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2019/09/25

POLITICAL ECONOMY148号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
仮想通貨リブラが変える世界

                 横浜アクションリサーチ 金子文夫

リブラの登場

 6月18日にフェイスブックが新しい仮想通貨リブラの構想を公表し、2020年前半の運用開始を宣言して以来、その成り行きに注目が集まっている。2009年に登場したビットコイン以降、世界では2000種類以上(時価総額3000億ドル)の仮想通貨が発行されたというが、大半は狭い範囲での流通であり、既存の金融システムへの影響は限られていた。

 しかし、リブラ(古代ローマ帝国の通貨名称)は従来の仮想通貨とは決定的に異なる性格をもっている。第一に、発行主体が巨大企業の集合であり、多数の利用者が見込まれる。世界27億人のユーザーをもつフェイスブックを中心に、決済業界最大手のビザ、マスターカード、ペイパル、さらにライドシェアのウーバテクノロジーズ、音楽配信のスポティファイ等が参加するという。ビットコインなどは不特定多数の分散型ネットワーク(パブリック・ブロックチェーン)で送金コストを下げているが、リブラは加盟社のネットワーク(プライベート・ブロックチェーン)を用いる。

 第二に、通貨価値の安定を図るために、ドル、ユーロなどの準備金に裏づけられた発行をする(ステープルコイン)。これによって、投機的商品となっていたビットコインとは異なり、流通範囲が広がる。金融庁は、価値の裏づけのない仮想通貨を法定通貨(または法定通貨建て資産)でない一種の金融資産とみていたが(従って暗号資産と命名)、法定通貨とのリンクが確認できれば、仮想通貨とは異なるデジタル通貨として扱われることになろう。

通貨当局の猛反発

 リブラ構想の発表に対する通貨当局の反応は迅速だった。米下院金融サービス委員会の委員長は直ちに、議会・当局の審査が必要であり、開発停止を求めるとの声明を発した。イングランド銀行のカーニー総裁は高度の規制が必要と述べ、FRBのパウエル議長は、審査には1年以上かかると発言した。金融安定理事会(FSB)の議長は、6月のG20サミット参加の各国首脳に、高い基準の規制の検討を要請した。国際決済銀行(BIS)の報告書は、巨大IT企業の金融業進出に対する包括的検討の必要性を指摘した。G20、G7の財務相・中央銀行総裁会議でも問題が提起され、IMFは7月半ばにデジタル通貨に関する報告書を作成した。

 このような当局のすばやい反応は、リブラのインパクトの大きさを物語っている。提起されている懸念は多岐に渡るが、整理すると次の4点になる。

 第一に、匿名取引の問題である。資金洗浄、脱税等の不正防止には、取引の本人確認が必要だが、リブラではそこに抜け道が生じるとする。

 第二に、個人情報保護への懸念である。フェイスブックは大量の個人情報を流出させた「前科」があるだけに、資金移動に関する情報流出の懸念が拭えない。

 第三に、金融業界の送金、決済業務が奪われ、やがては預金、融資なども侵食される可能性、またリブラが通貨発行益を得るとすれば、中央銀行の通貨発行益が侵食されてしまう。

 第四に、金融システムへの影響である。無利子のリブラの流通量が増大すれば、通貨当局の金融政策の有効性が損なわれ、またインフレの進行が予測される国から大規模な資本逃避が生じる可能性もある。

通貨金融システムの大転換

 これから何が起こるのか、可能性を2点あげておく。第一は、IT業界と金融業界にまたがるデジタル通貨発行競争の激化である。IT業界ではフェイスブックが先行したため、これに対抗できるのは中国のテンセントぐらいかもしれない。金融業界では邦銀も含めて一部の民間銀行がすでにデジタル通貨を発行しており、棲み分けができるかどうかが問われる。当面は、小口決済、個人送金業務のシェア争いが進行し、預金・貸出業務に影響が及ぶのはしばらく先の話だろう。

  注目されるのは中央銀行の対応であり、小国の中央銀行のなかには先行してデジタル通貨を発行しているところもある。近いうちに中国人民銀行が発行に踏み切るならば、デジタル人民元は「一帯一路経済圏」の基軸通貨へと成長していくかもしれない。

 第二は、国際通貨システムの基軸がドルから合成通貨(SDR)に転換する可能性である。これだけ経済がグローバル化したにもかかわらず、米国1国の通貨であるドルがグローバル通貨の役割を果たしているところに無理がある。米国の金融政策によって世界経済が攪乱を余儀なくされている。リーマンショック以後、中国は基軸通貨をSDRに変えるべきだと主張してきた。イングランド銀行のカーニー総裁も、8月のジャクソンホール会議(各国中央銀行総裁が参加)において同趣旨の提起を行った。リブラの発行準備は主要通貨のバスケットであり、SDRを想定している。

  今後、リブラとデジタル人民元が拡大し、ドルの地位が低下していくならば、基軸通貨をドルからSDRに移す圧力が強まるだろう。トランプ大統領はリブラについて、「支持や信頼性はほとんど得られないだろう」として、ドルが一番と発言したが、ドル体制の終焉を直感したからではないだろうか。

09:44

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第36回研究会(2020年11月28日)「ポストコロナ、日本企業に勝機はあるか!」(グローバル産業雇用総合研究所所長 小林良暢氏)


第37回研究会(2021年7月3日)「バイデン新政権の100日-経済政策と米国経済の行方」(専修大学名誉教授 鈴木直次氏)

第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

第44回研究会(2024年5月12日)「21世紀のインドネシア-成長の軌跡と構造変化
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