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2020/12/23

POLITICAL ECONOMY第179号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
日本的無責任体制は続く――コロナ対策の無責任――
                       経済アナリスト 柏木 勉

 新型コロナの第3波がやってきた。感染者は第1波、第2波よりはるかに拡大した。ただ小生は、ワクチンが実用化され接種によって国民の6割程度が集団免疫状態にならない限り、更に第4波、第5波・・・が続くと考えていたので、特段の驚きはない。直近ではワクチン実用化へ期待は膨らんでいるのだが。

 コロナ禍が襲ってきてからもう1年になる。だが、当初抱えていた問題はそのまま放置されている。

 PCR検査をみても、最近の検査人数は一日あたり3万人台から4万人へ増えている。だが少なくとも20万人から30万人実施すべきという多くの提言からすれば話にならない。

 なぜPCR検査が拡大しないのか。それは法が未整備で曖昧な体制が放置されてきたからである。それが何に起因するかといえば日本的無責任体制である。

法的根拠を曖昧なままに放置

 感染症法では、厚生労働大臣の権限は、都道府県知事に対する技術的指導及び助言、緊急時における指示であって、その法的拘束力や担保措置等は、不明確なものでしかない。つまり、厚労省から自治体への様々な「通知」(事務連絡)は、感染症法では「技術的助言」あるいは「指導」という位置づけにすぎない(いわゆる通知行政といわれる)。

 このような法的位置づけであるから、名目的には厚労省としては「自治体へ通知した」、「役所としてやるべきことはやっている」とのアリバイに利用される。だからといって自治体が自らの責任で、例えば保健所業務に関して「技術的助言」「指導」にそのまま従う義務があるかといえば、そのような義務はない。本来、保健所は自治体の組織であり法的な特例措置でもなければ、国が関与することはできない。

 しかし、実質的に保健所を統制しているのは厚労省関係部局なのである。自治体はほとんどが厚労省に従属している。感染拡大の当初、都道府県は厚労省の「通知」に従い各保健所にいわゆる「相談センター」を一斉に設置した。だが、これは3月中旬に新型コロナウイルスが特措法の対象になる前だったから、厚労省が各保健所等に「相談センター」の設置を求める法的根拠はなかったのだ。従って、この一例をもってしても、法的権限と責任から乖離したあいまいな無責任体制が形成されていることがわかる。

 PCR検査でも、検査に関わる厚労省通知は「技術的助言」であり、法的には厚労省の責任で一元的に執行されるものではない。あくまで通知された自治体が自ら設置した保健所において通知を判断し、それぞれ検査の関連業務を行うのである。従って検査体制は地方ごとに異なり、保健所ごとに設置された「相談センター」の対応に大きなバラツキが生じて、いわゆる「目詰まり」が生じ、国民・住民から批判を浴びることになった。(なお元厚労大臣の舛添要一によれば、目詰まりの大きな要因のひとつが国立感染症研究所(感染研)による感染データの独占である。PCR検査を民間に広げれば、従来通りの感染データ独占が出来なくなる。従ってPCR検査拡大を抑制するという動機が働いたのだ。ちなみに保健所は厚労省の医系技官の、地方衛生研究所は感染研の天下り先である。このことからも自治体が厚労省の実質的支配下にあることがわかる)

 しかし、直接住民から批判されたのは主として保健所の「相談センター」であり、「通知・事務連絡」を発した厚労省への風当たりは弱くて済むという構図ができあがった。その後、場当たり的に改善はなされているが、法的裏付けはないままであり、問題がおこるたびに同じ混乱が繰り返されるのである。

GO TOでも責任の押し付け合い=責任回避

 「GO TO TRAVEL」でも自治体・都道県知事と国の権限が曖昧であり、互いに責任を押し付け合っている。特措法の欠陥である。だが、責任が曖昧なことから当然のことながら、そこから政治的な利益を得る者もいる。都知事の小池百合子がそうだ。GO TO TRAVEL,では、「国の政策だから」と政府に下駄を預け、一方都民に対しては「都知事としてできることはやります」と都内の飲食店等へ時短要請を求めた。更にはその後、「65歳以上の高齢者や基礎疾患を持つ者」へ利用自粛を求めた。つまり地方はGO TO TRAVEL,で東京から来てもらいたい、一方都民は医療体制のひっ迫を恐れているのだから、双方に向けていい顔をしているわけだ。だが、大阪市や札幌市は「国と協議」しつつも主体的にGO TO TRAVELを一時中断したのだから、感染者、重症者が増大している東京でも同様に出来るはずなのだ。

 菅首相もきわめて無責任であり、その基本的スタンスが東京から地方へ感染を拡げている。首相は「GO TO TRAVELを利用した者の感染者はごくわずか。問題はない」と繰り返している。だが問題がないなら、なぜ大阪市や札幌市のGO TO TRAVEL一時中断を認め、東京の高齢者中心の利用自粛を求めるのか? 無症状若年層の移動が重症の高齢者を増やしているのだ。文字通り支離滅裂である。さらに許せないのは特措法、感染症法等々の法改正は「コロナが収まってから」と明言したことだ。臨時国会は閉会し、来る通常国会でも改正論議に応じないつもりだろう。

 現行特措法の問題点は、大別すると、第一に知事からの要請・指示では強制力がない、また私権制限への補償もないこと。第二には国と都道府県の権限・役割の分担が不明確のままであること。この2点といってよい。

 以上を放置したままで的確な対応などできるわけがない。だが成り行きまかせのほうが政治的には都合が良いのだ。責任の所在を明確にしないですむから。その後政府はGO TO TRAVELを12月28日から来年1月11日まで全国一斉一時中止を決めた(東京等4都市は全国に先行して実施)。後手後手で混乱拡大だ。もともとGO TO TRAVELはコロナ収束後の政策だった。それは国会で承認されたことなのだ。それを無視して強行した。戦前、戦中と同じ無責任体制が続く。 

07:54

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第36回研究会(2020年11月28日)「ポストコロナ、日本企業に勝機はあるか!」(グローバル産業雇用総合研究所所長 小林良暢氏)


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第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

第44回研究会(2024年5月12日)「21世紀のインドネシア-成長の軌跡と構造変化
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