日銀内に保有する日銀当座預金(注)によって国債を購入します。具体的には「政府が日銀内に保有する日銀当座預金」へ「銀行の日銀当座預金」から国債購入代金が振りこまれます(これによって政府は資金調達を実現。また銀行の日銀当座預金はもともと日銀が供給したもの)。

 つまり、銀行は自分が預かっている企業や個人からの預金で国債を購入するわけではありません。ですから、民間貯蓄と銀行の国債購入代金は、直接関係はありません。それどころか逆に、MMTの主張3が述べる通り、財政支出(国債発行)が民間の貯蓄(現金通貨+預金通貨=マネーストック)を増やすのです。

財政支出で民間貯蓄が増えるプロセスは?

 そのプロセス(新発債の場合)は次の通り。少し我慢して読んでください。

1 銀行が国債(新発債)を購入すると、銀行保有の日銀当座預金は、政府保有の日銀当座預金に振り替えられる。2 政府は、例えば公共事業を受注した企業に、政府小切手でその代金を支払う。企業は政府小切手を取引銀行に持ち込んで、代金取立てを日銀に依頼する
3 銀行は、小切手代金相当額を企業の口座に記帳する。(政府小切手は銀行にとって無条件に信用のおけるもの。ここで新たに企業名義の銀行預金(預金通貨)が生まれ。民間の貯蓄=マネーストックが増加する=信用創造)
4 銀行は小切手を日銀に持ち込む。日銀は政府保有の日銀当座預金(1で政府が国債を銀行に売却し入手した調達額)を、銀行保有の日銀当座預金口座へ振り替える。(3から4を通じてこの銀行は、企業への信用創造を行う。同時に入手した小切手で日銀に対する代金取立てを行い、国債購入代金を取り戻している)
5銀行全体としては、日銀当座預金が戻ってくるので、日銀当座預金総額は変わらない。したがってふたたび国債を(新発債)を購入することができる。

 見られるように、3で企業が政府小切手を持ち込んだ銀行は、その代金を企業の口座に入力して、国債発行額と同額の新たな民間預金を生み出しています。

 また銀行は、国債購入の際、自己の日銀当座預金から政府の日銀当座預金へ代金を振り込んでいるが、5でその代金を回収しています。

 結局、政府の国債発行・財政支出は新たな民間預金(民間貯蓄)を生み出してなおかつ銀行の日銀当座預金も回収されて、国債発行と銀行による購入を繰り返すことが可能なのです(ですから金利は低下傾向)。民間貯蓄の減少で国債発行が困難になり、財政破綻するというのは誤りです。その認識なしに社会保障の充実を主張することは出来ないでしょう。財政再建論者に転落するだけです。

(注:日銀当座預金は、政府と銀行が日銀内に口座を持ち、その口座によって銀行間あるいは政府と銀行の間での決済をおこなう。一般の個人、企業とは直接の関係はない)

17:57

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第35回研究会(2020年9月26日)「バブルから金融危機、そして・・・リーマン 兜町の片隅で実務者が見たもの(1980-2010)」(金融取引法研究者 笠原一郎氏)


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第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

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」(東京大学名誉教授 加納啓良氏)


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