日誌


2022/04/29

POLITICAL ECONOMY第214号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
ウクライナ-オリガルヒと堕落した政治家が支配する腐敗・汚職
天国
                       経済アナリスト 柏木勉

 ウクライナはオリガルヒとそれと癒着した政治家が支配する腐敗・汚職天国である。それは常識だ。その一端を、まず新聞でみると以下のような具合だ。

「ウクライナ・マヤキ 汚職大国の真骨頂…」 「すべてに賄賂が必要だった」『モルドバからウクライナのマヤキという街にバスで入国する時だった。入国管理の役人が私の提示した書類を見ながら「ウクライナでのホテルの予約証明がない」と言い出した。
 じゃあホテルを今すぐ予約する-―。そう言う私を制して引き留めにかかる。二時間も入国管理の個室に缶詰めにされた揚げ句、最後は「入国不可」との判断で、モルドバに返された。 不可解すぎ・・・・。他の旅行者に聞くと「役人が賄賂を求めているんだ」と言う。モルドバのホテルで聞いても「それは袖の下をよこせという意味」との説明が返ってきた。
 翌日もう一度、国境にバスで向かった。前日とは違う役人が「ホテル予約なしを理由に入国できないなんて、聞いたことない」と断言した上で、こう言い出した。「せっかくなので私も取り調べをさせてもらおう」。この役人も私を個室に閉じ込めて長々と質問を続けてきた。しびれを切らしたバスの運転手が部屋に怒鳴り込んで来たおかげで、賄賂要求はやんだ。 ウクライナが汚職大国だとは知っていた。このご時世、役人も、もっと真摯(しんし)にすべき仕事があるだろうに。』
(中日新聞2022年2/22  「ウクライナ・マヤキ 汚職大国の真骨
頂…」(小柳悠志))
  
 次に、ミラノに住む小生の幼馴染が、最近のメールに書いてきた。
「ウクライナの腐敗は聞いていた。今回の戦争前12月1月に、ウクライナ・オデッサの近くの生家に帰国していた知り合いの女性がミラノに戻り、嘆いていた。「全てに賄賂が必要だった」と。」  
ちなみに何年も前から、希望のないウクライナから大量のウクライナ人がイタリアに流入していた。

オリガルヒ-国民の苦しみ、国民生活の大混乱

 ウクライナの腐敗、またロシアの腐敗も見てみよう。ひどいものだ。(添付資料参照)「腐敗認識指数」の国際ランキングでは両国ともなさけないほどの下位に低迷している。それはそうだ。両国はアジア的専制の後継者ソ連崩壊から30年たっただけ。もともと主権者・国民の存在は否定されていた。どっちもどっちで、簡単にいわゆる近代的国民国家になるわけがない。加えてソ連崩壊後の米国新自由主義によるショック療法、それによる国民の多大な苦しみ、経済・生活の大混乱。これにつけ込み生まれ出たのがオリガルヒと、それに癒着した政治家の跳梁だ。

ウクライナ左派のユリヤ・ユルチェンコ氏は述べる。
「・・・資本の帝国はソビエト連邦崩壊後の東ヨーロッパとロシアで同じことを行ったのです。・・・
ウクライナの場合・・・国有財産を民営化しましたが、・・・基本的に、私たちはマルクスが資本の原始的蓄積と呼んだプロセスを目の当たりにしていたのです。・・・オリガルヒにとって蓄積する対象がたくさんありました。例えばドンバス地方には重工業・・・天然資源が・・・これらの資産を収奪する過程で、オリガルヒとその政治的・犯罪的ネットワークは金融産業グループを成功裏に築き上げました。・・・この資本家権力を行使し、直接、間接に政治を支配しています。一部のオリガルヒは政治家になっています。また、政治的な代理人を利用する者もいます。彼らは、欧米で訓練されたコンサルタントやPR会社、政治技術者を使い、選挙で当選するための選挙区を作り上げています・・・このような形で国家を支配する・・・オリガルヒのやりたい放題だったのです。国有財産を略奪していったわけです。・・・ロシア人労働者を搾取するロシアのオリガルヒが存在し、米国の労働者を搾取する米国のオリガルヒが存在し、ウクライナの労働者を搾取するウクライナのオリガルヒが存在し、中国の労働力を搾取する中国のオリガルヒが存在するのです。国境を越えたオリガルヒは、私たち全員を搾取しています。この階級分析は、相互に争う寡頭資本家たちの一団に対抗する私たちの共通の利益を指し示すもので
す。・・・」
(『Node Federation』 2022年4/11 「ウクライナ自決のため
の闘い」 左派系雑誌『Spectre』のWEB版・インタビュー記事)

