“くまモン”も参加
日本広報学会第20回研究発表全国大会を熊本で開催
東海大学教授 小野豊和
九州・熊本市の東海大学熊本キャンパスで10月18日、19日、日本広報学会第20回研究発表全国大会を開催する。統一論題は「グローカル時代におけるコーポレート・コミュニケーション戦略を深化する」で、基調講演には、九州を代表する九州経済連合会副会長・JR九州相談役の石原進氏と熊本県知事・蒲島郁夫氏を迎え、「観光を九州の基幹産業に〜活力あふれる九州に向けて」、「くまモンの政治経済学〜くまモンのロイヤリティフリー戦略」についてお話しいただく。楽市楽座をヒントに“くまモン営業部長”を生み出した発想、国鉄分割民営化後、“ななつ星in Kyushu”などで話題を提供し続ける戦略などをトップ自ら語っていただくことになっている。
基調講演の2人に加え、異文化経営学会会長の馬越恵美子氏、長崎大学副学長・広報戦略本部長の深尾典男氏、事業構想大学院大学副学長・日本広報学会副会長の上野征洋氏の5人によるパネルディスカッションが続く。ファシリテーターによる趣旨説明が終わるや否や突然“くまモン”が現れる秘策を練っているが、参加者に驚きと緊張感を和らげる雰囲気を醸し出すことだろう。
日立物流の社外取締役に就任した馬越恵美子氏は「コーポレート・コミュニケーション戦略としての“女性活用”の推進」を提起する。専門のダイバーシティ・マネジメントについて現場からの報告を期待している。長崎大学の深尾典男副学長は、会社組織でない大学では困難と思われていた大学に広報戦略本部を設置し本部長を担当。学内のすべての情報収集・発信の一本化、学長による定例記者会見の実現などに手腕を発揮。また2018年問題、つまり高卒者激減による大学の定員確保の危機対策として、入試広報一辺倒の大学広報のあり方に警鐘を与える発言を期待する。理論派の上野征洋氏からは、グローカル・コミュニケーションの現状と未来について示唆に富むコメントを期待している。
首都圏から遠く離れた九州での大会開催の課題は参加者の確保で、公共コミュニケ—ション学会、異文化経営学会と協賛参加を申し合わせ、特に行政関係の発表が追加された。統一論題4本、自由論題24本(広報理論・企業広報・広報人材・行政広報・社会貢献)のほか、初の試みとして導入したポスターセッションに15件の応募があった。メーン会場左右に1日目から展示するポスターは参加者が移動のたびに見ることができる。2日目の昼食休憩時に設定している立会説明での活発な質疑応答を期待している。
地域に貢献する大学へ
大会に先立ち事前に熊本県県政記者クラブで発表、メディア席を用意するなどの対応を説明したところ、県下だけでなく福岡からも取材陣が来てくれることになった。また、1日目を地元向け無料公開講座として地元紙『熊本日日新聞』掲載を通じて参加者を募集したところ、多くの市民の参加を得た。大学が地(知)の拠点として地域に貢献すべきという文科省の方針を反映するイベントとして企画した。
日本広報学会は1995年3月24日に経団連の外郭団体である経済広報センターを母体として企業広報に重点を置いて設立された。業広報担当者、大学教員・研究者はもとより、法人会員、自治体等への拡がりをみせ、10月1日現在の会員数は646名(個人449、学生36、法人47社161人)となっている。来年の20周年記念大会は東京大学本郷キャンパスで9月11、12日に開催することが決まっている。熊本大会終了時に、次期開催校で現場を指揮する東京大学大学院情報学環・総合防災情報研究センター准教授の関谷直也氏から力強い決意表明
が行われる。