日誌


2025/09/16

POLITICAL ECONOMY第294号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
イスラエル・シオニストの虚偽、虚構
ガザ・ジェノサイドに至る植民地主義、人種差別主義
               経済アナリスト 柏木 勉 

 イスラエルは建国以来中東の平和、世界平和にとって大きな脅威となってきた。その成り立ちはナチスが犯したホロコースト、それを引き起こしたヨーロッパ、ロシアの「ユダヤ人問題」にある。ロシアは日本国内ではあまり知られていないようだが、ポグロムによるユダヤ人迫害がロシアを中心にシオニズムを誕生させ、その指導者達はイスラエル建国=パレスチナ人・アラブ人への弾圧、殺戮、追放(ナクバ)に大きく貢献した。シオニストはパレスチナに住む人々を野蛮人と呼び、彼らの土地を強奪、収奪して国民国家を作り上げた。だから、最初から植民地主義、人種差別主義をその本質とする。その様な国家は世界にとって大きな脅威であることは自明であるし、軍事支援を続けてきたトランプ等歴代の米政権と米国福音派、ドイツ、イギリス、フランス等は大罪を犯して来たのだ。ドイツについていえば、ホロコーストへの責任を深刻ぶった哲学的言辞で表明してきたが、今回のガザ大虐殺によってその欺瞞がはっきりした。

話しの本筋・基本はイスラエル解体
 イスラエル国民といっても様々な考えがあり、パレスチナ人との連帯をはかる人々もいる。だが少数をのぞくと、大勢は人種差別主義者であり植民地主義者である。小生はヨーロッパ、ロシア、米国が今日の惨状を現出させた責任をとり、イスラエルを解体し、その国民を引きとるべきだと考える。解体して引き取るべき割合は、欧米三分の二、ロシア三分の一が適当だろう。これが話の本筋であり、問題解決の根本だ。この本筋を確認しない限り一時的な「解決」は必ず破綻する。実際、歴史はそのように推移したし、今後もそうだ。(なお、以上は根本である責任の明確化である。具体的解体策等々ではない)

 話しの本筋=イスラエル建国の非道・不当性は、欧米やイスラエル政権がまき散らす愚昧なレトリックやデマゴギーは一切無視して、次の簡単な応答ですぐわかる。
・「パレスチナ人にホロコーストの責任はあるか?」 答えは「責任はない」。
・「ホロコーストに責任のないパレスチナ人が、なぜホロコーストの責任のツケを払わなくてはならないのか?」 答えは「払う必要はない」。 
このきわめて単純な応答を否定できるものはいない。

幻想にすぎない神話を解体せよ! 
 次に、現代にいたってもなお存続する神話解体が必須である。第一には、シオニストのいう「約束の地・パレスチナへの帰還」はユダヤ教の教えに反するただのナショナリズムにすぎない。ユダヤ教の説く「約束の地への帰還」とは精神のなかの問題であり、シオニストが唱えるような現実の地理上の物理的空間=空間的・物理的地域への移住ではない。精神のなかでの問題なのだ。そして神のなすわざであって人間のなすわざではないとされる。

 そもそもイスラエルを主導するシオニストはとっくにユダヤ教を捨て去ったが、国内ではまがいものの宗教行事を政治的に利用して、それを隠蔽している。だがイスラエル国民の大半は無信仰者でありユダヤ教とは無関係だ。元々、イスラエルは単なる近代ナショナリズム国家にすぎない。

 次に、聖書やエルサレム神殿破壊やローマによる「追放」等々が、現代イスラエル国家が連綿として結びついているというのも、悪質な神話である。聖書や古代からの神話を現在と直結させている。天照大御神や神武天皇と現代日本国家が連綿として結びついているという主張と同じだ。愚かしさの極みだ。加えて、歴史的には例えば紀元前13世紀とされるモーゼの「出エジプト」はなかった。そのころのカナンの地はエジプトが支配していたのだ。ダビデやソロモンの時代の強国も存在せず、当時のエルサレムはわびしい小村にすぎなかった。また「追放」もなかった。「追放」を記した歴史書は一冊もない。「追放」は発明されたのだ。殆どのユダヤ人はそのままパレスチナの地にとどまり、その後はイスラムの支配を受け入れた。

