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2017/01/13

POLITICAL ECONOMY 第84号

Tweet ThisSend to Facebook | by:keizaiken
アベノミクスに替わる経済政策とは
                    経済アナリスト 柏木 勉

 2017年度予算案は一般会計で総額97兆4500億円となり、5年連続過去最高となった。マスコミは、社会保障費が膨れ上がり、国債の新規発行は若干減ったが借金頼みが続くとして、あいもかわらず膨張した国債残高を強調している。

 そこで、今回は財政再建と財政支出拡大をめぐって、日銀保有国債について2、3点述べたい。これはアベノミクスに替わる経済政策を考えるうえで重要な論点である。

日銀は政府の借金を400兆円削減したが、景気浮揚は失敗

 管理通貨制度のもと、日銀は異次元緩和を続け無からつくりだしたカネで国債を大量に購入している。その結果、日銀保有国債は410兆円を越えた。国債残高1100兆円の38%である。その意味するところは何か?それは政府の民間に対する借金を日銀が410兆円減らしたということだ。それだけ政府の借金を返したのだ。だから財政再建は進んでいる。政府の借金が1100兆円もあると大騒ぎするのは間違いだ(安倍政権もこの点の認識は曖昧模糊としているのだが)。

 一方、異次元緩和で日本経済を浮揚させようとした目論見は失敗した。すなわち膨大な日銀の国債購入代金は銀行の日銀当座預金に振り込まれている。だが、それは設備投資や消費などの需要拡大にむすびつくことはなかった。

 したがって今後必要になるのは金融緩和と明確な財政支出拡大の2本立てだ。その場合の財政支出は福祉への大規模重点投入にしなければならない。反自民・公明の勢力はこれをアベノミクスに替わる経済政策として確立すべきだ。

日銀保有国債はチャラにできる

 経済全体に供給能力に余力があり供給過剰にあるとき(不況時の縮小均衡)、日銀が無からカネをつくりだし(印刷機で紙幣をいっぱい刷って)、そのカネで政府が財政支出すれば(日銀による国債の直接引き受け)、需要が現実に発生し拡大するから生産は拡大する。この時注視すべきは、日銀がつくりだしたカネの量と拡大した経済規模だ。つくりだされたカネに見合うように経済が拡大しなければ、需要>供給となって悪性インフレが起こる。十分な拡大均衡になれば悪性インフレは起こらない。ともかく経済が拡大してインフレ目標をかなり超えて物価が上昇すれば、日銀は物価抑制のため保有国債を売って市中からカネを回収しなければならない。だが、縮小均衡時の流通に必要なカネの量よりは拡大均衡時に必要なカネの量のほうが大きい(*注)。

 だから、その分(その差)だけ保有国債の売却は少なくて済む。少なくて済む分は日銀が保有したまま、つまり塩漬け(チャラ)にしたままでよい。塩漬けになった国債(政府の借金)は返済不要の借金になる。従って、財政出動をてこにした順調な経済の拡大で政府の借金は減少する。本当の完全雇用状態(供給能力一ぱいの拡大均衡)に達するまでは、日銀が無からつくったカネで財政支出を拡大できるのだ。

日銀による国債の直接引き受けで福祉への重点投入を

 そこで問題になるのが何を対象に財政出動するかだ。それはいうまでもなく、少子高齢化対策、福祉の大幅拡充だ。これら分野の将来不安が日本経済を低迷させていることは明らかなのだから、そこへの財政の重点投入は潜在需要を大きく喚起して経済は本格回復するだろう。

 この点に関して、日本経済はすでに完全雇用状態に達しており、潜在成長率はゼロだとか諸々の声があるが、それらは間違いだ。

 雇用環境が改善されたのは事実だが、労働力がボトルネックに達したとは考えられない。正社員の有効求人倍率が1を相当オーバーし、なおかつ正社員の高い賃上げが持続しないかぎり、まだ本当の完全雇用状態とはいえない。現在の正社員の状況はそのような状態とはほど遠い。また製造業の実稼働率も75%である。内閣府や日銀のいう「潜在成長率ゼロも真に受ける必要はない。この計算には相当の推計誤差があるし、そもそも50年も前に理論的に破たんしたことが証明されている。そんな代物だ。

 少なくとも日本経済は実質2%成長を3年は続けられる成長力を持っている。完全雇用に達した後は増税が必要だが、その前に以上述べたように本当の完全雇用に達するまでは福祉中心の財政支出で成長を達成出来る。成長する間は塩漬けできる国債は一層多くなり、政府の借金は減少する。

 この点を明確にしなければ民進党をはじめとした野党勢力の浮上はない。福祉充実を訴えても財源を聞かれてうろたえる。それでは「他よりよさそうだから」という、多くの国民の意識によって安倍政権の高い支持率が続くことになる。

*注: 縮小均衡にあるときの貨幣流通量Mは
M=PT/V——(1) 
Pは価格、Tは取引量(実質GDP)、Vは流通速度である。なお、上式は均衡状態で考えているから恒等式ではなく決定式(因果式)である。P、T、Vが先に決まって、Mがその後に決まる。だから貨幣数量説によるものではない。その後、経済が一定の拡大均衡に達したとき、同様にM*=P*T*/V*——(2) 
が成立するが、Vに変化がないとみなすと、(1)式のPTより
(2)式のP*T*
の方が大きくなっているから M*>Mとなる。

12:22

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第41回研究会(2022年11月12日)「ウクライナ危機で欧州経済に暗雲」(東北大学名誉教授 田中 素香氏)

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