国境を越えたオリガルヒ

 これが左派・リベラルが採るべき基本的考えというべきだ。ついでにゼレンスキーについては?
「(彼は)ナイーブではあるが平和と反腐敗を約束する選挙戦を展開したのです。しかし結局、平和を確保することも、汚職と寡頭制による略奪の抑制にも失敗したのです。何よりも、彼は統治者として無能であることが露呈しました。・・・・戦争が始まる前、彼が再選される可能性は極めて低いものでした」。ロシア侵攻直後ゼレンスキーは演説した。「私は支持率20%の大統領だ。多くの人に罵られている。これはこの国が自由な証拠だ」。

 ナショナリズムの扇動をやめよ 反プーチン、反バイデン、反ゼレンスキー、もちろん反岸田。ナショナリズムを煽る戦争は支配者の利益・支配体制を隠蔽する。「祖国ウクライナを守れ」「聖なるロシア」とか、そんなスローガンは幻想だ。現実は、各国支配層がその利益を守るためナショナリズムを利用して互いの国民を闘わせ血を流させる。かりに戦争に勝利しても、支配者の支配体制に何の変化もなく、ずっと続くだけ。ウクライナのアゾフ大隊なぞ、発足母体はならず者・ごろつき達の極右グループだ。「ウクライナの英雄」?? ともかくも「ウクライナ」対「ロシア」という、ナショナリズムに染まった構図で見るべきでない。

 反プーチン、反バイデン、反ゼレンスキー、無論反岸田である。ついでに反習近平。反金正恩


11:43

メルマガ第1号

金融緩和による「期待」への依存は資本主義の衰弱
                                                                   経済アナリスト 柏木 勉

 日銀の新総裁、副総裁が決定して、リフレ派が日銀の主導権を握った。副総裁となった岩田規久男氏は、かつてマネーサプライの管理に関する「日銀理論」を強く批判し、日銀理論を代表した翁邦雄氏と論争をくりひろげ、その後も一貫して日銀を批判してきた頑強なリフレ派である。

 さて、いまやインフレ目標2%達成に向けて、「「期待」への働きかけ強化」の大合唱となっている。この「期待」は合理的期待理論として欧米の主流派を形成している。そのポイントはこれまでにない大胆な金融緩和による「期待インフレ率の上昇」とされている。これによって実質金利を低下させ、それを通じて日本経済が陥っている流動性の罠からの脱出が可能になるというわけだ。ちなみに、近年ブレーク・イーブン・インフレ率なるものがよく出てくるが、これは普通国債の利回りから物価連動国債の利回りを引いて計算したものであり、期待インフレ率を表すとして利用されている。この期待インフレ率は、アベノミクスが騒がれ出してから、最近では1%程度にまで上昇してきた。同時に株高、円安が進んだ。これを見て「期待への働きかけ」は十分可能であり、現実に実証されつつあるとしてリフレ派の勢いは一層増している。

 リフレ派の主張に対しては様々な反論がなされている。その極端なものとしては、財政赤字が拡大する中で日銀が国債購入を増大させれば、財政ファイナンスとみなされ国債の信認(償還への信頼)が低下し、国債価格暴落で金利の急上昇がおこるというものだ。この時、設備投資はもちろん失速、財政は危機的状況をむかえる。もうひとつはカネを市中にジャブジャブに出していくわけだから、%インフレにとどまらずハイパーインフレをまねくというものだ。

