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2020/08/21

POLITICAL ECONOMY第171号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
「国難・コロナ禍」でまたまた露呈した日本的無責任体制
                           経済アナリスト 柏木 勉

 コロナ禍は感染者が大幅に急増し第二波に突入した。第二波となって政府としての対応は?自治体としては?(自治体は各々独自に対策強化を打ち出している) 感染抑止と経済再開をどう両立する?等々議論百出だ。国民は感染者数の増減に一喜一憂している。要は右往左往している。
 
収束までのイメージを明示せよ

 コロナ禍がはじまってからもう約8か月たった。当初から思って
いたのだが、一番問題なのは、政府が「コロナ禍の収束のイメージ」を国民へ提示しないことだ。そして、その「収束にむけてはどのようなプロセスになるのか」という大まかなイメージ(出口戦略といってもいい)を示さないことである。

 その大まかなイメージがあれば、国民は「どうなるかわからない」と大きな不安にかられてやみくもに右往左往することはなくなる。不安は一定程度緩和されるし、なにより相応の覚悟をもって対応することができる。ところが政府は何も提示せず、その時その都度、場当たり的な対応を提示するだけである。

 私のいうコロナ禍の収束のイメージとは、例えば秋、冬に流行するインフルエンザへの対応(ワクチンが存在)と同程度に、国民が新型コロナウイルスに対応するようになることである。これは多くの国民の感覚と同じだと思う。

 それでは、そこまでのプロセスはどうか?
 結論的にはワクチンが普通に接種できるまでは耐えるしかないのだが、そこまでのプロセスはどう考えるか?今のところ考えられるのは以下のようなものである。
「日本国民あるいは全世界の人間の6-7割程度(2割という説もある)が免疫を持てば、つまり集団免疫をもてば、実効再生産数が減少して感染は減少し、収束する。ただし集団免疫の保有は主としてワクチン接種によるべき。そうでなければ感染して集団免疫を持つまでに相当の死者がでる(現に世界の死者数はすでに80万人に近づいている)。従ってワクチンが一般的に接種可能になるまでは(最短でも3年程度かかるのでは?)感染防止、死者数抑制に最大限努力する。しかし第3波、第4波・・・は最大限抑えていくものの回避できない」
 
 このようなイメージは専門家がだれでも言っていることにすぎない。国民も漠然とは感じている。愉快なものではないが、これをはっきり政府が提示すべきである。つまり「ワクチン実用化、相応の集団免疫獲得」までは耐えるしかない。この認識を明確に持つことで同じ右往左往でも、ある種自分を客観視して、今後の行動を模索できる。政府が提示を渋り、なし崩しの対応を続けるのは、後になって大きな責任を問われる可能性が大きいからである。新型コロナの性質がいまだはっきりせず、ワクチン実用化の見通しも不透明であるのは確かだ。だが、状況の変化をみながらも、政治的には「不都合な真実」であっても国民に出口戦略のイメージを明示することは重要だ。感染抑制策をしばらく続ければウイルスが消滅するような話ではない。責任を問われるのは政治家として政党として当然ではないか。

なし崩しにどうにでも地方創生臨時交付金、Go To Travel

 責任をめぐっては多くの問題が浮上したが、紙面の都合で2点だけ取り上げたい。政府は当初3、4か月で感染が収まるがごとき(つまり前述した収束である)見通しのもとに補正予算を組んだ(第一次補正、付け焼刃的に第二次補正)。その基本とした緊急経済対策は「感染症拡大の収束に目途がつくまでの間の緊急支援フェーズ」(第一段階)と「収束後の反転攻勢に向けた需要喚起と社会変革の推進をめざすV字回復フェーズ」(第二段階)に区分されていた。これは明らかに短期的に強い抑制策をとれば収束するという誤った見通しのもとで策定されたのである。

 それによって、後にマスコミが騒ぎ大きな問題となったのが、い
わゆる地方創生臨時交付金と「Go To Travel キャンペーン」である。地方創生臨時交付金の当初の目的は、第一段階での「医療提供体制の強化」と第二段階での「地域経済の活性化」であった。医療提供体制の強化とV字回復が政策目的だったのだ。

 ところがこの交付金は、知事たちから休業要請への補償金・協力金の財源確保を強く要請されたので、本来の目的の解釈を変えて苦しまぎれに交付されることになった。これは政府の非常事態宣言時の想定と対策が全く甘かったことを示している。

 「Go To Travel キャンペーン」は第二段階の「V字回復フェーズ」で施行するものであった。緊急経済対策の閣議決定でも安倍首相の答弁でもそのようになっていた。ところが収束後のV字回復段階どころか、感染の第2波が到来したまさにその時点でキャンペーンは強行された。全く当初の政策目的を逸脱して強行されたのである。だが、「解釈を変えればどうにでもできる、政策目標などどうでもいい」となれば、全くの無責任が横行することになる。というより日本的無責任体制がまたまたはっきりと露呈してきたというべきだろう。「収束」という言葉もいかに安倍や菅がいいかげんに使っているか、注意すればすぐわかる。
  
 PCR検査等の目詰まり=大臣をも無視する厚労省の通知・事務連絡行政=感染症法、特措法、地域保健法の不備につけこむ無責任体制は別途触れたい。

10:13

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第35回研究会(2020年9月26日)「バブルから金融危機、そして・・・リーマン 兜町の片隅で実務者が見たもの(1980-2010)」(金融取引法研究者 笠原一郎氏)


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第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

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