「地元就活」で一役
熊本県内企業就職率10%アップが目標
東海大学経営学部教授 小野 豊和
東海大学では、2015年度に熊本県と就職支援に関する協定を締結。また、文部科学省の平成27年度COC+事業(地(知)の拠点大学による地方創生推進事業)に採択された静岡大学と熊本大学による取り組みに事業協働機関として参画している。熊本地区では、熊本大学による「"オール熊本"で取り組む熊本産業創生と雇用創出のための教育プログラム」に参画している。具体的には5年間かけて熊本県下の大学卒業生の熊本県内企業への就職率を10%引き上げようという狙いだ(2015年度は34%)。2016年度は、就活日程が前倒しになり、6月から大手企業の面接が解禁となったが、熊本地震の影響で県内学生の就職環境が一変した。熊本地震枠を設ける企業もあったが、全体のムードとしてはスローダウンした感じとなった。そんな時、COC+事業に対する大学別取組についての公募があり経営学部就職委員長として応募したところ県内トップで承認され33万円の助成金をいただけることになった。
応募した企画内容は『業界研究 地元企業発見 就活推進シンポジウム』で、1回当り3~6社の熊本県内企業の人事採用担当と卒業生の先輩社員を招聘し、シンポジウム形式で意見交換をしようというもの。従来は全国から1日に約70社を呼ぶ面談形式の合同企業説明会を行ってきたが、本シンポジウムでは、内定を勝ち取る秘訣など、フレンドリーな雰囲気のなか先輩ならではの貴重な情報提供があった。併せて地元企業との交流を通じて受験(採用)意欲増進を図ることも狙いとした。
本格的な就活シーズンを迎える昨年の11月から年明けの1月にかけて4回開催し約450人の学生が参加した。熊本地震で壊滅状態になった農学部が、昨年5月下旬から熊本キャンパスの教室を使うこととなり、本シンポジウムは熊本キャンパスの経営学部、基盤工学部だけでなく農学部を含めた熊本の全学部対象に実施し助成金を有効に活用することができた。なお助成金は1人1万円の謝礼に使った。
学生の目が輝いた
シンポジウムは就職委員長の私が司会を担当、まず参加企業の採用担当による5分間のプレゼンから始め、続いて東海大卒の先輩社員から就業風景、業界動向等の説明に加え就活への心構え、先輩からの助言、学生へのメッセージなどが寄せられた。一通りの説明が終わりフロアーにマイクを渡すと、学生たちからは、授業中の目つきとは異なる輝いた目で様々な質問が出た。学生たちの感想を以下に紹介する。
「先輩による実際の仕事の現場の話が聞けて、新鮮で有意義だった。熊本地区での就職を真剣に考える機会となった」、「企業の特色が聞けてとてもよかった。どのような仕事をしていて、他の企業とどのように繋がっているのか、会社がどのような人材を必要としているのかなど、社会に出るために必要な多くのことが聞けた」、「インターンシップや就活を通じて、どのように行動し、考え、企業を見るべきかなど、自分が一生働く会社を選ぶための勉強になった」「仕事をするということはただ働くのではなく、誰かの役に立つということを教えてもらった。本シンポジウムに参加して仕事について深く考えようと思った」など。
人事担当者による明解なプレゼンは、学生にとって面接時の自己PRの参考にもなる見事なものだった。臨場感ある生の情報は今後の就活に生かされるであろう。