震災後の熊本事情
元東海大学教授 小野豊和
くまモンの高い情報発信力
平成28年のくまモン関連商品の売上げは1,280億円となった。くまモンは楽市楽座の考え方から基本的に県内企業もしくは県内に事業所が存在する企業に無料で使用が許可され、認知度が上がったと言える。熊本県の予算を見ると、平成29年度は3億996万円が計上されている。その内訳は①くまモン使用許可等管理事業、②くまモン活用熊本PR事業、③くまもとプロモーション事業、④くまモン隊管理運営事業、⑤くまモンスクエア管理運営事業、⑥くまモン共有空間拡大推進事業の6つ。最後のくまモン共有空間拡大推進事業は6月補正予算で追加された新規事業。知事公室直轄で現在、くまモングループは県職員8名と専属の職員2名の計10名体制、その人件費は約7,000万円、つまりくまモンの維持管理には年間4億円近い経費が予算化されている。
くまモンはその高い情報発信力で国内外における熊本の知名度や地域ブランド力の向上に貢献している。また、復興の旗振り役として、熊本地震で被災した方々の心を支え、経済面以外でも県民の幸福量の最大化に大きく貢献している。海外からのニーズ対応、偽商品等不正使用対策など予期していなかった問題も起こっているが、県としては経費に見合うものとしている。
新しい試み無料タクシー「空港ライナー」
本年4月からJR豊肥線の肥後大津駅が「阿蘇くまもと空港駅」となった。熊本中心部から空港へはリムジンバスが一般的だが、平成23年10月にJR肥後大津駅とくまもと空港を結ぶ無料タクシー「空港ライナー」の試験運行が開始した。4年を経過し平成27年に目標としていた1日平均200人以上を達成、1日54便運航(27往復)している。平成28年度の年間利用者数は84,452人、一日平均約230人。空港ライナーの維持経費は年間約4,250万円で県が約3,000万円、大津町が約500万円、残りを熊本空港ビルディングやJR九州等で分担している。無料のままであるが一人当たり約503円かかっていることから有料化の検討もなされている。一方、昨年12月に蒲島知事が空港運営を民間に委託するコンセッション方式の導入を表明、新ターミナルビル建設を担う運営権者を平成30年度末までに決定することになっている。
人手不足で技能実習制度活用のニーズが高まる
熊本労働局の公表データによれば、平成28年10月の時点で外国人技能実習生は県内で3,456人。実習先としては、農業関係が1,911人(55.3%)、次いで製造業が1,119人(32.4%)、建設業に240人の(6.9%)が従事し、卸売、小売業に139人(4.0%)、宿泊・飲食サービス業に26人の(0.8%)の順となっている。国別で見ると、ベトナム人が1,571人(45.4%)、次いで中国人が1,220人(35.3%)、フィリピン人が347人(10.0%)、この3ヵ国で全体の90.7%を占めるに至っている。
これまで熊本県として技能実習生と関わる仕組みがほとんどなく、不適正な送り出し機関、ブローカーの存在など実習生の保護体制が不十分で過去8年間に4件の窃盗、殺人事件等が起こっている。平成29年11月に施行される「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」によると、新しい法律では、相手国政府と協力して不適正な送り出し機関の排除を目指し、監理団体については許可制とし、実習実施者については届出制、技能実習計画は認定制となる。また、新たな外国人技能実習機構を創設し、監理団体等に報告を求め、実地に検査する等の業務を実施。また通報・申告窓口を整備し、人権侵害等に対する罰則等を整備。されに関係行政機関からなる「地域協議会」を設置し、指導監督・連携体制の構築、優良な監理団体に対しては、実習期間を現行の3年から5年へ延長、受け入れ人数枠の倍増、対象職種の拡大等が挙げられている。熊本地震後の復興需要により人手不足感が高まり、技能実習制度活用のニーズが高まっている。