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POLITICAL ECONOMY第292号10/01 07:38
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現代の理論・社会フォーラム経済分析研究会は、日本および世界の経済の動きをとらえ、認識を深めることを目的に研究会活動を行っています。経済を中心に社会、政治など知的集積の場として「POLITICAL ECONOMY」をメールマガジンとして配信しております。

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2022/03/24

POLITICAL ECONOMY第209号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
本当に日本は経済大国なのか?
                NPO現代の理論・社会フォーラム運営委員 平田 芳年

  昨年末、日経新聞が以下のデータを報道した。
 「内閣府が12月24日発表した2020年度の国民経済計算年次推計によると、国別の豊かさの目安となる1人当たり名目GDPは2020年(暦年)で4万48ドル(約428万円)となり、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中19位だった」。

1人当たりGDPは27年に韓国に抜かれる

 日本は2000年時点でルクセンブルクに次ぐ世界第2位だったが、この20年間に米、独、英に抜かれ、お隣の韓国は22位と日本に迫っている。この日経記事は日本経済研究センターの予測も掲載、「日本の1人当たり名目GDPは27年に韓国、28年に台湾を下回る。高齢者人口の増加に加え、デジタル化の遅れに起因する労働生産性の伸びの弱さが主因だ」と報じている。変動する為替レートを実際の取引に調整した「一人当たり購買力平価GDP」でみても、日本は台湾(15位)、ドイツ(18位)、韓国(28位)にすでに抜かれて33位にランクされている。

 他にもいくつかの指標がある。日本のGDPは米中に次いで世界第三位の規模を確保しているが、世界経済における比率は90年代の15%から5.7%に低下。スイスのビジネススールが毎年発表している「国際競争力ランキング」で日本は1989年から4年間、アメリカを抜いて第1位だったが、その後順位を落とし、2019年版で30位に後退。かつて世界でもトップクラスだった労働者の所得水準もOECD加盟国中22位と韓国の後塵を拝している。反対に国の借金(債務残高)でみると、日本(対GDP比)は20年末で266%となり先進7カ国(G7)中最悪で、ベネズエラ、スーダンに次ぐワースト三位。

企業の力も凋落

  日本経済の原動力となってきた企業の力はどうか。世界時価総額ランキングでみると、1989年に上位50番以内に日本企業は32社もランクインしていたが、最新の22年版では50位以内にトヨタ自動車1社のみ。アメリカのビジネス誌『フォーチュン』が毎年発表しているグローバル企業の収益ランキング・ベスト500で見ると、1989年に日本企業は111社もランキング入りしていたが2019年版では52社に減少。国際的に注目度の高い論文数で見ると、20年前は4位、10年前は5位、そして19年には10位に後退。かつて世界のトップを走り続けた鉄鋼、造船、家電、半導体産業の凋落も著しい。

 このデータをどう受け止めるべきなのか。
 もちろん米、中に次ぐ第3位のGDPを確保し、外貨準備高は1兆4000億ドルと中国に次ぐ2位の規模で、対外純資産高は356兆9700億円(2020年末)と、30年連続で「世界最大の債権国」の地位にある。人口5,000万人以上の国で比較すれば日本の一人当たりGDPは購買力平価換算では世界第6位。そう考えると、日本は依然として「世界で有数の経済大国」との評価も可能だろう。

大国意識が目を曇らせている

 しかし、上述の凋落のデータを冷静に眺めると、「日本は経済大国」であるという評価は日本人の思い込みによる“幻想”であるという現実を突きつけている。1970-80年代の高度成長期に形成された『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(エズラ・ヴォーゲル著)との意識がいまだに色濃く残っており、それが日本経済を見る目を曇らしていることに気づくべきだ。とくに80年代の成長期、ハイテク景気、バブル景気の時代に青春を過ごした50歳代以降の人々にこの傾向は強い。世界と比較すると、日本人はそれほど豊かな生活を送っているわけでもなく、経済力も先進国の中程度との評価を受け入れるべきだ。そうした「不都合な真実」を直視したうえで、内外の諸政策を根本から再考してはどうか。

10:50

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次回研究会案内

教室が変更となりました。
第45回研究会
「トランプ関税でどうなる欧州経済」

講師:田中素香氏(東北大学名誉教授)
日時:10月25日(土)
14時~17時

場所:専修大学神田校舎7号館7階774教室(東京メトロ半蔵門線、都営地下鉄・新宿線、三田線神保町駅 出口A 2下車徒歩3分)
資料代:1000円


 

これまでの研究会

第36回研究会(2020年11月28日)「ポストコロナ、日本企業に勝機はあるか!」(グローバル産業雇用総合研究所所長 小林良暢氏)


第37回研究会(2021年7月3日)「バイデン新政権の100日-経済政策と米国経済の行方」(専修大学名誉教授 鈴木直次氏)

第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

第44回研究会(2024年5月12日)「21世紀のインドネシア-成長の軌跡と構造変化
」(東京大学名誉教授 加納啓良氏)


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