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2022/02/10

POLITICAL ECONOMY台206号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
日本はデジタル化の遅れを取り戻せるか
                                         金融取引法研究者 笠原一郎

 “日本はデジタル化に取り残された”との声を受けて、前の菅政権は「デジタル庁」なるハコモノを昨年9月にスタートさせた。発足の前段階から河野前行革大臣の“ハンコなくせ”の掛け声もむなしく、旧来慣行が止む気配は見えない。また、新デジタル庁の長にはデジタルとは相当に距離があるように見えるご高齢の大学教授が就任され、鳴り物入りで開発を進めたコロナ感染対策ソフトCOCOAはチェック不全から機能せず、“アベノマスク”と同じく見向きもされない悲しいものとなっている。

 さらに“民”でも、みずほ銀行が社運をかけて数千億円を投じた最新鋭システム“MINORI”がたて続けに大規模なシステム障害を引き起こしている。この原因として3行合併の弊害、IT人材の軽視と様々に報じられているが、いずれにせよデジタル化への焦り、地に足がついていない現状を映しているように見える。

なぜ、日本のデジタル化がこれほどまでに残念なのか
1.埋もれる有能な人材

 まず言われていることは、デジタル先端人材の困窮であるが、デジタル化のベースとなるシステム構築の現場はどのようになっているか。システム製造工程のほとんどはSE(システム技術者)と呼ばれる“人”に依拠する。彼らはユーザーの求めるシステム仕様の要件を定義(概要設計)し、これを作動させるプログラムに書き込み、これら様々な機能のプログラムを結合し、実データ等を投入したテストを経て、一連のシステムを完成させる。

 こうした工程の流れはウォーターフォール型開発とも呼ばれるが、作る人個々の能力・IT感度に依存するところが大きい。しかしその現場業態は、旧態然とした請負・外注-ITゼネコンと呼ばれる元請けの大手システム会社から何階層にもわたる下請け-構造の上にある。

 政府・地方公共団体・銀行等の大口ユーザーから発注を受けたITゼネコンは、要件定義・プログラムからテストまで、多くの工程で下請け・SEに“丸投げ”し、納期で縛り雁字搦めにする。ここでITゼネコンの腕の見せ所は、如何に安く・技術のある下請け・SEを手配できる(囲い込める)かにある。要するに、彼らはITの技術ではなく、資金力と過去の経緯等によって仕事を受注し、上前の多くをピンハネする。言葉は悪いが“人足手配”業である。

 報酬の多くはシステムの構築を担った技術者たちにではなく、ITゼネコンに吸い上げられ、本当に技術をもつ人が報われない構図である。こうして日本ではITリテラシーをもつ有能人材は、手配師となるか、階層の下位で働くか、に埋もれてしまう。これでは彼らが持つ新たな創造の芽は摘まれ、データとデジタル技術の融合を目指すDX(Digital Transformation)は望むべくもない。

2.DXの創造と叫んでも踊るのは手配師の親玉

 IT業界内では数年前からDXの推進は叫ばれている。しかし、こうしたIT業界の構造のなかで、いかにDXの創造と叫んでも、踊るのは手配師の親玉でしかないITゼネコンと丸投げのご本尊と化した国・行政のみとなる。“IT人材の海外からの招聘”も議論となっているようだが、怪しげな海の外の人たちにピンハネ構造の更に上前をはねられるのが関の山であろう。

 アナログ人間の私ではあるが、数年だけIT業界に身を置いた者の“肌”感覚として、多くの現場IT技術者の潜在能力は高い。では、日本のIT産業構造のなかで、如何にすれば、報われることが少ない有能なデジタル人材を活用し、DX創造の芽を育てることができるのであろうか。

IT人材の活用、発注する側も変わらねば

 凝り固まったこうした構造を変革させていくには、昔の誰かの
“構造改革!”の雄叫びだけでは厳しい。IT人材の活用には、作る側だけでなく発注する側もまた変わらなければならない。日本で最も大きなITユーザーは、国・地方公共団体等の“公”に関わるセクターであろう。しかし、残念ながら彼ら自身には発注したシステムの機能チェックすら期待出来ない。

 そこで暴論と言われるかもしれないが、“公”のシステムの発注にあたっては、元請けのITゼネコンに対し「最終テストでの請負・外注の禁止」を求めるのはどうだろうか。“公”であれば通知1本である。ITゼネコンはシステム工程の全てを自らが理解していなければ、最終テストは出来ない。すなわち構築したシステムの品質に全面的な責任を持たせる。と同時に、品質を確保のためにはデジタル人材をITゼネコン内で処遇・活用せざるをえないところにも繋がろう。

 これのみでデータとデジタル技術の融合というDXの遅れを戻せるものではないとは思う。しかし、少なくとも報われることが少ない有能人材が陽の目を見る、積極的に活用させるための構造転換こそが、DX創造に臨むための第一歩ではないだろうか。国はハコモノを作って綺麗なポンチ絵を描くだけではなく、まずは足元を見つめなおし、日本のIT産業構造の変革を促すところから考えるべきではないだろうか。

09:55

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次回研究会案内

第47回研究会
「米中覇権争いとトランプの米中
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講師:平川均氏(国          士舘大学客員教           授・名古屋大学名誉教授)

日時:月6日(土)
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場所:専修大学神田校
舎(予定)地下鉄
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資料代:1000円
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第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

第44回研究会(2024年5月12日)「21世紀のインドネシア-成長の軌跡と構造変化
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