アベノミクス、地域経済への浸透はまだまだ—その2
神奈川県寒川町議会議員 中川登志男
1月のメルマガで、私は、アベノミクスの地域経済への浸透はまだまだである、というレポートを、地元企業の経営者の声などを基にまとめたが、寒川町議会の3月議会の一般質問で、このことについて取り上げてみたので、今回はそれをレポートしたい。
「景気は緩やかに回復している」ものの、「地域経済まではいまだに実感できるものではない」。町議会3月議会の冒頭に町長から発表された「平成26年度施政方針」には、そのような認識が示されていた。これを受け私は一般質問で、景気の回復基調をどのようにして地域経済、町の経済につなげていくのか、町側の見解をただした。
まず私は、2月3日の日経新聞に掲載されていた各種の経済指標を基に、株価や建設工事の受注、公共事業の請負金額やマネタリーベースなどが、安倍政権発足以降、非常に伸びていることを指摘し、いわゆるアベノミクスの「3本の矢」のうち、「大胆な金融緩和」と「機動的な財政出動」については、経済指標に非常によく現れているのではないかという考えを示した。
ただ、それだけでは与党議員的なアベノミクスの宣伝にしかならないので、現金給与総額はほとんど伸びていないことも同時に指摘し、資産を持っている人には、確かに景気回復だが、資産を持たぬ人にとっては景気回復ではなく、「景気回復感」といった方が正確ではないか、と一言イヤミを付け加えておいた。ついでに、「3本の矢」の3本目、つまり成長戦略については、「中身が今一つつかみづらい」
とも指摘しておいた。
リーマン・ショック以前に戻っていない
町長からの回答は、以下のようなものであった。町長は昨年末に、20社以上の町内企業を訪問したが、「リーマン・ショック以降の低迷から徐々に脱却してきてはいるものの、リーマン・ショック以前までに回復した状況にはない」というのが、各社の所感であったという。
その上で町長は、町としても「日本経済の回復基調をいかにして地域経済へつなげていくかが大きな課題であると認識している」として、「地域の優位性を内外にアピールするため」の「行政の枠組みを超えた取り組み」の必要性を強調した。具体的には、藤沢市、茅ヶ崎市、寒川町で構成する湘南広域都市行政協議会が、12年11月に策定した「湘南広域産業振興戦略」に基づき、製造業など基幹産業分野を中心とした取引拡大支援、あるいは、技術開発支援、人材育成支援、国際展開支援など産官学が連携した産業活性化に向けた取り組みを進めているという。
さがみ縦貫道路開通と「さがみロボット産業特区」で変わるか?
そして、町としてもこうした取り組みを進めつつ、さがみ縦貫道路の全線開通と「さがみロボット産業特区」への位置づけといったインパクトを適切にとらえ、産業誘致への取り組みを進めることで地域経済のエンジンを回したい、との認識を示した。
また、日本経済の回復基調を地域経済に結びつけるよう、神奈川県町村会を通じ、「地域経済が回復する大規模な補助金制度や交付金制度の創設」を国に対して要望しているところであるとも答弁した。
もっとも、経済の問題というのは、まさにグローバルな問題であり、市や町といった行政区画を超えた問題でもある。その意味では、一自治体、ましてや寒川町のような小さな町だけで取り組めることには限界もあろう。それゆえに、藤沢市や茅ケ崎市との広域連携による産業活性化という回答が、町側からなされたのだろうと思う。
また、「大規模な補助金制度や交付金制度の創設」の国への要望というもの、結局は補助金・交付金頼みなのかという気もしないではないが、「地域経済のエンジン」を回すための資金も、やはり町だけでまかなうのは現実として困難である。
地域は地域の立場から、地域経済の回復に努めていかねばならないと思うが、地域経済の回復において、都道府県のような広域自治体や国の果たすべき役割も、小さくないと思われる。大都市、大企業、資産家などに目が向きがちなアベノミクスに、果たしてそうした視点はあるのだろうか。地域の立場からしっかりと見ていかねばならないと思う。