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2016/07/23

POLITICAL ECONOMY 第48号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
オバマ米大統領の広島訪問

                               労働調査協議会客員調査研究員 白石利政

 5月27日の夕方、大野瀬戸の上空に大統領専用ヘリ(マリンワン)と先導するオスプレイが飛来した。オバマ米大統領が岩国基地から広島市の平和記念公園へ移動していたのだ。注目されたオバマ米大統領の広島での演説は、原爆投下への謝罪のないことや、プラハでの演説「核なき世界をめざす」(2009年4月)に比べトーンダウンしたことへの落胆が聞かれる一方、核廃絶に向けての大きな一歩との声もあがった。オバマ米大統領の広島訪問で以下のような点に関心をもった。

変わらないもの

 アメリカの原爆投下について「変わらないもの」、それは「謝罪」をめぐる議論である。「謝罪」を求める声は被爆者からあがった。死者は広島で約14万人、長崎で約7万人(1945年末)、そのほとんどが民間人。被爆者の惨状は米軍の占領下、報道統制で伏せられた。被爆し生き延びた人々は、国からの支援もなく健康不安や、世間の無理解に苦しめられる。私の知り合いは子どもの結婚が決まった後に被爆者健康手帳の申請をした。

 一方、「謝罪」を拒否する声はアメリカから発せられた。この訪問が公表されるとアメリカの旧日本軍の捕虜経験者から「謝罪してもらいたくない」との声があがった(NHK NEWS WEB 2016年5月11日)。訪問後の28日、米大統領選で共和党候補の指名を確実にしたトランプ氏は「大統領は日本滞在中にパールハーバーの奇襲について議論したのか?」とツイッターに投稿した。また中国の王毅外相は5月27日、「注目に値するが、南京はもっと忘れるべきでない」とけん制した
(日本経済新聞電子版 2016年5月27日)。

 詩人・桑原貞子さんの、<ヒロシマ>といえば<パールハーバー> <ヒロシマ>といえば<南京虐殺> <ヒロシマ>といえば 女や子供を 檻のなかにとじこめ ガソリンをかけて焼いたマニラの火刑 ……の詩、「ヒロシマというとき」が発表されたのは40年前、変わらないものがある。

変わってきているもの

 日米双方で「変わってきている」のは原爆投下の受け止め方である。日本では「許せない」、アメリカでは「正当」、とする意見で、「謝罪」を求める、あるいは拒否することにつながる。

 日本では「許せない」が減っている。NHKの2015年原爆意識調査(広島・長崎・全国)で「今でも許せない」と「やむを得なかった」は、全国では49%:40%、広島では43%:44%、長崎では46%:41%である。随分物分かりよい印象が拭えない。広島での80年調査では「今でも許せない」が67%を占めていたので、変化の大きさに驚かされる。そして今や広島、長崎では「今でも許せない」と「やむを得ない」の世代間の差はなくなっている(政木みき「原爆投下から70年 薄れる記憶、どう語り継ぐ」(「放送研究と調査」November2015)。朝日新聞社の2016年調査では、アメリカの広島や長崎への原爆投下は非人道的なことと考えている人は6割、うち「非人道的で許せない」は10人中3人にとどまっている(朝日新聞大阪本社版 2016年5月24日)。

 一方、アメリカでは原爆投下を「正当」と考える人が減り、世代間の違いが大きくなっている。原爆投下直後のアメリカのギャラップ社調査では、日本での原爆使用を「支持する」は85%と圧倒的だった。これが90年では53%まで下がり、95年の59%、2005年の57%と横ばいである。ピー・リサーチ・センターの2015年調査では「正当だった」が56%。この回答は18~29歳では半数を切っており、65歳以上の7割との差は大きい(朝日新聞大阪本社版 2016年5月24日)。同じような結果はユーガブの2015年調査でもみられる。日本に2つの原爆を投下したことについて、「正しい決定」は46%、「間違った決定」は29%、「わからない」は26%である。「正しい決定」は18~29歳と30~44歳では3割台にとどまり45~64歳や65歳以上の5~6割台とでは明らかに違う(YouGov July 18-20,2015)。

変わってほしいもの

 原爆投下についての受け止め方の変化は理解を深めるチャンスでもある。そのためには原爆投下の前後の歴史に、とりわけ日本は原爆投下前の日本軍国主義の行為に刮目し、原爆投下の8.6と8.9を次世代に伝える責務がある。核兵器保有国は被爆の惨状に謙虚に向き合い、原爆投下後の軍拡競争に巻き込まれた歩みにブレーキをかけてほしい。

 目指すべきは核廃絶である。原爆で長姉を亡くし自らも被爆した野球評論家・張本勲さんはオバマ米大統領の広島訪問について「資料館で感じた思いを核廃絶を進める運動につなげてほしい。強くそう思う。『もう1歩じゃ足りない。10歩でも20歩でも先に』と」訴えている(朝日新聞大阪本社版広島面、2016年6月2日)。被爆者の核廃絶の遅々たる歩みに“喝!”、との声が聞こえる。

08:12

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第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

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