新着情報

 RSS
POLITICAL ECONOMY第295号11/15 20:34
アメリカ・ファーストの源流に“いらいらした愛国心”              金融取引法研究者 笠原 一郎    昨年、アメリカ・ファーストを掲げ、波乱の中で大統領に再び返り咲いたドナルド・トランプが打ち出した「トランプ関税」-これ...
POLITICAL ECONOMY第294号11/04 07:11
イスラエル・シオニストの虚偽、虚構ガザ・ジェノサイドに至る植民地主義、人種差別主義               経済アナリスト 柏木 勉   イスラエルは建国以来中東の平和、世界平和にとって大きな脅威となってきた。その成り立ちはナチス...
POLITICAL ECONOMY第293号10/18 07:49
モンドラゴン協同組合の進化と課題 ―「もう一つの働き方」への挑戦 労働調査協議会客員調査研究員 白石 利政  電機連合は電機産業で働く労働者の意識に関する国際調査をこれまでに3回実施している。その第2回調査(1994~95年)...
POLITICAL ECONOMY第292号10/01 07:38
金価格が高騰の背景にドル離れ              経済ジャーナリスト 蜂谷 隆  金の国際価格が史上最高値を更新し続けているが、最大の要因は新興国などの中央銀行が外貨準備のために買い増していることだ。背景にあるのはドルへの不...
POLITICAL ECONOMY第291号09/18 07:57
世界の戦争孤児事情と少子化が進む韓国の葛藤              元東海大学教授 小野 豊和  韓国の捨て子事情に関心を持っていたときに、NHK『BS世界のドキュメンタリー』「翻弄された子どもたち、欧州大戦孤児のその後」を見て...

メールマガジン「POLITICAL ECONOMY」の配信について

現代の理論・社会フォーラム経済分析研究会は、日本および世界の経済の動きをとらえ、認識を深めることを目的に研究会活動を行っています。経済を中心に社会、政治など知的集積の場として「POLITICAL ECONOMY」をメールマガジンとして配信しております。

 「
POLITICAL  ECONOMY」は、会員の方々による発信の場です。メーマガジンとして配信、同時にホームページ上でも公開しております。大きく動く世界と日本の経済、社会の動きを分析、発信していきたいと考えています。
 

メルマガ

メルマガ >> 記事詳細

2016/12/09

POLITICAL ECONOMY 第82号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
定まらない「トランプノミクス」評価
                    NPO現代の理論・社会フォーラム運営委員 平田芳年

 米国の次期大統領となるトランプ氏の経済政策「トランプノミクス」の是非が経済論壇の焦点になっている。トランプ氏自身が選挙中に公約したことと、選挙後に語っていることに相当な変化があり、政策を判定する難しさはあるものの、どこに評価のポイントがあるのか探って見るのも興味深い。そこで、選挙前と選挙後の代表的な論考を紹介、どの辺りが評価を左右するポイントになるのかを考えた。

 まず選挙前の評論から。ウォール・ストリートジャーナル(WSJ)が、大統領選中盤の6月、「トランプ氏の経済政策、景気縮小と大量失業招く恐れ」と題してムーディーズ・アナリティックスのリポートを紹介、トランプ候補の当選を牽制した。同リポートは税制、貿易、移民、政府支出に関するトランプ氏の提案が、米経済にもたらす累計的な利益と損失を初めて数値化しようとしたもので、「同氏の政策を全て採用した場合、1期目の4年間で国内総生産(GDP)は急減し、350万人が失業するとの推計をはじき出した」という。

 短期的に悪影響が大きいものとして貿易政策と移民政策を挙げ、「雇用市場のスラック(余剰資源)がもはや以前ほど大きくないことを考えると、トランプ氏の政策は労働力や財の価格を大幅に押し上げかねず、これは経済に深刻な弊害をもたらす大規模な供給ショックだ」とし、貿易面では「メキシコと中国に対する輸入関税の引き上げで財の輸入価格は15%上昇し、消費者物価全体が3%押し上げられる可能性がある。実際にはさらに、米輸出企業への報復措置に伴うコストも発生する」と分析。「FRBは本来想定していたよりも速いペースでの利上げを余儀なくされ、早急な利上げが足かせとなる中で米経済は2018年にリセッション入りする」と結論付けている。

 次いで選挙後の論評。11月21日、ロイターネット版に掲載された「トランプ相場はまだ序章、大減税の衝撃」と題する竹中正治龍谷大教授の論考で、「私を含むエコノミストが選挙前まで想定していたことをかなり修正するインパクトが生じる。変化の方向はインフレ率アップ、金利高、ドル高、短期・中期の景気の上振れである」と断言している。

 同教授は選挙直後の10日に開催された全米のエコノミスト会合に出席、そこで目を引いたのは「トランプ減税の規模を推計した報告だった」という。減税案は法人税減税(税率を35%から15%に引き下げ)、個人所得税の減税(現行の7段階の累進税率を12%、25%、33%に引き下げ、最高税率は現行の39.6%から33%に引き下げ)、キャピタルゲイン並びに配当に対する減税延長(現行の0%、15%、20%の税率を維持)、相続税の撤廃などからなり、減税規模は10年間で4兆~5.5兆ドル。「この減税案の年間規模はGDPの2.8%にも及ぶ。平時において実施される減税規模としては空前のものとなるだろう」。

 同教授の推計では「仮にGDPの2.8%に及ぶ減税の3分の1が消費や設備投資の支出増に充てられ、他の条件は変わらないとすると、それだけでGDPの約0.9%分の内需となってGDPを押し上げ、成長率は3%を超える」という。大統領選結果発表直後の東京市場のドル安円買い・株安が一晩でドル買い円安・株高に変転したのは、投資家が「大減税実施のインパクトを考えて相場観を修正」したためと見る。

減税の評価で分かれる

 論評の前者は通商面の保護主義と移民規制(労働力の供給減)が米国経済にスタグフレーションを招き入れ、長期的なリセッションに追いやるという見方だ。一方、後者は大減税とインフラ投資の促進が米国景気を押し上げ、短期・中期の景気の拡大を予想する。両者ともインフレ率アップ、金利高、ドル高予想で足並みを揃えるが、減税を巡って評価が分かれるようだ。WSJリポートでは「政府支出や減税を実現するためには、連邦予算で1兆ドルの財政赤字が発生しないよう他の歳出を大幅に削減しなければならない」と分析しており、トランプ予算が実行に移される2017年10月以降の効果には懐疑的。

 欧米市場のドル高、株高は、後者のシナリオに市場参加者が傾いた結果だが、市場が反転する「トランプ・ショック」の再燃が遠のいたわけではない。投資家たちはトランプ氏の一挙手一投足を材料に投機に明け暮れるだろうが、トランプノミクスの世界経済への影響が見極められない限り、エコノミストたちの漂流が続
くように思われる。

15:23

LINK

次回研究会案内

次回研究会決まり次第掲載します




 

これまでの研究会

第36回研究会(2020年11月28日)「ポストコロナ、日本企業に勝機はあるか!」(グローバル産業雇用総合研究所所長 小林良暢氏)


第37回研究会(2021年7月3日)「バイデン新政権の100日-経済政策と米国経済の行方」(専修大学名誉教授 鈴木直次氏)

第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

第44回研究会(2024年5月12日)「21世紀のインドネシア-成長の軌跡と構造変化
」(東京大学名誉教授 加納啓良氏)


これまでの研究会報告