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2019/09/14

POLITICAL ECONOMY147号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
「刑務所みたい!」-子どもの一時保護体制見直しを
                          
                                     まちかどウオッチャー 金田麗子

 東京都の児童相談所(児相)に設置されている一時保護所が、虐待などで保護された子どもたちに対し、人権侵害に当たる過剰な管理規制を行っているという報告書が、東京都の第三者委員から出された。

 報告書によると、一時保護所では、私語禁止、子ども同士の会話制約、目を合わせるのも禁止などの指導をしていて、「刑務所みたいだった」という子どももいたそうだ。ルール違反の子どもに対しては、壁に向かって食事をさせたり、体育館やグラウンドを何周も走らせるなど、まるで「処罰」のような対応をしていたという。

 報告書は問題の背景として、増加し続ける虐待相談と一時保護件数に対し、一時保護体制が追い付いていない。いつも満杯の一時保護所(平均入所率109.2%)や、児童福祉司などの職員不足などが運営に悪影響を及ぼしていると指摘している。

 都児相の児童福祉司は2018年度273人だが、国の基準297人に満たない。児童心理司も117人と基準の149人に到達せず、たしかに職員体制は十分ではない。

問題は職員数だけではない

 東京都は指摘に対し、今年度から一時保護所の職員を16人増やし、入所定員も24人拡大したという。しかし原因は人数の問題だけだろうか。

 児童福祉法に基づいて、都道府県、全政令指定都市、一部の中核市の計215か所(2019年4月)設置されている児相は、虐待、子育て不安、不登校、非行、障がいなど子どもにかかわるあらゆる相談に対応。父母の不在や虐待など家での養育が困難な子どもを一時保護する権限も持っている。

 居室は4人以下(乳幼児のみは6人以下)の共同生活で、年齢に応じ男女別。一時保護期間は原則2か月で、子どもの心身の状況や家庭環境などの調査を行い、家庭に戻せるか、戻せない場合の対応など判断する。

 親の連れ去りなど危機回避のために、原則学校への通学はできない。外部との接触や連絡も制限がある。ただでさえ窮屈な生活を送っているのに、なぜ厳しい行動制限や冒頭のように子ども同士の接触を禁じるような管理体制を一時保護所はとるのか。

 一時保護の対象者は被虐待児だけではない。置き去りや家出、経済事情から居所を失った子、非行など様々な事情の子どもたちが対象となる。しかも共同生活。子ども同士が事情を語り合ったり、連絡先を交換することで、犯罪行為に巻き込まれたり様々なリスクにさらされないための対応だという。

 私自身DV被害者や暴力被害者の一時保護支援にかかわった経験があるので、安心安全確保が第一義であることは理解できるが、当事者の人権侵害にならない配慮が前提だ。そもそもトラブルやリスクは共同生活や施設体制が原因で起きることが多い。

児相の閉鎖性に問題

 厚生労働省も一時保護所の対応が不十分だとして、居室の小規模化など個別対応ができる構造上の整備や職員配置の増加、第三者評価の導入をすすめるよう求めている。

 2017年に厚生労働省の検討委員会は「新しい社会的養育ビジョン」を出し、一時保護体制についても、「子どもの権利が保障された一時保護体制」への改革として、一時保護所における自由権、教育権の保障と子どもの問題に合わせたサポートのために、子ども2人に対して一人の大人がケアできる体制や、小規模一時保護所や同委託施設においては、子ども3人に大人一人の配置など提言している。

 ところが全国児童相談所長会が猛烈な反対意見を表明している。その多くは、現行の施設構造や規模、人員などからこのような一時保護体制は現実的ではないというもの。

 に閉鎖的な環境でなければ物理的なリスクを最小限に抑えられないし、子ども自身が課題に向き合うことが難しい。「子どもの最善の利益」は「制限される権利」「生活が保障される権利」「適切に養育される権利」「生活が保障される権利」などと比較衡量して判断される、より上位の概念である。「権利」というが家庭や学校、社会においてもルールがあり、個々人の権利だけが保障されるものではないなど言及している。

 つまり人権侵害というそしりは心外で、子どもの最善の利益のためには当然のことだと思って、少しも疑いを持たない。この頑迷さはどこからくるのか。

多様な連携が必要

 朝日新書「ルポ児童相談所」(大久保直紀著)の第6章には、弁護士を常勤職員として配置したことで、子どもの権利を知らず知らず制限していたことに気づかされたという福岡市子ども総合センターの事例が紹介されている。児相職員以外の視点が入ることによって気が付いたというのだ。

 つまり従来の児相職員だけの児相が閉鎖的であることの裏返しでもある。児相職員だけでなく、市町村の子ども担当職員の専門性や質の向上はもちろん不可欠だが、自治体の関連部署、児童家庭支援センター、警察、学校、保育園、民生児童委員、NPOなどとの多様な連携で「子どもの利益をベースに置いた」体制を作っていくことが、求められている。

16:16

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