 シオニストは国民国家イスラエルを「正当化」すべく、聖書と「民族」をつなげるため「ユダヤ人」をつくり出したのだ。(注:シュロモー・サンド 「ユダヤ人の起源」 浩気社 2010年を参照)

 次に重要なことは、近代「ユダヤ人問題」とそれ以前の宗教的対立とを区分することである。アーレントは、著書「全体主義の起源」の中の「反ユダヤ主義」の章で、概要次のように述べている。反ユダヤ主義」は1870年代以前には存在せず、近代の「反ユダヤ主義」とそれ以前の宗教上の対立によるユダヤ人憎悪とは別物であると。つまり、近代の反ユダヤ主義は資本主義の発展と変容から生まれたのだ。古代からの歴史とは関係はない。古代と現代を短絡させるべきでない。

「ユダヤ人国家」はナチスの「純粋アーリア人国家」と同じ
 最後に、イスラエルは独立宣言や基本法で「ユダヤ人国家」と規定されている。これはナチスと同じ思想である。ナチスは真正のアーリア人・帝国市民とユダヤ人等(非帝国市民)を区分した。ユダヤ人を母系優先血統主義でまがいものの定義づけをおこない(ニュルンベクク法)、ユダヤ人は二等市民と位置付けられ、最後は絶滅作戦につな
がった。イスラエルも基本的に同じ母系優先血統主義でユダヤ人と非ユダヤ人(パレスチナ人等ミズラヒ・スファラディーム)を区分し、非ユダヤ人は事実上二級市民である。人種・民族で区分すれば必然的に差別意識が亢進していく。それが結局区ナチスと同じガザ・大虐殺をひきおこしたのだ。もはやイスラエルは「ホロコースト」を売り物にできない。

20:42

メルマガ第1号

金融緩和による「期待」への依存は資本主義の衰弱
                                                                   経済アナリスト 柏木 勉

 日銀の新総裁、副総裁が決定して、リフレ派が日銀の主導権を握った。副総裁となった岩田規久男氏は、かつてマネーサプライの管理に関する「日銀理論」を強く批判し、日銀理論を代表した翁邦雄氏と論争をくりひろげ、その後も一貫して日銀を批判してきた頑強なリフレ派である。

 さて、いまやインフレ目標2%達成に向けて、「「期待」への働きかけ強化」の大合唱となっている。この「期待」は合理的期待理論として欧米の主流派を形成している。そのポイントはこれまでにない大胆な金融緩和による「期待インフレ率の上昇」とされている。これによって実質金利を低下させ、それを通じて日本経済が陥っている流動性の罠からの脱出が可能になるというわけだ。ちなみに、近年ブレーク・イーブン・インフレ率なるものがよく出てくるが、これは普通国債の利回りから物価連動国債の利回りを引いて計算したものであり、期待インフレ率を表すとして利用されている。この期待インフレ率は、アベノミクスが騒がれ出してから、最近では1%程度にまで上昇してきた。同時に株高、円安が進んだ。これを見て「期待への働きかけ」は十分可能であり、現実に実証されつつあるとしてリフレ派の勢いは一層増している。

 リフレ派の主張に対しては様々な反論がなされている。その極端なものとしては、財政赤字が拡大する中で日銀が国債購入を増大させれば、財政ファイナンスとみなされ国債の信認(償還への信頼)が低下し、国債価格暴落で金利の急上昇がおこるというものだ。この時、設備投資はもちろん失速、財政は危機的状況をむかえる。もうひとつはカネを市中にジャブジャブに出していくわけだから、%インフレにとどまらずハイパーインフレをまねくというものだ。

 だが前者に対しては、いまだ家計の現金・預金が昨年で850兆円に増加し外国人の国債保有率も9%弱にとどまっているし、日本の金融機関の国債への信任は当分大丈夫だとか、また少なくとも今後の国債の新規発行分についてはその大半を日銀が購入してしまえば金利の大幅上昇はないとかの再反論がある。

