「地方創生」は地方経済を再生させるか
神奈川県寒川町議 中川 登志男
一般会計の総額が過去最大の96.3兆円に上る2015年度予算案が1月14日に閣議決定され、同26日に召集された通常国会にて審議される。
昨年12月の衆議院議員総選挙を受け、発足した第3次安倍政権は「地方創生」を看板政策に掲げており、地方創生関連予算は内閣府など10府省にまたがって、192事業に計7225億円が計上された。
地方創生関連事業は、①雇用創出、②地方移住、③出産・結婚・子育ての3つに大別されるようだ。①としては、地方版総合戦略の策定支援に0.9億円、地域資源を活用した「ふるさと名物」の開発・販路開拓支援に16億円、地域企業の取引状況を把握する「地域経済分析システム」のデータ充実に2.2億円、観光地が連携する「広域観光周遊ルート」の形成促進に3億円、などが計上されている。
また、②としては、地方の私立大学の経営強化に257.5億円、地方移住の相談窓口「全国移住促進センター」(仮称)設置に1億円、都会の若者が一時的に移住する「地域おこし協力隊」の拡充に0.9億円、などが計上されている。
さらに、③としては、「待機児童解消加速化プラン」の推進に124.3億円、出産や子育ての相談支援を行う「子育て世代包括支援センター」整備などに17.3億円、といった内容になっている。
こうした国の事業のほか、地方自治体の予算編成の指針となる地方財政計画に「まち・ひと・しごと創造事業費」が新たに1兆円計上された。地方債などを含めた地方財政計画の全体の財政規模は85.3兆円となり、03年度以来の高水準となった。
政府が今回、地方に予算を重点配分するのは、アベノミクスの行き詰まりがあると思われる。地方には、「アベノミクスの恩恵は地方に及んでいない」という批判が強い。このため、財政出動により地方経済を立て直すことで、「経済の好循環」を生み出すのが今回の大規模予算の狙いであろう。また、今年は4月に統一地方選が行われるという事情も考えられる。
「地方創生」名ばかり、ごった煮予算
確かに、地方関連予算は付けないよりは付けてくれる方がありがたいのだが、それらがどのように「地方創生」につながるのかが、正直言って分かりにくい。例えば、「朝方の働き方の推進」(厚生労働省)、「女性研究者の活躍促進」(文部科学省)、「仕事と生活の調和推進調査研究」(内閣府)など、「地方創生」との関連性がよく分からない予算も少なくない。言ってしまえば、国債費を除けば何でも「地方創生」に含まれる、といったところなのだろう。
なお、「地方創生」と言えば、最も重視されるべき地域の一つに沖縄があると思うが、沖縄振興予算は前年比162億円減の3340億円となり、5年ぶりの減額となった。今回の減額分の大半を占めたのは、約140億円の減額となった沖縄独自の一括交付金であり、繰り越しの多さが減額の理由だと政府は説明している。
だが、減額の本当の理由は、宜野湾市にある米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する翁永雄志知事へのけん制にあることは想像に難くない。また、沖縄振興予算は減らす一方で、辺野古移設関連の建設費は大幅に増額しているが、それは地元経済にはあまりプラスにならないだろうし、何よりも、昨年11月の沖縄知事選で示された民意にあまりにも鈍感でないかと思われる。
「地方創生」にどうつながるのかが分かりにくい予算が多く計上される一方で、地方自治体の「固有財源」でもある地方交付税は、14年度当初予算の16.1兆円から15.5兆円と微減となった。以前からある事業を「地方創生」名目に変えただけの政策も目立つ一方で、地方交付税が増えるどころか微減となり、本気で安倍政権は「地方創生」に取り組もうとしているのか、その姿勢がこの予算案からはあまり伝わってこない。