日誌


2013/11/28

グローカル通信 第1号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
アベノミクス、地域経済への浸透はまだまだ
                                         神奈川県寒川町議会議員 中川登志男
 
  私は、2013年2月より、「寒川神社」で有名な神奈川県寒川町で町議会議員を務めている。議会では、文教福祉委員会と建設経済委員会に所属しているが、専修大学大学院では法学研究科に属し、教育制度などを専攻していることもあって、文教福祉は得意だが、建設経済は正直なところあまり得意でない。でも今回は、安倍政権が進める「アベノミクス」が、どこまで地域経済に寄与しているのか、このテーマに挑戦してみた。
 
 年が明けた1月上旬、町の商工会が主催する賀詞交歓会が町内で行われた。私も町議会の建設経済委員の一人として参加した。会費は5,000円。町内企業の経営者が一堂に会する場でもあるので、アベノミクスで町の経済がどこまで復調しているのか、聞いて回った。
 
  最初に聞いたのは、精密機械部品メーカーの役員。中規模の企業だ。その役員によると、今は景気回復に向けた土台を作っている時期で、これからその土台の上に、いろいろなものを乗せていくことになるのではないかと。早い話、まだアベノミクスの恩恵は感じないということだ。もっとも、このメーカーは、精密機械部品の製造ということもあって、景気の波が即、業績に反映されるわけではなく、緩やかに反映される傾向があるという。それでも、現段階では、業績が回復傾向にあるとは言えないという。

  次に、ビルメンテナンス会社の社長に話を聞いた。開口一番「業績?良くないですよ。アベノミクス?どこの話ですかという感じです」。それ以上聞いたら悪そうなので、早々に退散した。
 
  ちょうど隣になった町内の飲食店経営者に聞いてみた。「景気はどうですか?」「全然良くないわねぇ」。「国は企業交際費の減税も検討しているみたいですが?」「どういう形でも良いから、皆さんがもっと店に来ていただけると、嬉しいけど・・・」。あまり反応は良くなかった。
 
景気の指標=車の修理も増えていない

  青年会議所会員でもある板金の若き経営者に話を聞いた。何でも、景気が良くなって、車を買う人が多くなると、車の修理に来る人が多くなるそうだ。外出機会が増えると、車を壁などにぶつける人が多くなるからだとか。でも、今のところ、そうした状況は全くないという。「アベノミクスなんて全然感じないですね・・・」。
 
  そこに、青年会議所のOBが話に割って入ってきた。「景気回復なんて、あと3か月で終わりだ。4月から消費税が8%に上がるから、絶対、それで景気が腰折れする。だいたい安倍政権には確固たる成長戦略がない。しっかりとした成長戦略があればもっと株価も上がるし、地域経済も良くなるはずだ」。なるほど確かに消費増税は経済にとって不安要素だ。

  寒川には大企業の工場も少なくない。大手自動車メーカーの幹部に話を聞いた。私と同じ専修大学の出身。それはともかく、「景気回復を感じるのは対中国輸出だけですね。日本国内向けは、あまり景気回復を感じません」。消費増税について聞いてみた。「(消費増税直前の)駆け込み需要には期待できますが、やはり増税直後の反動には不安を感じます」。
 
  最後に、町の経済産業政策の担当部課の職員も来ていたので、話を聞いてみた。「企業回りをしていると、以前は設備投資なんてとんでもない、という企業が多かったが、最近は考えてみようか、という企業も出てきている。その意味では、わずかながら景気の回復を感じる時もある」。もっとも、その職員によると、町も地元企業の支援をもっと考えてくれ、と言われることがしょっちゅうなのは変わらないので、やはりアベノミクスの恩恵を感じることは、あまりないという。
 
  結局、あまり良い話は聞けなかった。安倍政権によると、確実に景気は回復しているらしいが、少なくとも我が町ではそのような状況にないと感じる。時間が経てば、大企業ばかりではなく、地域の中小規模の企業にもアベノミクスが波及してくるのではないかという期待を語る経営者もいたが、正直どうなのだろう。
 
  寒川のような小さな町にアベノミクスの恩恵が及ぶ前に、安倍バブルが崩壊するという結果に終わるのではなかろうか。

15:14

メルマガ第1号

金融緩和による「期待」への依存は資本主義の衰弱
                                                                   経済アナリスト 柏木 勉

 日銀の新総裁、副総裁が決定して、リフレ派が日銀の主導権を握った。副総裁となった岩田規久男氏は、かつてマネーサプライの管理に関する「日銀理論」を強く批判し、日銀理論を代表した翁邦雄氏と論争をくりひろげ、その後も一貫して日銀を批判してきた頑強なリフレ派である。