 後者については遊休設備と多くの失業者を抱え潜在成長率との需給ギャップが大きい。だからハイパーインフレなどあり得ないとの再反論がある。その他様々な論点について論争はかまびすしい。

 だが問題は、リフレ派はデフレによる実質金利の上昇に焦点を絞っているのだから、実質金利と景気とりわけ利潤率との関係を見ることが必要だろう。実質金利の推移をみると、2000年代に入って近年まで実質金利は高い時でせいぜい2%強程度ときわめて低水準で推移している(ただし、リーマンショック直後を除く)。ちなみに80年代は5%台を上回っていたのである。そのなかでいざなみ景気は戦後最長を記録した。この間平均してCPIはマイナス.2%程度、実質経済成長率は2%弱と、日本経済はデフレ下で成長したのである。

 その後はリーマンショックにより大幅に落ち込み、回復ははかばかしくないが、ともかく2000年代全体を通じて、実質金利は長期にわたり低水準で大きな変化がないにもかかわらず、好況、不況が生じている。つまり景気の転換を左右しているのは実質金利以外の要因であり、例えばいざなみ景気の起動力となったのは、物価デフレよりも資産デフレからの脱却、デジタル家電を先頭としたデジタル革命、世界の工場となったアジアの生産ネットワークの形成、金抑制による労働分配率の低下であった。

 実質金利が高いと云う場合、何に対して高いのかが問題だが、むろん利潤率に対してだ。高くて2%程度の実質金利をクリアーできない利潤率が最大のネックなのだ。これを突破するのは最終的には不況下の合理化投資と需要創出型のイノベーションだ。デフレ下の低価格であっても利益を生むイノベーションである。しかし現状では200兆円におよぶ内部留保を抱えながら投資が低迷している。これはケインズの謂う企業家の「血気」の喪失というほかないだろう。
 
 そもそもインフレ期待を生むために、中央銀行による市場への説明能力やコミュニケーション能力などという小細工が大問題になるのは笑止千万というべきだろう。政府・日銀による「期待」の醸成という、お情けの支援なしには自ら投資に打って出ることができない。それほど「血気」が失われているわけだ。

 結局のところ、金融主導で金融面から資産効果を引き起こし、それによってようやく実体経済が動き出すというパターンしかとれず、それがまたバブルの形成・崩壊を繰り返すというのが現在の資本主義である。グローバル化で市場経済が世界中に浸透しているかの如く見えようとも、資本主義の中枢部分をなす先進国は、「期待」の醸成に頼るしかないという衰退の段階に入っている。

 

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次回研究会案内

次回研究会決まり次第掲載します




 

これまでの研究会

第36回研究会(2020年11月28日)「ポストコロナ、日本企業に勝機はあるか!」(グローバル産業雇用総合研究所所長 小林良暢氏)


第37回研究会(2021年7月3日)「バイデン新政権の100日-経済政策と米国経済の行方」(専修大学名誉教授 鈴木直次氏)

第38回研究会(2021年11月6日)「コロナ禍で雇用はどう変わったか?」(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高橋康二氏)

第39回研究会(2022年4月23日)「『新しい資本主義』から考える」(法政大学教授水野和夫氏)

第40回研究会(2022年7月16日)「日本経済 成長志向の誤謬」(日本証券アナリスト協会専務理事 神津 多可思氏)

第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

第42回研究会(2023年2月25日)「毛沢東回帰と民族主義の間で揺れる習近平政権ーその内政と外交を占う」(慶応義塾大学名誉教授 大西 広氏)

第43回研究会(2023年6月17日)「植田日銀の使命と展望ー主要国中銀が直面する諸課題を念頭に」(専修大学経済学部教授 田中隆之氏)

第44回研究会(2024年5月12日)「21世紀のインドネシア-成長の軌跡と構造変化
」(東京大学名誉教授 加納啓良氏)


これまでの研究会報告