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2017/07/24

POLITICAL ECONOMY 第96号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
ケインズとアシモフの予測した21世紀前半

                                    労働調査協議会客員調査研究員 白石利政

 予測、それも暗い時代状況のなかでのそれには夢や希望とともに、将来に向けての警告が含まれている。R.ブレグマンの『隷属なき道』(英語の題:Utopia for realists)に有名なケインズとアシモフの予測が引用されていた。全体の内容が気になり改めて読み返してみた。

ケインズの100年後の予測

 J.M.ケインズは1930年、マドリードで講演を行った。「我らの孫たちの経済的可能性」である。時は、アメリカで引き起こされた大恐慌の翌年で、スペインでも大不況が襲い政治的には左右の対立が顕在化していた。経済についての「悲観論の重い発作に見舞われ」、街には「失業者があふれる異常な事態」になり、政治についても怪しい雲行きが兆す、暗い世相のなかで未来を語った。

 それは、「大きな戦争がなく、人口の極端な増加がなければ」100年以内に経済的問題は解決するか、近く解決するとみられ「先進国(progressive countries)の生活水準は現在の4倍から8倍になっていると」予想している。話の展開を、生活水準が平均して現在の8倍で想定すると、経済的な必要から自由になり、そのとき豊かさを楽しむには「生活を楽しむ術を維持し洗練させて、完璧に近づけていける人、そして、生活の手段にすぎないものに自分を売りわたさない人」になることが必要。働くことについては、人間(the old Adam)には「何らかの仕事(work)をしなければ満足できない」という弱さがつきまとい、このため孫たちの世代でも「残された職(work)をできるかぎり分け合えるようにすべきである。1日3時間勤務、週15時間勤務にすれば、問題をかなりの期間、先延ばしにできると思える。1日3時間働けば、人間の弱さを満足させるに充分ではないか」と述べている(J.M.ケインズ『ケインズ説得論集』)。

アシモフの50年後の予測

  冷戦体制下、核戦争の脅威が漂う1964年、ニューヨークで「相互理解を通した平和」をテーマとした世界博が開催された。SF作家のI.アシモフは、50年後の世界を予測した「2014年の世界博訪問」をニューヨーク・タイムズ紙(1964年8月16日号)に寄稿した。

  50年後は、圧縮空気で車が高速道路を飛び、電力の半分は原子力でまかなわれ、太陽光発電が運転し、水中都市が作られる、などの夢が実現していると。しかしロボットは、動きの遅い家事ロボットが展示されている程度で、また頭脳搭載ロボットによる自動車は実用の段階からはまだ遠い、と。
 
 アシモフが唯一、危惧しているのは機械の世話役で「人類が退屈病に罹っている」ことである。「この病気は年々広がり、深刻な精神的、情動的、社会学的影響が生じ」「2014年には、精神医学が最も重要な医療分野になっているだろう」そして、50年後についてのもっとも深刻な推測は「強制された余暇の社会になり、もっとも輝かしい語彙は仕事になるだろう」と。

日本の2030年に向けて

 これらの予測を日本に照らし合わせるとどうなるのであろうか。ケインズの予測を確認するにはあと13年待たねばならないが、経済的問題については到達している。「GDP(生活水準を表す代表的な指標)は、……1930年の欧米の生活水準の5.1倍となっています」(水野和夫『閉じていく帝国と逆説の21世紀経済』)。もうひとつの労働時間については、日本では不可能であろう。一方、アシモフの予測した50年後、既に3年前にみた世界であるが、ロボットや頭脳搭載型ロボットの進歩は彼の予測を超え、この技術は今後さらに進みそうだ。ケインズの予測の年と重なる2030年、「日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能やロボット等により代替できるようになる可能性が高い」との予測がある(寺田/上田/岸/森井 『誰が日本の労働力を支えるのか?』)。アシモフが危惧した仕事に起因する退屈さが問題を引き起こしかねない。

 以上のことを念頭に置いて日本の2030年には、少なくとも職場から恒常的な時間外労働が無くなり、ワーク・ライフ・バランスが実現していることに期待したい。これを夢に終わらせないため、つぎの2つのことに、とりわけ労働組合は挑戦して欲しい。ひとつは時間外労働を雇用調整や生活費に組み込むことをやめることである。もうひとつは仕事上の付き合いを含めた働き方の見直しである。西ドイツ在住の日本人主婦と東京在住のドイツ人主婦を対象に、赴任前後の<夫が家族とかかわる時間>を尋ねたところ、最多は日本の主婦では「増えた」(64.3%)、西ドイツ主婦は「減った」(80.0%)であった(連合総研『主婦の目から見た日本と西ドイツ』(1989年))。日本での働き方は時短先進国の人たちの暮らしをも変える。

 そしてまた、職場を熟知している労働組合はAI(人工知能)やロボットが雇用構造を劇的に変える時代の働き方、暮らし方の設計とその実現に期待したい。


09:55

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「米中覇権争いとトランプの米中
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講師:平川均氏(国          士舘大学客員教           授・名古屋大学名誉教授)

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約3分

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