 さて、いまやインフレ目標2%達成に向けて、「「期待」への働きかけ強化」の大合唱となっている。この「期待」は合理的期待理論として欧米の主流派を形成している。そのポイントはこれまでにない大胆な金融緩和による「期待インフレ率の上昇」とされている。これによって実質金利を低下させ、それを通じて日本経済が陥っている流動性の罠からの脱出が可能になるというわけだ。ちなみに、近年ブレーク・イーブン・インフレ率なるものがよく出てくるが、これは普通国債の利回りから物価連動国債の利回りを引いて計算したものであり、期待インフレ率を表すとして利用されている。この期待インフレ率は、アベノミクスが騒がれ出してから、最近では1%程度にまで上昇してきた。同時に株高、円安が進んだ。これを見て「期待への働きかけ」は十分可能であり、現実に実証されつつあるとしてリフレ派の勢いは一層増している。

 リフレ派の主張に対しては様々な反論がなされている。その極端なものとしては、財政赤字が拡大する中で日銀が国債購入を増大させれば、財政ファイナンスとみなされ国債の信認(償還への信頼)が低下し、国債価格暴落で金利の急上昇がおこるというものだ。この時、設備投資はもちろん失速、財政は危機的状況をむかえる。もうひとつはカネを市中にジャブジャブに出していくわけだから、%インフレにとどまらずハイパーインフレをまねくというものだ。

 だが前者に対しては、いまだ家計の現金・預金が昨年で850兆円に増加し外国人の国債保有率も9%弱にとどまっているし、日本の金融機関の国債への信任は当分大丈夫だとか、また少なくとも今後の国債の新規発行分についてはその大半を日銀が購入してしまえば金利の大幅上昇はないとかの再反論がある。

 後者については遊休設備と多くの失業者を抱え潜在成長率との需給ギャップが大きい。だからハイパーインフレなどあり得ないとの再反論がある。その他様々な論点について論争はかまびすしい。

 だが問題は、リフレ派はデフレによる実質金利の上昇に焦点を絞っているのだから、実質金利と景気とりわけ利潤率との関係を見ることが必要だろう。実質金利の推移をみると、2000年代に入って近年まで実質金利は高い時でせいぜい2%強程度ときわめて低水準で推移している(ただし、リーマンショック直後を除く)。ちなみに80年代は5%台を上回っていたのである。そのなかでいざなみ景気は戦後最長を記録した。この間平均してCPIはマイナス.2%程度、実質経済成長率は2%弱と、日本経済はデフレ下で成長したのである。

 その後はリーマンショックにより大幅に落ち込み、回復ははかばかしくないが、ともかく2000年代全体を通じて、実質金利は長期にわたり低水準で大きな変化がないにもかかわらず、好況、不況が生じている。つまり景気の転換を左右しているのは実質金利以外の要因であり、例えばいざなみ景気の起動力となったのは、物価デフレよりも資産デフレからの脱却、デジタル家電を先頭としたデジタル革命、世界の工場となったアジアの生産ネットワークの形成、金抑制による労働分配率の低下であった。

 実質金利が高いと云う場合、何に対して高いのかが問題だが、むろん利潤率に対してだ。高くて2%程度の実質金利をクリアーできない利潤率が最大のネックなのだ。これを突破するのは最終的には不況下の合理化投資と需要創出型のイノベーションだ。デフレ下の低価格であっても利益を生むイノベーションである。しかし現状では200兆円におよぶ内部留保を抱えながら投資が低迷している。これはケインズの謂う企業家の「血気」の喪失というほかないだろう。
 
 そもそもインフレ期待を生むために、中央銀行による市場への説明能力やコミュニケーション能力などという小細工が大問題になるのは笑止千万というべきだろう。政府・日銀による「期待」の醸成という、お情けの支援なしには自ら投資に打って出ることができない。それほど「血気」が失われているわけだ。

 結局のところ、金融主導で金融面から資産効果を引き起こし、それによってようやく実体経済が動き出すというパターンしかとれず、それがまたバブルの形成・崩壊を繰り返すというのが現在の資本主義である。グローバル化で市場経済が世界中に浸透しているかの如く見えようとも、資本主義の中枢部分をなす先進国は、「期待」の醸成に頼るしかないという衰退の段階に入っている。

 

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次回研究会案内

会場が変更になりま
した。


第46回研究会

「高市経済政策は
何を目指している
のか!」

講師:松尾匡氏(立

  命館大学経済
  学部教授)

日時:
2026年1
  24日(土)
   14時~17

場所:専修大学神田校
舎10号館11階10115教
室(千代田区神田神保町
2-40地下鉄神保町駅A2
出口、徒歩約3分
資料代:1000円
オンライン参加ご希望の方
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方法
を参照の上お申し込
みください。
 

これまでの研究会

第37回研究会(2021年7月3日)「バイデン新政権の100日-経済政策と米国経済の行方」(専修大学名誉教授 鈴木直次氏)


第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

第44回研究会(2024年5月12日)「21世紀のインドネシア-成長の軌跡と構造変化
」(東京大学名誉教授 加納啓良氏)

第45回研究会(2025年10月25日)「トランプ関税でどうなる欧州経済」(東北大学名誉教授 田中素香氏)


これまでの研究会報告