 だが前者に対しては、いまだ家計の現金・預金が昨年で850兆円に増加し外国人の国債保有率も9%弱にとどまっているし、日本の金融機関の国債への信任は当分大丈夫だとか、また少なくとも今後の国債の新規発行分についてはその大半を日銀が購入してしまえば金利の大幅上昇はないとかの再反論がある。

 後者については遊休設備と多くの失業者を抱え潜在成長率との需給ギャップが大きい。だからハイパーインフレなどあり得ないとの再反論がある。その他様々な論点について論争はかまびすしい。

 だが問題は、リフレ派はデフレによる実質金利の上昇に焦点を絞っているのだから、実質金利と景気とりわけ利潤率との関係を見ることが必要だろう。実質金利の推移をみると、2000年代に入って近年まで実質金利は高い時でせいぜい2%強程度ときわめて低水準で推移している(ただし、リーマンショック直後を除く)。ちなみに80年代は5%台を上回っていたのである。そのなかでいざなみ景気は戦後最長を記録した。この間平均してCPIはマイナス.2%程度、実質経済成長率は2%弱と、日本経済はデフレ下で成長したのである。

 その後はリーマンショックにより大幅に落ち込み、回復ははかばかしくないが、ともかく2000年代全体を通じて、実質金利は長期にわたり低水準で大きな変化がないにもかかわらず、好況、不況が生じている。つまり景気の転換を左右しているのは実質金利以外の要因であり、例えばいざなみ景気の起動力となったのは、物価デフレよりも資産デフレからの脱却、デジタル家電を先頭としたデジタル革命、世界の工場となったアジアの生産ネットワークの形成、金抑制による労働分配率の低下であった。

 実質金利が高いと云う場合、何に対して高いのかが問題だが、むろん利潤率に対してだ。高くて2%程度の実質金利をクリアーできない利潤率が最大のネックなのだ。これを突破するのは最終的には不況下の合理化投資と需要創出型のイノベーションだ。デフレ下の低価格であっても利益を生むイノベーションである。しかし現状では200兆円におよぶ内部留保を抱えながら投資が低迷している。これはケインズの謂う企業家の「血気」の喪失というほかないだろう。
 
 そもそもインフレ期待を生むために、中央銀行による市場への説明能力やコミュニケーション能力などという小細工が大問題になるのは笑止千万というべきだろう。政府・日銀による「期待」の醸成という、お情けの支援なしには自ら投資に打って出ることができない。それほど「血気」が失われているわけだ。

 結局のところ、金融主導で金融面から資産効果を引き起こし、それによってようやく実体経済が動き出すというパターンしかとれず、それがまたバブルの形成・崩壊を繰り返すというのが現在の資本主義である。グローバル化で市場経済が世界中に浸透しているかの如く見えようとも、資本主義の中枢部分をなす先進国は、「期待」の醸成に頼るしかないという衰退の段階に入っている。

 

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次回研究会案内

次回の研究会は決まっておりません。決まりましたらご案内いたします。

 

これまでの研究会

第35回研究会(2020年9月26日)「バブルから金融危機、そして・・・リーマン 兜町の片隅で実務者が見たもの(1980-2010)」(金融取引法研究者 笠原一郎氏)


第36回研究会(2020年11月28日)「ポストコロナ、日本企業に勝機はあるか!」(グローバル産業雇用総合研究所所長 小林良暢氏)

第37回研究会(2021年7月3日)「バイデン新政権の100日-経済政策と米国経済の行方」(専修大学名誉教授 鈴木直次氏)

第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

第44回研究会(2024年5月12日)「21世紀のインドネシア-成長の軌跡と構造変化
」(東京大学名誉教授 加納啓良氏)


これまでの研究会報告